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withコロナで急速に進化するバーチャルコンサート/フェスティバルとメタバース

新型コロナウィルスの感染拡大、そしてそれを防止するためのライブ、リリースの中止/延期により、エンタテインメント業界には苦しい状況が続いています。こうした中で改めて音楽の素晴らしさ、ライブの貴重さが再認識されています。
今回書く内容は、世界的に中止/延期を余儀なくされているコンサート、フェスティバルの代わりに進化し盛り上がりを見せている領域についてですが、会場や野外で”ハレ”として楽しむ音楽、エンタテインメントの価値は改めて唯一無二であると気付かされました。

並行してバーチャルコンサート/フェスティバルはまた違った価値を提供し、今後コロナ禍が収まっても、テクノロジーをベースにした現代の環境で”新たな”エンタテインメントとして定着するのではないか、と考えています。

こんな事書いています:
- バーチャル・コンサート/フェスティバル
- メタバース・コンサート/フェスティバル
- ライブ配信?バーチャル・コンサート?メタバース?
- バーチャル・コンサート/フェスティバルが定着、拡大するには
- バーチャルの良さ

レディーガガによる「One World: Together At Home」

レディーガガがホストした「One World: Together at Home」全米TV視聴者数2070万人超、寄付金137億円超える via VOIVE 心に響く洋楽
https://www.voiceyougaku.com/one-world-together-at-home-concert/

4/19に開催されたこちらは、彼女の呼びかけで集まった、アーティスト、番組ホスト、テレビネットワーク、世界中のデジタルTV、ストリーミングサービスがサポートし、まさに”世界が一つ”になったバーチャル・コンサートでした。
有名アーティストがライブをする自宅の映像から、人となりや家族との繋がり、そして社会課題に対する情熱を感じられました。
自宅から多くのアーティストが参加するフォーマットをいち早く実行したのが、(私が見た限りでは)アメリカのデジタルラジオ、iHeartによる「FOX Presents iHeart Living Room Concert for America」でした。

「FOX Presents The iHeart Living Room Concert for America」

3月29日に開催されたこちらは感染が急拡大し逼迫する医療現場、関係者を応援する企画として、エルトン・ジョンがホストして開催されたチャリティーのためのバーチャル・コンサートでした。
出演しているアーティストや演出は、後のTogether At Homeを先取りしていて、間に入る医療関係者を応援するビデオも感動する作りでした。

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そしてダンスミュージック界も様々な取り組み、演出を進化させています。

「ReConnect」

3/27に開催されたTwitch x Beatport x AFEM(エレクトロニック音楽協会)による「ReConnect」は有名DJが出演するバーチャルフェスティバルです。
DJをする画面にはリアルタイムで、寄付プラットフォーム「Tiltily.com」で寄付したユーザー名、金額、そして累計額が表示されています。並行してTwitchでも投げ銭が行われており、常に更新されるコメントや金額を通じて”一体感”が生まれていました。

Diplo World Tour

Diploはその名も「CORONA WORLD TOUR」と題して、毎週木〜日のよるバーチャルDJを行っています。曜日ごとにセットリストや背景、ダンサーのセッティングが変化して、毎回見ても飽きません。DiploとMad Decentクルーは人を楽しませるのが本当に好きなんだなと感動します。
https://www.youtube.com/diplo

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マーク・ロンソン:Love Lockdown: Video Mixtape

マーク・ロンソンによる「Love Lockdown: Video Mixtape」はこうした流れを受けた決定版的バーチャル・フェスティバルでした。日本から星野源、その他世界中のアーティストが自宅からライブ、DJプレイを披露しました。
演出としてTikTok的なARフィルタが活用されていて、アーティストの動きに合わせてグラフィックが変化したり、顔認識でグラフィックが顔にオーバーレイするなどで観ていて飽きません。また”Video Mixtape”の名の通り、ライブパフォーマンスなどの映像が音楽と共にノンストップに繋がったりミックスされていきます。

もちろん、日本でも制約があるからこそ、画期的なアプローチを採り進化したコンサート/フェスティバルが多数出てきています。

cero x ZAIKOの有料ライブストリーミング

ceroは自らの公演を延期にし、チケットプラットフォーム「ZAIKO」が新たに開発した電子チケット販売ができるストリーミングプラットフォームを使い、有料ストリーミングライブ配信を行いました。
詳しい内容はこちらの記事に詳しいですが、”有料でライブ配信”は日本が海外に先行している取り組みです。別記事を書く予定ですが、イープラス、ぴあなど、大手チケット企業が有料ストリーミングサービスを立ち上げるのは、大幅なリストラを行っているグローバル大手チケット企業のチケットマスターとは対照的です。

BLOCK.FESTIVAL

☆Taku Takahashiが中心になり立ち上げたBLOCK.FESTIVALは、LINE LIVEを活用した大規模なバーチャル・フェスティバルとして大成功しました。
通常の投げ銭だけでは無く、Tシャツ購入を応援アイテムとしてサポートでき、バーチャルとリアルを連結した取り組みが素晴らしいです。またビデオ通話ソフト「Zoom」を活用したバーチャルダンスフロアも、今までに無いリアルな一体感を出していました。
4/18に開催されたVol.0に続き、5/4の前夜祭、5/5にVol.1が開催されます。

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366VILLAGE

クリエイティブプロダクション「Moment Tokyo」とライフスタイルレーベル“Chilly Source”、株式会社Spincoasterが開催した「366 VILLAGE」は、ライブ、DJに加えて食、占い、トーク、チルアウトスペースがバーチャルに楽しめる、まさに最新のライフスタイルフェスがデジタル空間内に実現されたバーチャル・フェスティバルでした。

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バーチャル・フェスティバルを楽しみながら、Uber Eatsでライブ会場のSpincoaster Music Barによるカレーライス、クラフトビールなどを自宅にデリバリーする事もできました。
またアーティスト、スタッフ他をサポートするための投げ銭の方法も、PayPal、Amazonギフトカードといった還元率が高い(手取りが多い)手法を採用していて、現実的なアプローチでした。この記事にライブ配信のノウハウ含めて、Spincoaster自らシェアをしてくれています。

メタバース・コンサート

昨年書いたこちらのnoteで既に提示していた「マルチバース」は、複数のメタバース(仮想空間)内でのエンタテインメントが5Gの普及とともに盛り上がりを見せる、という見方でしたが今回のコロナ禍でメタバース内でのエンタテインメントが増加しました。

トラヴィス・スコット x フォートナイト

"5G時代のエンタテインメント”で取り上げたマシュメロ x フォートナイトは世界中で話題になった事に加え、ゲーム空間内でのエンタテインメントという新たな地平を切り開き、1000万人が参加した、という数字も含めてインパクトがありました。
そしてマシュメロに続いてフォートナイトと組んだのがトラヴィス・スコットでした。この記事内にもあるように、4回の”公演”で2700万人を集め、新曲の発表を兼ねたメタバース・コンサートの演出もぶっ飛んだイマジネーションとクオリティで、世界中を熱狂させました。

マッシブ・アタック x マインクラフト(中止)

メタバースの双璧を成す「マインクラフト」の自サーバー機能を活用して、Courier Clubは、SXSWをもじって「Block By Blockwest: A Minecraft Music Festival」を4/25に開催予定でした。というのもサーバー負荷が高すぎて急遽中止、ラインアップを変更して5/16に延期になりました。
チュートリアル動画を見ると、メタバース内にステージ、ギャラリー、バー、そしてゲーム等がある、長時間楽しめる作りになっています。
延期後のラインアップにはマッシブ・アタックはありませんが、”??????”というアクトがあるので、もしや?と期待していまいます

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ライブ配信?バーチャル・コンサート?メタバース?

今回こうしたエンタテインメントを追っている中で、英語メディアはこれらのデジタルプラットフォーム内でのコンサート/フェスティバルを”バーチャル”と呼んでいます。

日本ではVR=バーチャル・リアリティ、VTuberのイメージが強いので、バーチャルと聞くと後半のフォートナイト、マインクラフトといったCGを使った空間内エンタテインメントを想起しますが、遠隔によるパフォーマンスや、ネットワークを通じて提供されるものもバーチャルと呼んで行くことが、”ニューノーマル”=新常識となるのかも知れません。

バーチャル・コンサート/フェスティバルが定着、拡大するには

この異常事態がいつまで続くのか?終わった後、どの位で以前の日常に戻るのか?それとも一部は戻り、一部はもう戻らないかも知れない、、、と日々考えさせられますが、エンタテインメント、特に音楽は常にテクノロジーによる大きな変化に晒されつつ、新しい表現、アーティスト、ビジネスを開拓することで文化を作ってきました。
ライブエンタテインメントを中心とした、感染拡大防止に協力したことでビジネスと生活の困難に直面されている方々には補償、救済がされる事を望みます。そして新たなバーチャル・エンタテインメントに進出するアーティスト、クリエイター、スタッフが増えていって欲しいと期待しています。

一方で「これからのライブエンタテインメントはバーチャルが主流になる」といった話もされたりしますが、それは無く、どちらかが主流になるというよりは並行して成長していくと考えます。冒頭に書いたようにリアルな場でのライブエンタテインメントの価値は唯一無二だからです。

1. 大音量を出して没入する
2. 限られた時間、一人だけまた友人との時間に集中できる
3. クオリティが下がったり、接続が切断されない
4. 人が多く集まっている事が実感できる
5. 大きな声が出せる

これらは自宅ではなかなかできない事です。
自宅でバーチャル・コンサートを長時間楽しむのは、少し難易度が高いと言えます。

またビジネス面でも浸透、進化していなければならないのが

1. 有料で楽しんでもらえるのか?金額はどこまで受容されるのか
2. プラットフォームを通じてクオリティは担保できるか
3. 手数料等の必要経費は適正化できるか
4. 著作権、著作隣接権の処理が適正、かつ簡便にできるか
5. 新しい表現手法の受容、ノウハウの構築

1-5を実現してアーティスト、クリエイター、スタッフにとってインクリメンタルな売上になるか、これまでに成長してきた新フォーマット、最近ではストリーミングですが、これら全てを実現できるようにエンタメ側とテクノロジー側が、手に手をとって、時には激しい交渉をしながら解消、改善することで産業レベルまで成長してきました。

DJ配信についてもこんな視点もあります。私はこれの解決法には違った考えがありますが、権利の在り方を問題提議として素晴らしい記事です。

バーチャルの良さ

当然バーチャルの良さもあります。
それは空間を超える事です。世界中のファンがデジタルを通じてライブエンタテインメントを楽しむ事ができるので、今届けたい表現をタイムリーに届けてファンになってもらい、これまた世界中に拡がっている音楽ストリーミングサービスでマネタイズしたり、ShopifyのようなECプラットフォームでグッズを販売する事に繋げられます。
また、V LIVEのようなアプリを使えばアプリ課金を使ってコンテンツを販売する事も可能です。
これはスマートフォンの世界的な普及で、バーチャルに手軽にアクセスできる事が当たり前になった環境でエンタテインメントを届けられる事を意味します。

今は”致し方なく”バーチャル・コンサートをやっているアーティストも、アクセスや売上の結果や得られたデータを分析すれば、可能性を見出すことに繋がると考えます。
もし、困ったり迷っているアーティストやスタッフがいたらご気軽に相談してください。

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