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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会⑤)(無料試読あり)

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以下本文


「嘘・・・・・・」

 それ以上言葉が出なかった。確かに、お婆ちゃんちでスオウとお婆ちゃんは気になる会話をしていた。でも、お婆ちゃんたちも私がどこにいるのかを知らなかったはずだ。それなのに、そんなにすぐに準備できるものなのだろうか。まるで、もっと前から知っていたみたいな周到さを感じる。
 手の中のこれは、自分が居た場所から無理矢理連れ出され、無理矢理他の霊と1つにされ、無理矢理憎しみの感情を植え付けられてコマとして使われていた。それは、人としてやっていいことなのだろうか。いくらこれが霊だとしても、もとは命あったモノ。それをこんな風に扱う人が居る。すごく、気持ち悪い。

「確証は無い。だが、宮路家の対応の早さは異様だった。クロが着いた時も」
「クロ君が着いた時?」
「はい。ボクが着いたのはまだ日が昇り始めた明朝でした。それなのに、皆さんもうお集まりで。それにボクが着いた時も、用を話した時も驚かなかったんです。ちょっと不思議に思ったので、手伝いをしながらそれとなく探ってみたら・・・・・・」
「探ってみたら?」
「昼食を作っている時に、藤田さんがこう言ったんです。『やっと条件が揃った』って」
「条件が、揃った?」
「そうだ。屋敷に着いた時にクロからその話を聞いて、疑いは確信に変わった。でも理由がよくわからねぇ」
「で、でも、この霊は私を襲ってきたんだよ? 見張らせるだけならそんなこと」
「憎しみってのは単純だって言ったろ? 一度憎んじまうと、それはどんどん大きくなって、最初の目的なんて忘れて暴走しちまうのさ。憎しみは新たな憎しみを呼ぶ。あんた、誰かによっぽど憎まれるようなことしたのか?」
「失礼ね! 他人に憎まれるようなことをする暇なんて、無かったよ!」
「ま、そうだよな。あんたは自分のことで精一杯だったわけで。でもな、他人はそうは思わねぇこともあるんだよ」
「え?」

 長老も言っていた。「人間の憎しみとは、時に目に見えない場所に巣食っている」と。私は知らず知らずのうちに、誰かに憎まれているということなのだろうか。力の無い霊の集合体が、襲ってくるほどに。
 うーんっと唸っていると、クロ君が心配してひょこりと膝の間から顔を出した。ふさふさの毛。黒い毛に所々赤毛が混じっている。頬の大きな傷の部分には毛が生えず、少しツヤツヤとしていて、3本あった尻尾は2本になっている。無くなった1本が生えていた場所は、周りの毛が伸びて目立たなくなっていた。クロ君をギュッと抱きしめる。

「く、苦しい・・・・・・」
「少しだけそうさせてやんな」

 四辻御堂よつじみどうでも、こんなやり取りがあった。2人の優しさに、締め上げられた心が解けていく。人型の影が私に触れた時、私の体に流れ込んできた冷たい感情は、憎しみの塊だったんだ。そして、あの、不気味に笑った影。あれも同じ物を私に向けていた。笑いながら、より純粋な憎しみを、私に投げ続けていた。
 それが誰なのか、わかってしまった。わかった瞬間、頭の中で弾かれたように音が鳴り、一瞬我を失った。次に湧いてきたのは怒りだった。「なんで、私があなたに憎まれなきゃいけないの。私が何をしたの」という気持ちでいっぱいになり、気づくと私は人型の影を黒い玉にしていた。一体、これはなんだろう。

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