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台風・ハリケーンの名前

今年(2018年)は、日本各地で自然災害が沢山おきましたね。犠牲になられた方々に哀悼の意を述べると共にご冥福をお祈りします。

今年9月4日に日本に上陸した台風21号のニュースは、アメリカでも大々的にとりあげられていました。関西で電車を止めたこと、台風が関西空港を直撃し、空港に沢山の人が取り残されたこと、タンカーが空港にぶつかったことなど、生々しい映像と共に、テレビで放映されていました。

アメリカ人の友達も心配になったらしく、「台風ジェビー(Jebi)が日本を襲ったそうだけれど、ご家族は大丈夫?」と私に聞いてきました。

「ジェビー?」はあ?伊勢湾台風など猛威を振るった台風に後から名前を付けた例は知っていますけれど、日本は台風は1号、2号という数字でしか聞いたことはないのですが・・・。

日本の気象庁のホームページによると、台風の名前の付け方は、以下の通りだそうです。
「毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、以後台風の発生順に番号をつけています。」ただし、「北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本含む14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から、北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には同領域内で用いられている固有の名前(加盟国などが提案した名前)を付けることになりました。」
(参考文献:「台風の番号の付け方と命名の方法」国土交通省・気象庁:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html )

Jebiという名前もこの委員会によってつけられた名前だそうです。ただ、日本のニュースや新聞では、この委員会がつけた名前をほとんど見かけないような気がします。

アメリカでは、台風・ハリケーンに名前がついています。名前をつけたほうが一般の人に簡単に覚えてもらえるから、という理由のようです。約2百年前に、西インド洋で発生したハリケーンは、キリスト教の聖人の名前がつけられていました。1825年7月26日にプエルトリコを襲ったハリケーンは、聖アンナ(Santa Ana)、1876年と1928年の9月13日のハリケーンは共に聖フェリぺ(San Felipe)という名前です。

19世紀の終わり頃には、オーストラリアの気象学者が台風に女性名をつけ始めました。そして、第二次世界大戦中には、米国の軍隊はハリケーンに女性名を使い始めました。(参考文献:”Tropical Cyclone Naming History and Retired Names” by National Hurricane Center, Miami, FL : https://www.nhc.noaa.gov/aboutnames_history.shtml
 
1953年に、米国では、正式に女性の名前を国際音声記号 (International Phonetic Alphabet)順に台風・ハリケーンに命名することになりました。A、B、C順にAlice, Barbara, Carol, Dolly, Ednaと続きました。(参考文献:”1953 Atlantic Hurricane Season by Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/1953_Atlantic_hurricane_season

しかし、嫌われる台風・ハリケーンに女性の名前だけつけるのはおかしい、という批判がでてきたこともあり、1979年からは男性・女性の名前を交互につけることになりました。 (参考文献:”Tropical Cyclone Naming History and Retired Names” by National Hurricane Center, Miami, FL : https://www.nhc.noaa.gov/aboutnames_history.shtml

アメリカでは、台風・ハリケーンの名前だけではなく、あらゆる場面において差別をなくそう、という努力がなされてきました。アファーマティブ・アクション(積極的是正政策)の話は前にもさせていただきましたが、言葉の上でも差別をなくそう、という動きがあります。

日本で私が英語を習った70年代から80年代には、Businessman、 Policemanなどは「man(男)」となっていても男性も女性もあらわす、と勉強した覚えがありますが、1990年代にアメリカに来て最初に入ったESLのクラスでは徹底して「男女差別をなくすために、言葉も変えていこう」という方針がとられていました。

具体的には、
Policemanではなく、Police Officer
Chairmanではなく、Chair, Chairperson, Coordinator, Head
Firemanではなく、Fire Fighter
Heではなく、She/He, She or he, S/he, They
(参考文献:”Gender-Inclusive Language, by Writing Center, University of North Carolina at Chapel Hill: https://writingcenter.unc.edu/tips-and-tools/gender-inclusive-language/ )

アメリカの社会は、こういった些細な事柄でも、常に平等を目指しているのです。

The Stellar Journal 2018年10月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/hurricanenames/?fbclid=IwY2xjawFASkhleHRuA2FlbQIxMAABHd8KpBEpKSp-YcoUIp2Af8roDt7czr27zLpKeCwbq3I57Om-jb3Ml1igyw_aem_oO8evjkvbwuNUuTqBw9SiA

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