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本田さんの解説

本田さんの解説

作品とすら呼びたいその美しい様は、おじさんのハートを見事に射抜いた。

まず、その美声。
選手としてはしっかりベテランの年齢になる本田さん。それでも声は若々しく青年のような輝きを放つ。
そんな彼の声から発せらる「ファールやろ!」「オフサイやろ!」「PKやろ!」という、瞬時に出る叫びは、我々が恥ずかしくも喉元で留めていたような圧倒的サポーターガヤの爽やかな代弁だ。
彼はいつだって我々と一緒なのだ。
我々と同じ、にわかも通も老いも若いも含めた「視聴者」なのだ。
そこだけ抽出すれば松木氏とも一緒だ。

本田さんが圧倒的なのは、誰よりも怒り、誰よりも悲しみ、誰よりも喜び、誰よりも声を出す味方なのだ。
その姿は、チャンスで叫びピンチで叫ぶだけの解説とは大きく違う。
彼は、本気で勝ってほしいのではない。
本当に勝ちたいのだ。
だから、ムカついたりもする。
それは彼にとっては当然、つまり我々にとっても当然なのだ。
これは「視聴者」としての本田さんのすごいところ。
次は「解説」としてのすごいところ。
僕はワールドカップくらいしか見ない典型的なにわかおじさんファンだ。
サッカーを見る時はチャンスで叫びピンチで叫ぶだけの無能ファンだ。
そんな私には松木の解説がお似合いか…なんて肩を落とした。
そんな私のサッカーを見る目が変わった。
変わるきっかけをくれたのが本田さんの解説。
サッカーを戦術で見たことがある人、どれだけいるだろうか?
フォーメーションの名前とか並びとかは分かるけど、何を狙ってどう崩すか、みたいなことはなんとな〜くでご覧になってませんか。
そんなとき、本田さんはまるでチェスのように戦術の争いを見事に言語化している。
正しいか、上手いか、そんなことは分からない。
にわかだもの。
しかしその魔法のような戦術解説は、僕に戦術という価値観を与えるには十分な魅力だった。
ブラボー!ブラボーブラボー!

そして驚くのは、その解説は綿密な下調べではなく、監督本田さんとしての戦術眼に対する自信を、ベンチで監督とぶつけあってるような臨場感があることだ。

そう、彼は「日本代表」でもあるのだ。
彼は一緒に戦っている。
彼らが直面している戦術の壁に、針の穴を通すようなチャンスに、共に立ち向かい手に汗を握っている。
フィールドに配置された選手たちのベストな動きを考え、結果的に遂行された選手たちのプレーに叱咤激励する。
明らかなミス、と取れるプレーには「前田さん前見れたやろ〜」と単刀直入に申し上げる。
消極的なシュートには、「鎌田さん置きにいったな〜」という批判のみではなく、「わかる!むずいよな!」とチームメイトのように同調する。
時に「僕出ましょか?」とか言う。

そんな解説によって我々は希望を与えられる。
彼はいつだって日本代表として勝とうとしているから。勝てると信じているから。
本田さんが、我々の希望なのだ。

惚れてまうやろ。

監督による選手起用や、機能した戦術にも大きな拍手で賛辞を送る。
ドイツ戦後、彼は森保采配による勝利と太鼓判を押した。
しかし。
疑問があれば、真正面からリスペクトを持って異を唱える。
コスタリカ戦後、森保采配に大きな疑問符を投げかけた。

そう、彼は「指揮官」でもあるのだ。
これまでの本田さんのすごさと、「指揮官」という姿は少し異なる。
時折見られる"自分が監督だったら"という目線。
私はこの目線をチーム内からの目線、つまり「日本代表」としての本田さんだと思っていたが、それはたぶん違った。
この視点は、"監督業"として見たら自分はどうするかという視点。
つまり指揮官としての力量比べをしている。
挑戦的なifだと思った。
表現のまわり道をしてしまったが、
つまり彼は「いずれ日本代表の監督になる」という視点があるのだ。
俺が「指揮官」ならこれくらい出来るぞと。
どうや。俺の監督としての実力どうや。
その挑戦状を、誰よりも我々に見せているのだ。
協会でも関係者でもなく誰でもない我々視聴者に。
いやむしろその全員に。
アベマという、現世代を代表するネットテレビを通して。
そしてそれは瞬くもなくネットニュースになり、ワイドショーが取り上げ、全テレビ局がオファーに動き、一気に話題を掻っ攫った。

このセクションでは「指揮官」としての本田さんについて書くつもりだったが、
このブームと言うべきストーリーでは「解説」としての本田さんが一気に売れっ子タレントになっていく、その様に見える。
たしかにここから一時的に引っ張りだこになるでしょう。
それだけの魅力がある。
(彼にそれだけの空き時間があるならばの話だが)
そして「解説」としての露出回数も増えていくのが理想的だ。

でも、ここで大事なのは「指揮官」としての本田さん。

瞬く間にお茶の間スターになる本田さん、その最中で間違いなく巻き起こる待望論。

「日本代表監督を本田さんに」

「解説」という仕事受け、誰よりもサポーター目線でありつつ、「日本代表」「指揮官」としての手腕も大いに披露した。
これは「いずれ日本代表監督に」という野望の実現を、目前までに手繰り寄せた大きな一手なんですよね。

伸び代しかないですからね!

以上、本田さんの解説でした。

(もう松木氏は本田さんの解説をパクり始めてるなぁ。。)
※コスタリカ戦後記

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