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後悔しないための決断の技術

人間は意思決定の連続です。日常の些細な意思決定から転職などの大きな意思決定まで、意思決定の積み重ねは人生の方向を決めていきます。
この記事では、IT開発手法のアジャイルの考え方を用いてより良い決断をする方法をご紹介します。

アジャイルとはITの開発方法のひとつです。アジャイルをシンプルに言うと、効率化が大好きな人たちによる「僕の考えた最強の生産性アップ方法」です。
僕はアジャイルを仕事で使っていましたが、アジャイルの考え方はITだけでなくすべての人々の日常生活においても有用だと考えるようになりました。

アジャイルでは世界中の効率化大好き人間たちが仕事の生産性を高めるためにはどうすればよいかを真剣に考え実践してきました。その中のテーマの一つが「意思決定」です。不確実性が高い世界でより良い決断はどうすれば下せるのかが考えられ理論化されています。
そのアジャイルの考え方の一つである「最終決断時点※」(※原文: Last Responsive Moment。訳は筆者訳)をご紹介し、日々の生活の中でどう活用するのかを解説します。


良い決断をする方法

決断することには様々なリスクがあります。それを理解するために、まずは以下のグラフを御覧ください。

横軸は決断のタイミングです。左であればあるほど決断が早く、右に行けば行くほど決断遅いということです。

青い線は決断するリスクを示しています。決断が早いほど、決断のリスクが高くなることが分かります。

決断が早いリスクとは
・決断が間違っている可能性がある。
・決断が間違っていた場合取り返すのに労力がかかる。もしくは取り返しがつかない可能性もある。

というものです。なぜなら決断が早い場合は情報や知識が少ないことから、決断が間違っている可能性が十分にありうるからです。
決断のタイミングが遅くなればなるほど、手持ちの情報が増え不確実性が減っていくことからリスクが低くなることがわかります。

つぎに、赤い線は決断が遅いことのリスクを示しています。
決断が遅いと
・機会損失
・手遅れの可能性
があります。
なぜなら決断が遅いと時間的余裕がなくなるからです。リカバリーがきかないということが起こり得ます。また、決断を遅らせている時間だけ機会損失が起こってしまいます。
決断が遅ければ遅いほどこれらのリスクが上昇することがわかります。

ここから言えることは、よい決断をするためには、なるべく多くの情報・知識をもち不確実性が低い状態かつ時間的猶予があるタイミングで行うのがベストということになります。このタイミングを「最終決断時点」と呼びます。

最終決断時点とはちょうど2つのリスクが交差するタイミングのことを指します。このタイミングは2つのリスクの合計が最小になるベストなタイミングということです。

時間が経てば立つほど情報・知識が増え不確実性が減っていきます。それにより良い決断ができるようになります。やらなきゃよかったという後悔というのは情報・知識不足からの意思決定のミスにより起こることが多いのです。
しかし決断が遅すぎると機会損失が生じ、もっと早くやればよかったと後悔するかもしれません。

ここから言えることを格言ぽくいうなら、「遅すぎなければ、決断は先延ばしにすればするほど良い。」ということです。

即断即決、というのは聞いたことがあるかもしれません。決断が早い人は仕事ができる人、というイメージもあるでしょう。
ですが不確実性が高い世界においては即断即決は無駄になるリスクが有るのも事実なのです。まずは決断は早いほど良いという常識を取っ払ってしまいましょう。

じゃあどうすればベストなタイミングを見定められるのか。様々な状況の意思決定があるなかで一般的な答えを出すのは難しいですが、僕の経験上、良い決断のタイミングは「機が熟した」と直感的に思うタイミングです。
具体的な行動指針にするならば「情報・知識を集めつつ、機が熟すのを待つ。」というものです。

よい決断の技術の実践例

この決断の指標を持っておけば、色々な意思決定が楽になります。以下例を見てましょう。

転職するべきか、今の会社にとどまるべきか

皆さん様々な状況にいるかと思いますが、決断は遅いほどよいの原則に立って考えてみましょう。
若いうち(新卒1年目とか)に会社をやめる場合、社会経験の短さもあり会社や業務の知識が少ないでしょう。ほか会社に転職をして初めて自分の会社の良さがわかり、やめなければよかった後悔する可能性があります。

しかし転職の決断を遅らせると以下のリスクが上昇していきます。
・年齢を理由に転職ができないリスク
・次の会社の経験を積めない機会損失
・年収が上がる場合の機会損失

もし転職したいという気持ちが出てきたなら、慌てず転職の情報を集め他会社や他業種の理解を深めておきましょう。また、やめたときにどういうリスクがあるかも調べておきましょう。そして、本当に転職するタイミングは「もうこの会社はやめても良い」という心の声が聞こえたときです。
仕事を辞めない限りは給料ももらえるし福利厚生を得ることができます。

僕は新卒の会社に約2年努めていましたが、辞めて独立したいという気持ちと辞める不安が葛藤していました。
それなりにスキルを増やしつつある程度自信がついたところで「辞めても大丈夫だな」と思い始めました。
それが「機が熟した」瞬間でした。
もしあなたが転職するか迷っているならば、本当に心の底から転職しようと思えるときが来るのを待ってみると良い思います。

家を買うべきかいなか

人生の一大イベントである、家を買うべきかいなか。僕の答えは、「必要でなければ買わない。手持ちの情報が出揃うまでギリギリまで待ちましょう。」です。

なぜなら手持ちの情報(家族構成は何人になりそうか。住宅の知識。仕事の行先etc)が多ければ多いほどより後悔が少ない住宅購入ができるからです。しかし、あまりにも家を買うことが遅すぎると、ローンの返済が遅れたり、理想の家に住めない機会損失があります。

もちろん勢いが大事という意見も分かります。しかし間違った選択をすると住宅ローンで苦しむ可能性もあります。持ち家は状況の変化に対応しづらいというデメリットがあります。状況の変化に対応するためにも決断は遅い方がよいのです。
本当に心から家がほしいと思うぎりぎりまで粘るほうが後悔がすくない決定ができると思います。

勉強するために学校や教室に通うべきか

社会人の方でも勉強熱心な方は多いです。そういう方はMBAの学校にいったり英会話教室にいったりしてスキルを磨いています。ただ、最終決断時点の原則にたつと、勉強の開始はギリギリまで粘ったほうが良いでしょう。

僕も新卒の頃、これからは英語、IT、会計だ!とかAIの時代だ!とか言われていて、その言葉を鵜呑みに会計やPythonで機械学習モデルを作ったりAIの勉強をしたりしました。でも結局仕事でもつかわなかったので今はなんにも覚えていません。完全な無駄だったとは言いませんが、勉強する決断が早すぎました。

それからは必要なときに必要なだけ勉強するという方針にしたのですが、それでほとんどのことを乗り越えられることに気づきました。もしなにか勉強する際は自分が必要になったときに勉強を開始したほうが効率が良いと考えられます。(もちろん英語などは習得に長い年月がかかるので開始は早いほうが有利なのは間違いないですが。)

まとめ

もしなにか決断を迫られ迷っていても、焦る必要はありません。最終決断時点を思い出し、日々情報収集して知識を深めておき、機が熟すまでギリギリまで決断するのを粘ってみてください。
機が熟すのはあなたの心の声が教えてくれます。

この他にもアジャイルには有用な考え方が多くあります。もし興味を持った方はぜひ調べてみてください。

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