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入居前にまさか

相方こと、これから一緒に住む冨士さんってどんな人間なんだろう。

冨士さんは人生において石橋を叩いて歩いている。
その歩みは慎重で、ゆっくりと着実に足場を固めていく。
踏み外すことがない、そんな人間であると思う。

以前1人暮らしをしたことがある冨士さんの存在は、1度も実家から離れたことがない私にとってとても心強い存在である。

ここにきてやっと一人称が定まってきた。
私は“私”としよう。
急に話が変わってすまない、話を戻そう。

冨士さんは仕事をしている。
職場からの距離を考えて、2人で住める家を探した。
やっと探し当てた家は2人ともとても気に入ったので話はトントン拍子に進んでいった。

しかしどこにでも壁はあるものである。
冨士さんが入院することになったのだ。

夜に散歩をしている時のことだった。
前からやってきた車を避けようと道の端に寄ったら、そのまま溝に落ちたのだ。
今回ばかりはどうやら道を踏み外してしまったらしい。

溝の深さは120cmほどあった。
利き手を脱臼し、また骨折まで伴い、なんとも不憫な出来事である。

病院にお見舞いに行き、今後の話をした。
完治まで時間がかかるので、私だけ先に入居することになった。

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