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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会③)(無料試読あり)

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以下本文


 歪んだ視界が再び平行を取り戻した時、私たちは全く知らない場所に居た。周りは苔の生えた岩山で、まるで崖の下にいるようだった。今までいた場所に比べると肌寒い。周りを見回して、「怖い」と最初に思った。
 グルグルと辺りを見回して、さっきまでそばに居たヒトたちが居ない事実を再認識する。長老も、アヤカシのみんなも、ここには居ない。スオウとクロ君だけだ。短い期間だったけど、ちょっと前までみんなで過ごしていたお屋敷は、どこにも無かった。

「おじいちゃん・・・・・・みんな・・・・・・」

 声が無意識に出ていた。あの狐族の数は絶望的だ。いくら長老がすごいアヤカシだと言っても、あの数相手に敵いっこない。一気に恐怖が全身を駆け巡った。

「信じろ。じじいを、みんなを信じろ」

 スオウの大きな手が私の肩に置かれる。クロ君も私の服の裾をぎゅっと握った。
 信じる。根拠も無くただ都合の良い未来が来るのを待つことを、「信じる」と言うのだろうか。私はお母さんが居なくなってから、最初こそ「信じて」いたものの、そんな都合の良いようにはならないと悟ってから辞めた。自分が努力したことの結果だけが、私にとって信じられるモノになっていた。
 いつしか他人が無責任に言う、「信じろ」という言葉を心底嫌いになっていた。自分1人でどうにもできないことを信じて待つなんて、私には怖くてできなかったのだ。だから、なんでも1人でこなそうと努力した。怖いと思うこと、寂しいと思うことも見ない努力、忘れる努力をした。

「今、あんたにできることに集中する。それが信じるってことだ」

 スオウが私の頭の中を読んだかのように言葉を続けた。あぁそうか。それが信じるってことなんだ。自分にできることに集中する。みんなが言っていた、「ただ待つこと」が信じることではやはりなくて、私が今までして来たことが「信じる」ってことだったんだ。私は、本当はお母さんのことをずっと信じて頑張ってきていたんだ。
 それなら、私にもできる。長老たちを信じることができる。長老たちのことを一切心配せずに、今私にできること、私がしなくてはならないことに集中すればいい。まずは、お母さんの元に向かいながら修行の続きだ。まずは、識らなくては。

「そうだね、信じよう。ところで、お母さんの居る場所はどこ?」
「ここからまだ遠い。歩いてふた晩ってところか」
「そんなに遠くに⁉︎ なんでもっと近くにしなかったの・・・・・・」
「あんまり近すぎたら、万が一バレた時に大変なことになるだろうが」
「じゃあ、スオウの屋敷からここは結構近いの?」
「いや? 俺の屋敷は遥か遠くだな。クロ、どうだ?」

 さっきからクロ君が鼻を高く上げてスンスンと動かしていた。どうやら臭いを嗅いでいるらしい。子狸の姿のままのクロ君は、スオウに抱かれて心なしか嬉しそうだ。尻尾がふわふわと動いている。

「大丈夫そうです。ボクたち以外には誰も居なさそうですよ」
「すごい、臭いでわかるの?」
「クロは鼻がいいんだよ。変化へんげも得意だから偵察や探索、見張りに向いてるんだ。狐族もまだ来てねぇみてぇだし、ふた晩ありゃあんたもちったぁ修行ができるだろう」
「そ、そうだね」

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