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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会②)(無料試読あり)

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以下本文


「やはり来たか。飛んで来るとは、随分と勇んでおるのぉ」

 呑気に言うが、顔には厳しさが戻っている。

「避難はどれほど済んだんだい?」
「もうほとんどの者が移動しました! 残っているのは、三芳みよしの旦那をおそばでお守りするつもりの者だけです」
「なんてこった。ワシはそんなに老いぼれちゃいないんだがなぁ」
「クロ、お前も安全な場所に避難しろ」
「嫌です! ボクも師匠と一緒に居ます!」
「ならねぇ! お前はまだ怪我が治りきってねぇ。それに、もう十分お前はやったんだ」
「嫌です!! ボクは1度、師匠に命を助けてもらいました。師匠の為なら死ぬ覚悟はとっくにできています! 師匠がなんと言っても着いて行きます! それに、渚お姉ちゃんのことも!」
「クロ君・・・・・・」
「おうおう。泣かせる話じゃねぇか。アカノ、もうヘマすんじゃねぇぞ」
「っ! はい」

 みんなで屋敷の外に出ると、遠くの空に転々と黒い影が東西に伸びるように広がっている。あれ全部が狐族だと言うのか。だとしたら、あまりにも数が多すぎる。
 長老が着物の中から小さな鳥居を取り出した。私たちがここに来た時に使った鳥居と同じ形で、色は青に塗られている。その青い鳥居をスオウに渡す。

「アカノ、これを使って先にみおさんのとこに行ってろ」
「お爺ちゃんは!? 一緒に行かないの!?」
「お嬢ちゃん、誰かがここで足止めせにゃ、避難している奴らもすぐに見つかっちまう。時間稼ぎが必要なのさ」
「そんな! それならみんな一緒に」
「ワシを誰だと思っておる。千年生きている化け狸だぞ? そこらの若いもんがいくら束になろうが、ワシにはひと捻りだよ」
「でも! スオウ」

 スオウにもお爺ちゃんを説得してもらおうと声をかけると、顔を背けて絞り出すような声が返ってきた。

「じじいの言う通りにするんだ」

 スオウの顔が歪んでいる。スオウも葛藤しているのだ。もう、会えないかもしれないから。

「アカノ、澪さんのこと、そしてお嬢ちゃんのこと、頼んだぞ」
「わかってる」

 ギリギリと歯を食いしばりながら、スオウは青い鳥居を地面に置くと、私とクロ君の手を取って、赤い鳥居の時と同じ呪文を言った。私の視界には何かを言っているお爺ちゃんの姿が映ったが、なんと言っているのかは聞こえなかった。

「さて。お前さんたちも逃げた方がいいぞ。無駄死にしたくなけりゃあな」

 長老の後ろには50人ほどのアヤカシが構えていた。みな、それぞれに武器や防具を手にしている。守る為に、覚悟を決めている顔だ。

「やれやれ。ワシはたくさんの命を背負っちまって・・・・・・簡単には死ねんな」

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