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「かみかさ」第5話

いのりのお母さんは美容院で皆川ひかりさんに髪を切ってもらっていた。いつものように賑やかに話し、笑い声が響いた。
「娘が、今度、中学になるのよ。私がずっと髪を切ってるんだけど、そろそろ美容院に行って欲しいなと思って。
引っ込みじあんな子で、皆川さんなら、若い女子だし、いいんじゃないかなぁ。切ってやって。」

髪はパーソナルゾーンでプライベートな領域だ。
だからこそ綺麗にしておきたいともいえる。

いのりは、本当は女性美容師さんであろうと、髪は触られたくなかった。
しかしBeLu美容室の皆川さんだけには許すことにした。

初めての日は、もちろん緊張していたが、毎回緊張して黙っていた。皆川さんも、思春期の女の子に無理に話しかけなかった。

皆川が、オーナー店主の住川淳弥に話す。
「零宮様の娘さんも、担当させて頂くようになったのですが、本当に大人しい子で、何回かカットしても、毎回緊張していて少女のようです。」
「皆川さんなら、おおらかに見守ってあげれるよ。」

いのりは、部活でバスケもやるようになり活発になって成長していったが、美容院では大人しくしてた。明るくなっていくというのは、恥ずかしくて変わらず喋らなかった。


「いのりちゃん、大学生になったんだね。家から通えるとこで、よかったね。」
お母さんが大好きなイメージがずっとあった。
「バスケも続けるんだってね。」
「はい。」
母も変わらず皆川さんにカットしてもらっている。美容院にいる間ずっとお喋りしてる。ストレス発散の場所なのだ。
「カットは今までと同じ脇ラインにすればいい?」
「はい。」
バスケの時、ポニーテールにして、髪先がうなじまでくるベストな長さが脇ラインだった。
いのりは、そういうこだわりを持つくらい成長していた。

でも美容院での緊張は変わらず、ほとんど喋らなかった。

皆川さんは店長になっていた。


恥ずかしさを
見せれる人には
伝えられる


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ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?