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(小説5分読書)四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(こちらが四辻御堂です①)

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「え?」
 促されるままに首を曲げた。咄嗟にそちらを見てしまったというのが正しい。さっきまで、いや、いつもだったら空き地になっているはずの校門前に、奇妙な建物が建っている。
 暗闇に浮かぶシルエットの建物の壁は丸く、屋根は尖り、十字の鉄格子がはめ込まれたいくつかの窓が、ちぐはぐに並んでいる。気持ち斜めに建っている気もする。さっきまで何も無かったはずの空き地を埋め尽さんとするほどの大きさだ。高さは普通の家の2階建てくらいのようにも見える。入り口の大きな扉の前にはいくつかの階段があり、レトロなランプがぼんやりと照らす薄緑色のレンガの壁に掲げられた看板には、「四辻御堂」と書かれていた。
「ここ……ここ!四辻御堂ってここ!?」
「ようこそ、我が四辻御堂へ!」
 狸だか人間だかの男が得意そうに声を上げる。さっき私に近所迷惑になるとか言ってなかったか?
 奇妙な男が、これまたなんとも奇妙なオーラを放つこの建物を愛おしげに見つめている。正直、奇妙ではあるが恐ろしくはない。むしろ見ていると懐かしいような、安心するような気さえする。大人が駄菓子屋に行くとこんな気持ちになるのだろうか。駄菓子屋に行ったことは無いし、この辺に駄菓子屋なんて見たことも無いが。
「ささ、入りなせぇ」
 男がいつの間にか私の後ろに居て、私の肩にポンッと手を乗せる。まるで親しい間柄のように。建物に見入っていて気づかなかった。思わず睨みつける。
「おぉ怖い。あんたホントに蛇なんじゃ?」
 私の肩から離した手で自分の肩をすくめた男がおどけながら言う。氷に蛇に、散々な言われようだな、私は。
 入れと言われても、この奇妙な建物に、奇妙な男と2人きりでというのはどうも気が進まない。いくら母が夢で言っていた場所とは言え、こちらも身の安全は確保したい。
 ためらっていると、突然四辻御堂の扉がカランカランと音を立てた。
「師しょ…っとご店主、お戻りでしたか!それは……新しい人形ですか?」

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