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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(暗雲⑨)(無料試読あり)

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以下本文


 屋敷の中が騒然とする。慌ただしい雰囲気に泣き出す子、走る屈強そうなアヤカシ、早々に荷造りを済ませて屋敷を後にする家族。今、目前には混乱と恐怖に飲み込まれた群衆があった。この屋敷にこんなにたくさんのアヤカシが避難していたなんて。
 私も一応自分の荷物と何冊かの本を持って、クロ君が休んでいる部屋に戻っていた。スオウと長老は居ない。右往左往するアヤカシたちの対応に追われている。
 クロ君がここに帰って来てから、かなりの時間が経っている。狐族がここに来るのも、もう時間の問題だ。

「全部、ボクのせいです・・・・・・」

 死の淵から生還したクロ君が、また顔を真っ青にして震えている。

「ボクが言いつけを破ったから。ボクが勾玉を持ち帰ったから」
「クロ君は何も悪くないよ! クロ君が勾玉を命懸けで持ち帰ってくれたから、水篝火みずかがりび様のお仲間がどんな状況なのかがわかったんだよ。それに、クロ君が生きて戻って来てくれただけで十分だよ」
「でも!」
「お嬢ちゃんの言う通りだ」

 長老が戻って来た。どかっと座ると、漸く一服できるというように煙管を燻らせる。流石に少し疲れている。

「お嬢ちゃんの言う通り、クロは悪くない。まさかここまであいつらが周到だなんて、正直ワシも想像してなかった。流石狐というかなんというか」
「あの、お爺ちゃん。ホントに狐たちの罠なのかな? 考えすぎなんじゃ・・・・・・」
「いや、状況から見てまず間違いないだろう」
「そうなんだ・・・・・・いまいちよくわかってなくて・・・・・・」

 長老は煙を1回、フーッと吐ききる。

「クロが持ち帰った勾玉には、追跡系の術がかけられていたんだろう。正確には勾玉の中の水篝火様にな。術をかけていることがわからないように、封じ込めの術の中の水篝火様に追跡の術をかけて、二重にしたってことだ。もしかしたら誘惑の術か何かもかかっていたのかもしれん。つまり最初から目的はこの場所を割ることだったんだ。クロがすんなり拠点に入り込めたのも、招き入れられたってところか」
「でも、ホントにたまたま入り込めたってことは? だってクロ君殺されかけてるし・・・・・・」
「もし奴らが本気でクロを殺しにかかっていたなら、クロはあっという間にやられていただろうな。みすみす獲物を目の前で逃がすような玉じゃない。わざと死ぬギリギリまで追い詰めて、ここに戻るしかないようにしたんだ。場所がわかれば用無し。余計なことを喋らないように呪いもかけて」
「酷すぎる! もしそんな術がかかってたら、やっとの思いで持ち帰ったヒトはみんなから・・・・・・あっ」
「そうだ。最悪仲間割れが始まるだろう。実際、ワシらやクロに不信感を抱き始めた者も居る。みんな、命からがらここに逃げてきたし、大切な者を失ってしまった者も多い。奴らはそこまで織り込んでいたんだ。水篝火様は自分のせいでここがバレてしまうから許せと言い、クロには行くなと言ったんだ。最後まで術に逆らってくださっていたんだな」
「・・・・・・うん」

 もうチリすら残っていない、勾玉があった場所にみんなで目をやる。消えてしまった水篝火様の心の内は、きっと想像を絶するものだっただろう。

「散々っぱら暴れて見せて、急に大人しくなれば、アカノが誰かしらを忍び込ませると踏んでのことだろう。ここを潰せば、一気に攻め込めるからな。それにしても狐にしてはやり方がこすい・・・・・・」

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