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勤務間インターバル制度について~オフタイムに着目する

こんにちは、社会保険労務士を生業として中小企業の雇用環境整備の支援を行っているやはだと申します。学生時代のあだな”つーじー”で活動することもあります。

秋が深まると、仕事をしていて、夏の間と比べて終業時刻がくるのが早く感じられませんか?
夕方、暗くなると電気をつけますよね。そのとき、ふと時計を見て「もうこんな時間!」と思います。

夏は18時を過ぎても明るいですから、電気をつける時間も遅くなります。
夏の間は「もうこんな時間!」と思うタイミングを逃すから、なんとなく時間が経つのが遅く感じられるような。私だけでしょうか?

今日は【勤務間インターバル制度】をとりあげます。

勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度とは

「勤務間インターバル」とは、前日の勤務終業時刻~翌日の始業時刻のあいだに一定時間以上の「休息時間・インターバル」を設ける制度です。オン・オフのうち『オフ』の時間を8~12時間などと定め、社員の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

この制度は「努力義務」です。「できる限り制度化してね」ということですので、制度がなくても何ら罰則はありません。

また、現在のところインターバルの具体的な時間数なども特に定められていません。

勤務間インターバルを何時間に設定する?

厚労省発表の『令和3年就労条件総合調査』によると、制度を導入している企業での平均は10時間57分とのことです。

令和3年就労条件総合調査「勤務間インターバル制度の導入状況別企業割合及び1企業平均間隔時間」

平均はあくまでも参考情報ですから、具体的に実現が可能なラインを考えてみましょう。

(例)
始業9:00/終業18:00 の勤務形態の社員が
   ↓
始業9:00/終業22:30 残業して終業時間が遅くなった場合

①9時間のインターバル設定
⇒翌日の始業時刻まで10時間30分あるので、始業時刻をずらす必要なし。

②10時間のインターバル設定
⇒翌日の始業時刻まで10時間30分あるので、始業時刻をずらす必要なし。

③11時間のインターバル設定
⇒翌日の始業時刻まで10時間30分なので、始業時刻を30分ずらす。

ちなみにEUでは勤務間インターバルを11時間以上定めることと義務づけられているそうです。

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11時間というと…出勤・退勤の移動時間(往復2時間)+健康的な睡眠時間(7時間)+そのほか生活時間(2時間)くらいで仮定すると、ぎりぎり私生活とのバランスがとれるラインと言えそうです。

始業時刻のずらし方

上記③の場合、何らかのかたちで始業時刻を30分ずらす必要が生じます。

このときには
『①9:00~9:30を実際は働いていないけれど働いたとみなす』方法と
『②翌日(11/1)の始業時刻を9:30にする』が考えられます。

さらに
『②始業時刻を9:30にする』場合の終業時刻は、
 ▶②-1)通常通りの18:00
 ▶②-2)30分繰り下げ18:30とする の2パターンが考えられます。

ずらした部分の給与計算をどうするか

②-1の場合、翌日の実労働時間は30分少ないことになります。

この30分の不就労部分については賃金控除しないパターンと賃金控除するパターンが考えられますが、厚労省で紹介されている事例集のなかでは「賃金控除しない」としている会社ばかりでした。

下手に給与減額をして厄介事をつくるのは避けたい、あるいはわざわざ手間をかけるのは面倒である、という思惑が働いているのだと思います。

私見では不就労部分を減額計算したとしてもたちまち法違反となるわけではないと考えられますが、(前日には時間外手当を含め、通常計算される給与日額より多く支給しているため、総体的に考慮すれば社員への不利益が多いということにはならないはず)今後、制度を導入する会社が増えていくにつれ、通達などが発されるかもしれません。

制度導入の方法

適正なインターバル時間の長さは、会社それぞれ、会社の中でも部署ごとに異なってきますので、実情を考慮し、必要があれば社員の意見を聞きながら導入を検討します。

オフの時間を確実にとることに反対する社員はほぼいないと思いますが、中には生活残業のためや家庭の事情で家に帰りたくないという社員がいるかもしれません。試行期間をもうけ、制度に無理がないか等問題点を洗い出し、その後本格的に制度開始というプロセスを踏むのがよいでしょう。

「始業・終業の時刻」に関する定めとなりますので、就業規則の絶対的必要記載事項です。

関連する助成金

令和4年度では【働き方改革推進支援助成金・勤務間インターバル導入コース】の受給要件を満たすと、助成金の対象になります。

支給対象となる取組(いずれか1つ以上を実施すること)
① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

この「支給対象となる取組」を行い、9時間以上のインターバル時間を新たに制度導入(制度対象者の拡大も可)することがその主な要件です。助成金支給額は、かかった経費の3/4(最大100万円)。

申請の受付締め切りは11月30日(2022年度)。あと2週間切ってる!

今年は時短・年休促進支援コースの方が人気が高く、勤務間インターバル導入コースはあまり振るわなかったみたいですね。労働局の担当者に問い合わせしたところ「利用できるなら、ぜひ!」と仰ってました。うん、これから交付申請を間に合わせるから、待っててください~

おわりに

これまで労働時間の管理は「オンタイム」に目が行きがちでした。オフタイムに着目することによって、逆算の発想で労働時間の削減が目指せることになります。

勤務間インターバルの導入は「社員のワークライフバランスを考えている」企業としてアピールになりますし、中小企業でも取り入れやすい制度といえるでしょう。

この記事は2019年11月に発表したものをリライトしたものです。




☆★☆このnoteについて☆★☆

読む人がすーっと読めて、なんとなーく労務管理脳になってもらえることを目指しています。会社員、社長や管理職、正社員もアルバイト・パートも、またフリーランスなど雇用契約を結んでいない人、どんな人でも働くときの権利について知っていて損はありません。

働く全ての人が知識の底上げをしていき、私の目指す世界「人生・仕事を面白がれる大人を増やす」につながっていくことを期待しています。

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