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(小説5分読書)四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(こちらが四辻御堂です②)

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 建物の中に入ると、奇妙な感覚はますます強くなる。所狭しと置かれた美しい物や醜い物、骨董品のような物から古そうな本に至るまで、ありとあらゆる物から異様な空気が発せられているように感じる。
 本には、どこの国の言葉かわからない文字が書かれている物もある。多分、色々な国の品が放置されているのだろう。あちこちがホコリで白くなっている。掃除しないのだろうか。
 その中にきちんと綺麗にして置かれたアンティーク調のテーブルと椅子がなんともチグハグだ。こんなところでお茶会を希望するお姫様なんて居やしないだろうに。好みではあるけど。

「目移りするくらい珍しい物がたくさんでしょうが、あまりジロジロ見たり触ったりしない方がいい物もありやすよ。さ、こっちに来て座りなせぇ」

 にこやかに椅子を勧める男からのこれまた奇妙な言い方に不信感を募らせたが、後ろからティーセットをカチャカチャと言わせながら現れたクロ君の健気さが可愛くて、素直に椅子に座った。今すぐ抱きしめたい。
 クロ君が丁寧に紅茶を注いでいく。ハーブの良い香りが、建物の中の異様な空気を清めていくように広がった。

「……良い匂い」
「見たところ寝不足のようでやしたから、リラックス効果とお肌の調子を整えるハーブを調合してみやしたよ。何か悩み事ですかい?」
「今一番の悩みはあんただけどね。というかその喋り方やめてくれない?クロ君には普通に話してたじゃん。私にもそうして」
「え!?人間にはこの話し方で話すのがいいって親父から教わりやしたよ!」
「いやいやいや、いつの時代よ」
「江戸の頃でさぁ」
「え!?」

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