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データを見ながら、高知県の”教員不足”とは何かを考える

昨日からの続き

教員は足りていないのです。それは実態としてあるのでしょう。

ただ、高知県の取り組みには疑問があるのです。

高知県教育委員会によりますと、今年度に採用した小中学校の教員は予定より30人ほど少ないなど教員の不足が深刻で、このままでは新年度に例年どおりの教員数を配置できない学校が出てくる可能性があるということです。

NHK NEWS WEB “教員不足” 教育長が街頭で教員確保への協力呼びかけ 高知

採用した小中学校の教員は予定より30人ほど少ない。

ということらしいですね。

では、令和5年度(令和4年度実施)高知県公立学校教員採用候補者選考審査名簿登載者・任期付教員名簿登載者はどうなっているのか、高知県教育委員会のHPを参照して調べてみます。

令和5年度(令和4年度実施)名簿登載者数等

まず、小学校の採用予定者に注目してみましょう。まず、採用予定者数は 130 名程度となっています。それに対して応募者数は全体で 968 名です。採用試験では第1次審査と第2次審査があり、それらに合格した合格者(第1回名簿登録者数)は 133 名となっています。採用予定数とほぼ同じ人数が名簿登録者となっています。

中学校の採用予定者は68名程度で、応募者数は全体で 595 名。小学校と同様に第1次審査と第2次審査があり、それらに合格した合格者(第1回名簿登録者数)は 70 名となっています。こちらも、採用予定数とほぼ同じ人数が名簿登録者となっています。

養護教諭や栄養教諭も併せて、小・中学校合計では採用予定は211名程度、応募者数は全体で 1,841 名。合格者(第1回名簿登録者数)は 216 名となっています。

これだけを見ると採用はうまくいっているように感じます。

が、しかし

表をよく見ると、第2回名簿登録者数という項目があります。

第1回名簿登録者というのは、9月30日に発表されています。ここで小学校教諭名簿登録者が 133 名発表されています。

これと同時に、教育長談話として

3 本年度末においても多くの教員の退職が見込まれることから、より多くの受審者を確保し、高い資質を持った方を採用するため、昨年度と同様に、第1次審査を全国で最も早く6月18日に高知会場及び関西会場で実施いたしました。
4 また、昨年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、専門教養のみの実施でしたが、今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めながら、募集要項どおり、適性検査、専門教養審査、教職・一般教養審査を実施しました。その結果、2,131名の受審者の中から、優秀な採用候補者を選考することができたと考えております

令和5年度(令和4年度実施)高知県公立学校教員採用候補者名簿登載者発表 教育庁談話

と発表しているわけです。

多くの候補者に受審してもらうために、全国で最も早く教員採用試験を実施しているのが高知県です。さて、その結果はどうなったのかといいますと。

約1ヶ月後の10月28日

第2回名簿登載者というものが発表されています。

そこには、

小学校は 88 名、中学校は 23 名 の名簿登載者が。

さて、これをどう理解したらいいのかと、小学校を例にして考察します。

  1.  小学校の教員は令和5年度に、130名欲しかった(採用試験前)

  2. 合格者 133 名とし、名簿掲載とした(9月30日)

  3. 追加の合格者を 88 名 とし、名簿に追加した(10月28日)

ということなんですよね。ということは、最初の合格者 133 名のうち、88 名程度が辞退したってことだろうと推察されます。

約 66% が辞退してるということ???

えーと、これは、手法としてどうなんですか?

さらに追い打ちをかけるように、年明けの1月20日には、第3回名簿登載者が発表され、22 名が再度追加されているわけです。第2回と第3回を合わせると 110 名の追加合格。最初の合格者の85%にあたる人数を追加。

さて。どうしたものか。

小・中学校合わせたものをデータから読み解くと、211 名募集をしていたところ、第1回目で 216 名の合格を出し、第2回目に 110 名、そして第3回目で 44 名の合格を出している。
この方法で、教育長の考えている

「より多くの受審者を確保し、高い資質を持った方を採用するため」

という目的は達成できているのでしょうか。そもそも、第1回の合格者のうち、半数は辞退していると推察されるじゃないですか。いまのやり方って大丈夫なんですかね?

で、話を元に戻すと

現状として、高知県教育委員会によると「今年度に採用した小中学校の教員は予定より30人ほど少ない」ということです。

211名の教員数を欲していて、216名の合格者を出し、追加で 110名、更に追加で 44 名。そして 30 名足りない。

で、高知県教育委員会の職員12人がとった行動が、日曜日に街頭に立ち、教員確保への協力を呼びかけ。。。

「優秀な採用候補者を選考することができたと考えております」の談話はどこへいってしまったのでしょうか。そして、起こすアクションは、何かが違うのではないでしょうか。

採用倍率だけは、どの自治体よりも高いのです。にもかかわらず、人が足りない状態となっている原因はなんなのでしょうか。最初から合格者をもっと多く出すことはできなかったのか?合格者数を出せないのであれば、そもそもこの採用試験の仕組みはこのままでいいのか?そもそもの採用試験を前倒している目的ってなんでしたっけ?

採用倍率2倍になって、危機感を感じている自治体もあります。首都圏では、前倒しで大学3年生を採用試験に取り組もうという動きもあります。

次年度も、同じように全国に先んじで採用試験を実施するようですが、その次の年度の大学3年生はターゲットにされるんでしょうか。そんな動きなさそうですが。

私立学校で、自由気ままにさせてもらっている身なので、どーのこーの言う立場ではないかもしれませんが、住民として、教育に携わるものとして、高知県の公立学校の教員予定者の確保のあり方には危機感を感じています。

高知にお住まいのみなさま、このままで大丈夫ですか?

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