みぞおちの施術の位置付け

 私がみぞおちの施術、と考えていた部分を神田橋先生は〈太陽神経叢〉じゃないかとおっしゃって、初めて聞いた言葉に私は、え、何それ……?と思いながら医学書院の『医学大辞典』を調べると、「太陽神経節⇒腹腔神経節」「太陽神経叢ブロック⇒内臓神経ブロック」とありました。

 ざっくり言うと、太陽神経節(=腹腔神経節)は迷走神経(副交感神経の一種)と大内臓神経(交感神経の一種)が合わさってできる神経の固まり状態の部分のことで、まあ、みぞおちらへんにある、と。
 ついでに太陽神経叢ブロック(=内臓神経ブロック)はと言うと、〈腸管の過度の膨張などによる腹痛〉を鎮めるためのブロック注射のことで、内臓神経は、がん末期患者の腹痛に対しても狙われる部位なのだそう。内臓の痛み感覚に関係する神経、なのでしょう。
 名前の響きから、〈太陽神経叢〉……アヤシイ解剖学用語かしら……と引き気味でしたが、メチャクチャちゃんとした解剖学用語でした。ははは。不勉強なことで申し訳ないです。

 神経節、というのは神経線維の切り替え部分で、前記事の例で言うとコンセントの継ぎ目に当たります。でも迷走神経ってそんなところに継ぎ目があったっけ……? 手元の簡単な本では調べられず、もっと大きな本を見るか?とも思ったけど、まあ、いいか。別に私の整体では交感・副交感を区別して施術しているわけではないし、そもそも神経の継ぎ目に施術しているのかどうかすら実際のところはわからんのだし。
 雑な納得というか何というかで済まそうと思いかけて、ふと気付きました。迷走神経、ということはポリヴェーガル理論か。

 ずいぶん昔に一度、ポリヴェーガル理論は勉強しかけたことがあります。あまりに理論がムツカシ過ぎるので投げ出しました。そもそも何を言っているのかわからなかったし、こんなに複雑に考えなきゃならない理論は私には使えないな、と思ってそれきりです。
 でも太陽神経叢のほうは交感神経メインの固まりなようなので、要は、交感神経と副交感神経のアンバランスを、交感神経側から調整するか・副交感神経側から調整するか、ということなのかもしれません。
 これは筋肉への施術でも同じことが言えて、弱い筋肉と強すぎる(=凝っている)筋肉とがあるときに、「弱いほうを強くしよう」と考える施術と「強いほうを弛めよう」と考える施術の2系統があります。一般的な例で言うと「強く」系は筋トレ、「弛める」系はマッサージ。ちなみに私がしているのは「強く」系の一種になります。

 で、神経の場合も一応、交感神経と副交感神経は対になって働くふうに言われていますので、どっちが強すぎるか・弱すぎるか、どっちを弱めるか・強めるかみたいな部分で技法が分かれるのかも、と想像するとわかりやすい。それでたぶん、交感神経系に注目する人は太陽神経叢を使い、副交感神経系に注目する人は迷走神経を使う、みたいなことになっているのかな、と、神経業界(?)の新参者なりに理解してみました。

 私自身の施術が神経に作用しているのかどうかはよくわかりませんし、難しい話もまあ個人的にはわからなくて良いのですが(もともと〈理論より結果〉派なので)、気分的には太陽神経叢寄りのようには感じます。
 〈理不尽な目に遭って⇒猛烈に怒りが湧いて、でもその場で爆発させるわけにはいかない事情があるから猛烈な努力で抑え込んで⇒そのムチャのせいで交感神経の連絡が悪くなった〉という構図なら、私でもイメージできるし、すんなり納得もできる。
 そしてこの考え方だと、「私は自分の努力と覚悟でもって憤怒・憤激を抑え込んだのだ」という自尊感情の後ろ支えが得やすいように思う。やむを得ない状況であったにせよ、〈受身の被害者〉色は濃いよりは薄いほうが良さそうだし、〈猛烈に怒ったけれどそれを努力でこらえた人〉の立ち位置にあるほうが、危機をくぐり抜けた本人の主観にも合うんじゃないかしら、の期待を込めて。

 そしてそう考えると、トラウマとかPTSDという括りよりも、〈こらえがたい怒りをこらえざるを得なかった〉ことによるストレス障害、それに伴う自律神経症状(と付随しうる特徴的な症状)、みたいな位置付けで理解するほうがスムーズかも、と思う。少なくとも、私の好みに合っている。
 一昔前は、がんこな肩こりを医者に「ストレスのせい」と言われてぼやくお客さんと、「何でもかんでもストレスと言えば済むと思って!」。いっしょに怒ったものですが、いやはや、私も今後はすぐに「ストレスですね」とか言う人になるのかもしれん……はあ。いや、まあ、意味は全然違いますけど。
 まあでもとりあえず、私に関してはまだ、「まずは結果を出そうよ!」の段階なので、しばらく必死の研鑽に励みます。

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