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ミステリーショート「持続可能性輪廻」

登場人物
鷺沼順也・・・刺し殺された。
天使・・・・・性格が悪い。
瑠璃羽・・・・順也の恋人。
親父・・・・・順也の父。
おふくろ・・・順也の母。
山田・・・・・農家。
田野山・・・・順也の元同僚。

ドッ。ゴリッ。

骨に響く鈍い音。
瞬間、鼻の奥に満ちる匂い。赤。黒。鉄。血。

ヒュー……ヒュー……。

下半身に溜まる鈍い感覚。意識して足掻く手足が、反射反応だけになる。呼吸が弱く、細く、糸になる。そして、プツン。……フッと訪れた透明。白。楽。何も見えない。聞こえない。感じない。

俺は、死んだ。

「やあやあやあ、どうもどうも」

宙に浮かんだと思ったら落ちて、気がつくと通い慣れた帰宅路にいた。電柱が夕闇を淡い円に切り取っている。なんでオレはこんなところに?いつ来たんだろう。熱っぽくて、頭が痛い。考えがまとまらない。
そこに突然、バカに明るい声が耳に飛び込んでくる。なんだ?

「おめでとうございま〜す!」
「は?」
「あなたは、死にました!」

死んだ?オレが?はぁ?

「ぼくは、選択の天使。一縷の望み。蜘蛛の糸。ラストチャンスの申し子。果たしてその実体は!?はい、ぼくは生死にかかる運命の選択を変えられる天使なんだ。いやぁ、ラッキーラッキーすばらしい!アナタは超幸運だよ、まあ死んだけど」
「意味がわからん」
「悔しいよね、意味わからんよね、なんで???だよね。慚愧、残念、在庫処分。今なら、そんなきみに大チャンス!アナタが死ぬきっかけになったもの、犯人を当てられたら正解。正解したら、生き返れまーす!」
「……はあ?」

なんだそれ。というかこれ、夢か?

「夢じゃないですー」
「えっ……」

ガキみたいななりしてるくせして、こいつ……。気持ちわりぃ。とにかく一度落ち着け。ジリリ、と地面を擦りながら一歩下がる。離れた方がいい。これは関わったらやべぇ奴だ。

「たかが炭素の組み合わせに走る一瞬の夢みたいなくせして、生意気なこと言うね。でも落ち着くのはいいと思うよ。ほら、思い出してきた?」
「……うるせぇ」

パチン。

走り出そうとしたと同時にそいつが指を鳴らした。ジェットコースターが駆け下りるときみたいに股間の奥が重力に引き抜かれた感覚、失禁。いや、ドロリとしたぬるさが漏れていく。倒れ込んだ先、地面は鉄の匂いと生臭さが広がっていた。光の消えたくぼみ、スーパーで見かける稚鯛のような濁った両眼がこちらを見ている。俺だ。

「ひぃ」
「ワカリマシタカ?OK?ダイジョーブ?あなたは死にました。人生、お疲れさまでした」

ヒュー……ヒュー……。息をすると痛覚がいっぺんに追いついてきた。ドッドッドッ。骨に直接電気を流されるような衝撃と、鈍い痛みが波になって襲ってくる。あ、あ、あ、ああ。助けて。痛い。死ぬ。ああ、あ。嫌だ。嫌。ゴボッ。ぐぅ。ああ、ああ。

パチン。

そいつがまた指を鳴らすと、波は遠くに去った。なんとも言えない嫌な感じだ。遠くだが、たしかにある。心地悪い汗と焦燥、内臓を握られたままのような気持ち悪さ。立ち上がる。さっきまで血の海に倒れていたのに、濡れてない。服も乱れてない。意識して深呼吸をするが、落ち着かない。
地面には、オレが死んで横たわっている。虚ろな目は宙を見たまま、定まらない。背中の左後ろには、包丁が突き刺さっていた。赤。黒。透明。泥混じりの液体。脳の処理が追いつかなかったのか、じっくりと眺めた後、込み上げてくる胃酸。反射的にオレから目を逸らし、道路脇に吐いた。

「あらあら、ご自分なのに。ダイジョーブですか?まあ誰に見られるわけじゃなし、焦らず怒らずゆっくりしてってね」
「……クソが」

ニヤニヤが貼り付いた顔に、背筋が寒くなる。こいつ、どうやらホントらしい。オレは死んだ。殺されたのか。なんで?どうしてオレが?理不尽だろ。世の中もっと死んだほうがいい奴たくさんいるだろ。

「そうですよねぇ。理不尽、友人、自分勝手ですよねぇ。で・す・か・ら、あなたに大チャンスってわけです」
「……オレを殺した奴を当てる」
「そう!やっとわかりました?おめでとうございまーす!まあ、ぼくはぶっちゃけどっちでもいいんですけどね。生きてるのと死んでるのはバランスなんですよ。閏年って知ってます?」
「閏年?何年かに一回くるあれか?」
「そうですそうです。生き死にもねぇ、ちょっとずつずれるんですよ。調和が。めんどくさいですねぇ。だもんで、こんなふうにときどき、調整が入るんです」
「調整」
「そうですそうです、ちょっとしたさじ加減。塩を少々、コショウ適量、あなたはどっちでショー?」
「……クソが」

人の生死をまるで虫けらみたいに言いやがる。最悪の気分だ。だが、さっきの死ぬ感覚は、怖い。根っこのほうで竦むような、絶対に抗えない根源的な恐怖。

「なに言ってるんですか。虫もお花もあなたもみーんな、等しく最後は死んじゃうんですから。調和ついでにじたばたしちゃってくださいよ、ね?ほら」
「……クソが」
「ありがとうございま〜す!さっそく、ほら。よく見て触って、考えて。努力次第でばっちり生き返れますから」

こうして、オレはオレを殺した奴を当てることになった。

人間、どんな状況にも慣れるもんだ。
たとえ目の前で、オレが死んでいても。

誰がオレを殺したのか?

考えても考えても、さっぱりわからない。いつもの帰り道。住宅街を抜けた先、開けたところ。そばには管理農地だったか、畑が広がり、いつも口うるせぇジジイがいやがる。そういえばこの間、瑠璃羽と歩いていたときも、たかだかタバコのポイ捨てくらいで怒鳴ってきやがった。めんどくさい奴。

瑠璃羽、か。

瑠璃羽。将来を誓い合った女。出会ったばかりだけど、いい女だ。よく笑うし、一緒にいて気分がいい。セックスも言う事聞くし気持ちいい。しかしあいつ、結婚するって言った途端に保険だのなんだの口うるせぇこと言い出したんだよな。あやしいんじゃねぇか。そういえば昨日も勝手にうちの親父おふくろと勝手に結婚式の話進めてたり、はぁ。気分クソで喧嘩したんだったな。あークソ、思い出してきた。

「なに笑ってんだよ」
「いやぁ、人間が一生懸命に悩んでるところって、ほんとにおもしろいです。はい、いいですよ〜。気にせず続けて続けて」
「てめぇ、性格最悪だな」

ごちそうさまですぅ、と意味わからん返しに会話になるのかならねぇのか測りかねる。でもこれも読まれてんだろ、どうせ。ああ、ちくしょう。わかんねぇ。でもまあ、とりあえず当てずっぽうでもやってくか。

「瑠璃羽だ」
「瑠璃羽さん。恋人、婚約、秒読み待ったなし。将来を誓った仲でしょう?いいんですか?」
「他に思い付かねぇ」
「でも一回ですよ」
「一回?」
「チャンスは一回。一回こっきり外せばジ・エンド。死にまーす」
「はぁ?」

まじかよ。一回?無理だろ、そんなん。

「そりゃそーに決まってるじゃないですか〜!何回もできたら、反則ですよ」
「……存在が反則みたいなくせに」
「ははは、たしかにたしかに。でもでも、答えは一回。それだけです。外れたらおしまい。あ、また誰かのところにいってバランス調整しますから、そこんトコは大丈夫です」

全然大丈夫ではないが、なにを言ってもルールは変わらないらしい。生死を握られてると、どんな笑顔も薄ら寒い気味悪さがある。くそっ。落ち着いて、よく考えなくてはならない。オレを殺したやつ。殺したいと思うほどのやつ。元同期の田野山か?片っ端から客を取ってクビに追い込んだから?でもまあ、うまく立ち回れないあいつがわりぃよな。いつも笑ってたし。親父もおふくろも迷惑かけたが、お互い様だしよ。瑠璃羽に出会ってからは、いい感じに取り持ってくれてるし。瑠璃羽、瑠璃羽もあやしいが殺されるほどじゃねぇ気がしてきた。喧嘩もするし、手もでたことあるがどっちもどっちだろ。あー、わかんねぇ。思い付かねぇ。いったい、誰だよ。

「迷ってますねぇ、困りますねぇ」
「うるせぇ、今考えてんだよ」
「そんなアナタに朗報です!」

野郎は、パンパカパーンとクラッカーでも鳴らすみたいな真似をして拍手する。動作の一つひとつが大げさで、また指でも鳴らされるんじゃねぇかと身構えてしまった。

「ふふふ、まあまあ。落ち着いて。クイズ♪アナタの人生、誰が幕を下ろしたのか?特大ヒントです。人生、巻き戻し早送りプレイバック、今ならサブスク見放題です」
「はあ?」
「走馬灯のビジネスクラス、プレミアム版ですよ。ワオ!まずはお試し。はいはい、ちょっと待ってくださいね。あらよっと」

天使がテーブルの上のゴミでも払うようにサッサッと手を払うと、地面に倒れているオレが起き上がった。時間の巻き戻し。みるみるうちにオレが後ろ向きに歩いていく。

「こんな感じにアナタの人生と、死にざまと、そのちょっと先まで見放題です〜。プレミア〜ム。エンドロールのあともお楽しみ付き。焼かれて骨になるまで見れちゃいます。知ってますか?人間死んだあともしばらく感覚器は動いてるんですよ。ラストは聴覚だったかな?すごいですねぇ。これならわかっちゃいますねぇ、きっと」
「……おいおい、それなら!」

見様見真似でサッサッと手を動かすと、同じように景色が行ったり来たりした。なんだよ、これなら簡単じゃねぇか。誰がオレを刺したか、見りゃあいいんだ。ははっ、楽勝楽勝。

「……なんだよ、これ」

その瞬間、一時停止された場面でオレの背中には包丁が刺さってる。あれはなんだ?ビニールテープ?包丁の柄には白いテープがぐるぐる巻きにしてある。見ていて気分いいもんじゃねぇ。吐き気がする。
そんなことより、犯人だ。黒い。人間の形をした靄みたいな黒い影がうっすら漂っている。ガキの頃みた推理もんのアニメみたいだが、よっぽど気色わりぃ。

「ざんねーん。そりゃネタバレしちゃったらつまんないでしょ。犯人は見えませーん」
「てめぇ……」
「まあまあ、とりあえず定番のお通夜でも見ときます?なかなか見られませんよ?自分のお通夜とか葬式」

ニコニコ笑顔で手を回す姿は、たのしくて仕方がないガキのそれだ。クソが。オレの命ってのは、こんなやつに弄ばれるようなもんなのか。朝が過ぎ夜が過ぎ、早口で聞き取れない音なのか声なのか言葉なのかわからねぇ何かが聞こえた。天使の野郎が、ピタッと手を縦に切ったと思ったら、実家の居間だった。
遺影。線香の匂い。見慣れた居間に見慣れないでかい箱。棺桶か。でかすぎて、部屋が狭く感じる。あれは誰だ?ああ、小学校の担任の野郎だ。はっ、正月にしか見ねぇ親戚も勢揃いしてやがる。……オレ、ほんとに死んだんだな。

「いや、嫌だよ。順也、なんで……。わたしたちこれから……これから一緒に……一緒にたくさんいられるって。ねぇ、起きてよ!ねぇ、順也。いや、嫌よ!順也ー!!!」
「瑠璃羽ちゃん。もう、もういいから。大丈夫だから」
「ね?一回あっちで休もう」
「嫌です!離れたくない……!」

瑠璃羽が泣いていた。嗚咽混じりに、あんなに。化粧もしてない、髪もボサボサだ。あの瑠璃羽が。取り乱して。親父もおふくろも、あんなに年寄りだったっけ。……ごめんな。ごめんなさい。死んじまって、ごめん。

「……もういい」
「見なくていいんですか?もう少し先もありますよ」
「もういいって言ってんだろ!」

ついさっきまで、なんとなく現実感がなかった。夢みたいだった。てか、悪い夢だ早く覚めろくらいでいたが、違うらしい。どうやらオレは、真剣に生きたい。生き返りたい。

誰が、オレを殺したのか。
絶対に見つけ出してやる。

自分が殺されるところを何度も何度も見るのは、なんというか不思議な気分だ。最初は最悪に胸糞悪りぃものが込み上げてきたが、だんだん慣れてむしろ現実感がない。しかし、何かが引っ掛かる。何かはわからねぇが。

「誰かに恨まれてるとか、揉めてる相手がいるとか、痴情のもつれ……ああ、これは違うんでしたっけ?わかりやすい人生なら、クイズ楽ちんチンなんですけどねぇ〜〜〜」
「黙っててくれ」

暇を持て余しはじめたのか、天使の野郎がちょくちょくちょっかい出してきやがる。クソが。絶対に正解して、生き返って、バランスとやらを奪ってやる。

揉めた相手か。思い付かねぇ。だいたい喧嘩だの恨みつらみだのは、その時その場で解消したほうが早い。後腐れなくぶちのめしておけば、あとが楽だ。逆らってくるやつなんかいねぇし、いたら覚えているはずだしよ。
待てよ……。そうか。

「わかったぞ」
「……!なんと!果たして真実やいかに!」

大仰に手を振りまく天使を横目に、オレはもう一度オレが殺されるところを再生した。あれだ、ビニールテープが巻きついたきったねぇ包丁。見覚えがある。

そう、瑠璃羽だ。先週だったか、先々週だったか。たかがポイ捨てに切れてきたジジイ。瑠璃羽に「拾え!」なんて言いやがるから、一発お見舞いして黙らせてやった。あのジジイのそばに、農作業で使う鎌だのなんだの置いてあったはずだ。たしか……。
ぐるぐると手を回すと、晴雨朝晩、光がヒュンヒュン飛び去っていき、いつかの場面にたどり着く。ここだ!一時停止した、まさにそこ。土まみれで薄汚れたジジイが倒れてる。へっ、いいやつお見舞いしてやったな。その横、ここだ。たしかにある。野菜の収穫に使ってるんだろう。あのきったねぇ包丁が。

「なんだ、わかっちまえばだな。へへっ、いい気分だぜ。どうだ?天使。オレの勝ちだわ」
「いやぁ、すごいですねぇ。よく見つけましたねぇ」
「負け惜しみはいらねぇよ。ほんとうだろうな?犯人は、あいつだ。あのジジイ。逆恨みもいいとこだぜ。たかだかタバコ一本で殺されてたまるかよ。それこそ、バランスが崩れるぜ」
「いいですか?ファイナルアンサー?ファンファーレ?」
「いいから早く生き返らせろ。そして二度とオレの前に来るな。死んでも会いたくねぇ」
「いやぁ、ひどいですねぇ……。でもまあ、十分たのしませてもらったんで!ありがとうございます〜〜〜。はい、それでは。ドゥルルルルルル、チーン!アナタを殺したのは?!」
「あのジジイだ!」

瞬間、目の前にまばゆい光が溢れて何かに吸い込まれるような感覚と落ちていく感覚がいっぺんにやってきたかと思ったら、急に視界が真っ暗になり、天使の野郎が消えた。

「正解〜!」
「……嘘だろ、おい!ああ、痛い。嫌だ、嫌、なんでオレなんだ!?!ああ。あっ、死ぬ。死にたくない死にたくない死にたくない、、待って、待ってくれ!もう一回、痛い。ああ……死にたくない死にたくない死にたくないぃぃいいい」

ドチャ。鈍い音とともに、彼は彼のもとに倒れ落ちる。しばらくパクパクと口が動いていたが、目の光が失われていくとともに止まった。

「バイバイ」

人間、最後は聴覚が残るらしい。夕闇に声が響く。バイバイ。バイバイ。バイバイ。波のように繰り返しながら、景色はどんどん進んでいった。

「彼も、もう少し先まで見たらよかったのに。残念ですねぇ。せっかく一度は正解したのに。ご愁傷サマー。あなたのために、ちゃんと運命変えてきましたから〜〜〜」

暗闇に横たわる男。鷺沼順也だったモノは、虚ろな目を宙に向けている。場面はそのまま早送りで過ぎていき、あの女が写った。

「いや、嫌だよ。順也、なんで……。わたしたちこれから……これから一緒に……一緒にたくさんいられるって。ねぇ、起きてよ!ねぇ、順也。いや、嫌よ!順也ー!!!」

彼も被害者ではある。だが、同情できるほどマシな人間ともではない。悪いとは思うが、罪がある。わたしは、何年も何年も耐えたのだ。屈辱の日々だった。

棺桶と仏花。靄のかかった部屋。脱ぎ捨てられた喪服と缶ビール。細いタバコを咥えながら足を組んだ女が、不遠慮に笑う。

「いやぁ、嘘でもあれだけ泣くと疲れますね。お義父さん、お義母さん」
「瑠璃羽ちゃん、すごいねぇ。ほんとに悲しいのかと思ったよ」
「ママ、ついつられちゃったわぁ」
「嫌だなお義母さん〜、そんなわけないじゃないですか〜。うまくクズを換金できたでしょう?」
「いやぁ、よかったよかった」
「犯人の目星はつけてるんだよね?」
「ええ、あの目障りなジジイ。ちょうどいいからあいつにする。でも、もう少し後ですよぉ。あたし、あと何人かお金になりそうなクズのキープいるんで」
「あんまりやると疑われるんじゃない?大丈夫?」
「大丈夫ですよお。あたし、頭いいし。うまくやります〜」

瑠璃羽。あの女。あの女のせいで。
沸き起こる怒りに震えが止まらない。何年も、何年も刑務所の中から訴えてきた。何度も何度も。繰り返し繰り返し。しかし、まともに取り合ってもらえなかった。俺は加害者、あいつは悲劇のヒロイン。世間は表面でしか見ない。見てくれない。そして、ついに俺の死刑は執行された。

キィ……キィ……キィ……。

だらりと絞首台にぶら下がる俺が、目の前で揺れている。長かった。苦しかった。ここまで。長い長い日々だった。

「いやぁ、執念ですねぇ。お見事お見事大正解。稀代の連続猟奇殺人犯、山田さん」
「俺は、やってない」
「そんなの知ってますよぉ。ぼく天使ですから。えっへん。冤罪、無罪、まっしろしろ。たまたま運よく生き延びた最初の被害者の証言が決め手で、有罪にされた哀れな男。あなたの運命は変わりました。パフパフ〜!おめでとうございまーす!」
「……」
「生き返ったら、まあ正確には死ななくなったらですけど〜。第二の人生、なにしたいですか?」
「……あの女を止める」
「ふぉ〜〜、復讐ですか?マジ?山田さん生き返った時点だと、まだあなたにはなんにもしてないですよ?」
「10年、獄中で10年かけて調べた。お前の力であいつの悪行も見尽くした。俺だけじゃない。あいつはたくさんの人の人生を喰い物にして、めちゃくちゃにしてやがる。……もちろん復讐もある。こんなの、許せないだろう」
「はぁ〜、そういうもんですかねぇ」
「……あの女が、死んだら」
「はい?」
「死んだら、あの女のところにも行くのか」
「どうでしょうかね〜」
「……それならそれでいい。殺されても、何度も、何度でも生き返って殺してやる」

はぁ。この顔。この表情。ゾクゾクしちゃうね。飽きたらやめようと思ってたのに、全然飽きないや。困ったなぁ。ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。おもしろいなぁ。

早送り。巻き戻し。再生。
ポチッとな。

「やあやあやあ、どうもどうも」


おわり。

待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!