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SistertalkとTenderhost

Sistertalk


思い返すのはそう、Sistertalkのこと。

今から4年前の2018年の2月、フレッドペリーのサイトに掲載されていたライヴ映像を見た。それはまるでSF世界の未来のクラブで演奏するジャズバンド、あるいは月で起こったロックバンドのムーヴメントのようで、知的で熱く、暴力的でスリリングで、ゾクゾクとした快感なのか不安なのかわからない感情が心の内側からジワジワとせり上がってくるようなもので、格好良くてたまらなかった。当時はShameが1stアルバムSongs Of Praiseをリリースしたすぐ後で、ビデオを見た二日後にGoat Girlのデビューアルバムが4月に出るというアナウンスがあったそんな時期。ノースロンドンのバンド Sistertalkに僕は未来を夢見てた。


Sistertalkはその後1年、曲を出さず沈黙し、2019年の2月9日にデビューシングルVitriolを発表。そして半年後、7月22日にVitriol一曲だけを残して解散した。


瞬く間に、なぜみな解散してしまうのか? あっという間だからこそ良いイメージだけが残って心を捉えたまま忘れられないなのか? アルバムとは言わないけれどせめてライヴでやっていた曲をリリースして欲しかった。タイトルすらわからないのにそれをずっと追い求めてしまうから。久しぶりにSistertalkを聞いてなんだかやたらと感傷的な気分になった。


Tenderhost


音楽は続ける。だからすぐに戻って来る。形を変えて、別のバンドで。解散のコメントに寄せてそんな言葉が書かれていたバンドがある。Dead Prettiesの3人はWunderhorse、Oscar Browneとそれぞれのソロ、あるいはFEETの新しいドラマーとして帰ってきた。NormanだってBing Furyとして。だからずっと待っていた。

そう、帰って来たのだ。Sistertalkも。レヴィ兄弟の兄(おそらく)、ガブリエル・レヴィの、新しいバンドの名前はTenderhost、曲の名前はThe Descent。それが2022年の2月に出た(それはいつも2月に起こる)。

Tenderhost - The Descent (Official Audio)

ゾクゾクするようなSistertalkの攻撃性が抑えられ、ゆっくりと、それがまだそこにあるということを確かめるようにして進んでいく。ジャズの煙を吹かせ、静かに不安を煽り続けるように(上っているのに下っていく階段のビデオもそうだ。どこにもたどり着けず同じ事を繰り返す)。あぁやっぱりゾクゾクする。

正直、尖りまくっていたSistertalkの続きが見たかったって思いもあるけれど、ひんやりとした感触のこの曲もめちゃくちゃ格好いい。古めかしいフィルム・ノワールの映画のサウンドトラックのように、何かが起きるという予感と焦燥感がずっと続いていく。

Tenderhost - My House (Official Audio)


そして2曲目、My House。もっと優しく、静かで穏やか。夜明けを待つブルーのイメージが広がって……。

4月29日にThe Tinってタイトルの4曲入りのEPが出るみたいだけど本当に楽しみ。今度こそ何か形に残るものを手に入れたい。

SistertalkとTenderhost、名前の付け方も共通のものがあるような気がして、そういう部分にもなにか懐かしさを感じてしまう。面影を重ねてしまうのは、それが失われてしまったということを認められないからなのかもしれない。あるいは新たな始まりを期待して? 違いがわかるのはきっとこれから。だから今は4月を待つ。




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