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長時間労働はよくないんだけど、「だけど」の続きを明文化するのが大切だという話

私は社会保険労務士として中小企業の雇用環境整備を支援することを業としています。
あるお客様の社内委員会の一場面で「仕事がはかどるのは何時くらいですか?」という質問を投げかけたところ、社員の方がこんな風に答えてくださいました。

「実のところ夜型で、夜中の方がアイデアが出るんです。アイデアが出たら、すぐに試したくなるんです」

この会社はテレワーク制度のある会社で、事業主は兼ねてより「社員が相当無理して長時間労働になっているんじゃないか、心配です」と言っていたのを聞いていましたので、上のような社員の言葉を聞いて「やっぱり…」と思いました。やっぱり、タイムカードを切った後、夜中まで仕事をしていたのね。(打刻上、深夜労働の記録が一切なかった)

私の想定から外れたのは、長時間労働の原因について。
仕事がどうしても終わらないから夜までかかってしまう、という後ろ向きなものではなくて、どうやら本人は楽しんで仕事をしている様子だという点でした。社員の方は続けてこうも言っていました。

「自分としては、勉強のつもりだと思っていろいろな方法を試している部分があって、仕事かどうかと言われると線引きが難しいんですよね」

仕事を面白がれる状態だと、自ら勉強して”もっと上”を目指したくなるものですよね。気持ちはとてもよく分かります。
とは言え、無申告の時間外深夜労働を看過するわけにはいきません。

長時間労働が続くことで、いつか心身の健康に問題が生じます。会社には安全配慮義務が課せられていることもあり、組織運営上、社員の良心に甘んじるわけにはいきません。また、会社としては適正に人員配置をすることでより効率的に稼ぎ続けることも可能になるわけで、極端な個人プレーは組織としての成長の機会を潰すことになります。

委員会ではその辺りの、労働時間を適正に把握する意義について簡単に触れたうえで、私からは「お願いベースになってしまいますが、正しく打刻してください」と申し添えました。

何が仕事の面白さをつくるのか

仕事が面白がれるのはどんなときか。何がきっかけで仕事がつまらないものになってしまうのか。

ある時、知り合いの人事コンサルの方とお話をしているときに、その方がとても興味深い手法をとっていたので大変勉強になりました。

その方は≪社員の行動変容を促すために、まず社員が何を幸せと感じているのか≫を一人ひとりヒアリングするのだそうです。幸せ度を測るために何をするかというと、社員が何を欲しているのかを書き出してみる…たとえば、
・健康である
・安心安全である
・地位や力がある
・十分な給与(お金)がある
・創造的に振舞える
といったポイントの中で、どれに重きを置くのかという感じです。有名なマズローの欲求5段階説を、各段階ばらばらにしたような。

面白いのが、この幸福度チェックを社員間で共有するということです。そうすると何が起きるか。社員の幸せに思うポイントが上司が把握していると、声の掛け方が変わってくるそうです。「この前のプレゼン資料、○○さんも良いって言ってたよ!」というのか「この前のプレゼン資料で受注が決まったら、金一封ものだよ!」というのか、など。(概要をお聞きしただけなので、幸福度の診断の仕方やその後どうフォローしていくのか、詳細は私の想像に過ぎませんが)

会社の規模によっては1年に1回ストレスチェックを行うことが安全衛生法により義務化されています。が、この幸福度チェックはストレスチェックを行うよりも職場環境改善に寄与すると直感しました。個人の幸せにアプローチして幸福度を向上する働きかけをしていけば、職場全体の雰囲気だって良くなるに決まっています。

社員が何を幸せだと思って仕事をしているのか。
個人の価値観によってばらばらですが、幸福度の可視化は非常に面白い手法で、今後取り入れていきたい、有り体に言えばパクらせてもらっちゃお~ニヒニヒと思った次第です。

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