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脱線日記「友人に“N数”とか言ってはいけない」

・今住んでいるアパートには雨戸が付いている。開け閉めするだけで雷鳴のように大げさな音がする。面倒なので普段は使わずに開けっぱなしにしていたが、昨日なんとなく雨戸を閉めて部屋を真っ暗にした状態で寝たら、次の日起きたのが14時半だった。
身体が夜だと錯覚していたからとはいえ、自分がまだ14時半まで寝ていられるポテンシャルを持っていたことに驚いた。自分もまだまだ若造を名乗っても良いらしい。ちょうど今日は31歳の誕生日だ。

・中学で漢文を習った後、クラス内で「〜があるだろうか、いや、そんなことはない」という反語表現が流行ったり、高校の英語でenough to構文を習った後に「〜してもし過ぎることはない」が流行ったりする。文語体をあえて口語で喋ることのおかしみ、それをクラスという狭いコミュニティの共通言語として共有する喜びは他の何物にも代え難い。
最近自分の中でよくないなと思い始めたのが、それを社会に出てからもやろうとしてしまうことだ。社内でしか聞かない専門用語を社外で使うことにおかしみを覚えてしまう。
中学高校のクラス内ではその言い回しが共通のコードとして認識されているからこそ成立したものが、事務職の友人に対して「いやN数が足りないだろ」とか言ってしまうので、当然友人にはちんぷんかんぷんなのだが、ついやってしまう。「思いつきの【おもしろ言い回し】は他人と共有できない場合は言わずに堪えておく」をいい加減学習した方がいいかもしれない。それはただの自己満足だ。

・上記のことを思った理由に、IT企業に勤める友人のふとした発言がある。その友人は会話の中で「こないだ上司とワンオンワンしたんだけど〜」と言っていた。
私の頭に浮かんだ映像は、友人とその上司がわんことじゃれあっている様子だ。でも前後の文脈をたどるに、ワンオンワンとはどうやら面談(1on1)のことらしい。
この場合、友人は別に【おもしろ言い回し】ではなく、普通の日常語としてこの言葉が選ばれていたように見えたが、どちらにせよ一般名詞で代替可能な表現は何かの高次なレトリック表現でない限り、プラスに働くことはあまりない。
それにしても、IT企業は妙な言い回しが多くて大変だ。面接のことを1on1って言ったり、入社することをジョインって言ったり、発売することをローンチと言ったり、わざわざその言い方をする必要がないカタカナ語の言い回しが周囲を飛び交っているわけだ。働いている当事者はもしかしたら普段からカタカナ語を使うことが働く上でのリズムというか、調子を整えるためのビタミン剤みたいな働きをしているのかもしれない。しかし部外者の自分にとってそれらの言い回しは“かゆみ”でしかない。かゆみは痛覚が弱く働いたものと聞いたことがあるが、1on1やジョインは自分にとって100倍くらいに希釈したチクチク言葉なのだ。

・Youtubeに「あのちゃんねる」という動画があがっている。その中であのちゃんが池谷幸雄に体操を教えてもらう回があるのだが、この動画がめちゃくちゃ面白かった。
池谷先生も当然すごいのだが、あのちゃんがガツガツ来る池谷先生に対しての距離の取り方が絶妙なのだ。これが反抗し過ぎたら生意気な印象を受けるし、歩み寄り過ぎてもタレント過ぎちゃうし、嫌々ながらも進行には則ってくれるのが観ていて心地よい。でも時折り「これ何の意味があるの?」と概念に疑問を持ったりする、と思ったらちゃんとコツを聞いたりする。
やっぱり何事もバランスが大事ですよね。ゲームでも、映画でも、料理でも、お笑いにしても、王道過ぎると退屈だし、新しすぎても受け入れられないし、顧客におもねりすぎても、自分よがりすぎても、それはお呼びでないのだ。それを提供するのが一番難しくて、そこのさじ加減を調整できる境地に達したのがあのちゃんなのだ。あのちゃんには学ばされることがたくさんある。ラジオにメールを投稿しているがまだ一度も読まれていないので自分はまだそこには達していない。

・音楽の嗜み方が昔からおかしい。
普段、生活をしていて音楽鑑賞をする時間というのがほぼ無い。元々そんなに音楽に興味もなく、音楽に心を動かされる感受性が人と比べて足りないのか、あまり聴いてこなかった。音楽プレイヤーも買ったことがないしカラオケにも行ったことがないので、自分世代で流行った歌が全然ピンと来ない。
ただ、深夜ラジオを通勤・退勤時間にタイムフリー機能で聴いているので、その番組内で流れた音楽を耳にして「この曲、なんか気になるな」と興味が湧くことが稀にある。
そしてYouTubeでその曲名を検索し、その1曲だけを繰り返し聴く。同じアルバムの他の曲も試しに聴いてみるのだが、やっぱりその1曲にしか興味がない。何度も何度も繰り返し聴き、聴き続けるうちにやがて飽きてくる。そしてまた何も音楽を聴かない日々に戻る、という所作の繰り返しだ。
だから「好きな音楽は?」と聞かれると困る。興味が湧くジャンルに傾向がない上に、これまで歴代の興味がわいた曲のログを残していないので曲名もアーティスト名も覚えていないからだ。
話は変わるけど、1〜2歳の子どもは箱から物を出したり入れたりする動作を繰り返すことがあるらしい。これは、同じアクションをすると同じリアクションが返ってくることを確かめて心理的な安心感を得るためというのが行動原理らしい。
自分の音楽を聴く姿勢もこれなのかもしれない。音楽の知識は赤ちゃんレベルなので、とにかく同じ音楽を聴いて安心したいのだ。だから保護者の皆様におかれましては私のことはそっとしておいてください。

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