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2023年10月の本棚

10月に読んだマンガをまとめました。



【完】東京ヒゴロ 3 / 松本大洋(小学館)

雨降る夜道を歩いてきた男に訪れる夜明けの時。創作にかかわる人たちの苦悩や葛藤、そして並々ならぬ情熱と愛が「漫画」という名の結晶となる。

この世に無数に存在する漫画一冊一冊を、死に物狂いで創っている人たちがいる。塩澤さんもその中の一人で。2巻の表紙の「リンゴ」も良かったけど、この最終巻の「傘」も本当に妙。立てられたいくつもの傘の中に塩澤さんのものがある。それが嬉しい。

作品の根底に何層にも重なった感情がページを捲るたびに伝わってきて本当に良かった。あまりにも良くてマイベスト松本大洋を更新した気さえする。1巻から改めて読み直そう。


【新・完】環と周 / よしながふみ(集英社)

現代、明治、70年代頃、戦後、江戸、様々な時代に存在する”たまき”と”あまね”という名前の二人の人物。時代によってその年齢や性別、関係性は異なるが、何度も何度も巡り合う。いろいろな時代の環と周の話

オムニバス形式で紡がれる輪廻転生譚。出会いと別れを繰り返し、やっと”また会った”二人。人と人が出会うことの尊さを、沁み渡るような読後感でもって味わわせてもらいました。素晴らしかった…


【新・完】縁もたけなわ / 岡畑まこ(祥伝社)

幼い頃からずっと一緒だった徹大と知里。高校卒業後はそれぞれの道を歩いていたが、お互いの存在がなんとなく支えでもあった。そんな歪な関係を終らせる日がついにきた。腐れ縁に頼るのは今日で最後だと、互いの背中を押して送り出す──。好きも嫌いも、憧れも劣等感もある、2人だけの複雑な関係を描いた連作短編集。

『園宮さんの婿事情』の岡畑まこ先生が季刊誌にて連載されていた短編。たまたま祥伝社編集部の告知noteで存在を知り即買いしました。単話版の扉絵も良い感じですね…

幼馴染であり、友人であり、兄妹のようで、姉弟のようで、ライバルのようで、戦友のような、徹大と知里。いつも近くにいて、お互いに相手の方を向いてはいたけど、交わりはしなかった。そんな「名前のない二人だけの関係」が繊細に描かれています。現実の幼馴染の男女って多分こんな感じなのではなかろうか(幻想)


いやはや熱海くん2 / 田沼朝(KADOKAWA)

個人的2023年イチオシ作品待望の2巻。文化祭の準備をしたり、文化祭に行ったり、いつものように足立さん家で和んだり、熱海くんたちの日常は、ままならないまま地に足つけて続いてゆく。

人間って、本当に一人一人全く違ったことを考え、全く違う動きをし、相手を好きになったり嫌いになったりする。そういう根源的なヒトの在り方みたいなものが淡々と描かれていて大好きです。人間って、おもしろ!!

「CREA夜ふかしマンガ大賞2023」受賞もおめでとうございます。


【新・完】ヘレナとオオカミさん 上・下 / 布里斯ブリス(KADOKAWA)

孤児院で暮らす少女・ヘレナは絵本を読むのも描くのも大好き。ある日、一番好きな絵本作家「悪いオオカミさん」のサイン会に行けることに。期待に胸を膨らませるヘレナだが、悪いオオカミさんはスランプの真っ只中にいた…。絵本を通じて出会ったふたりは、お互いに影響し合いながら、新たな一歩を踏み出そうともがく。痛みを抱えた少女と大人。歳の差を超えた、感動物語。

今月読んだ台湾マンガその1。世界の残酷さに打ちのめされながらも「創作」に希望の光を見出す少女とおじさんの物語。”物語を必要とする人間”の存在が、物語を通して読者である自分に勇気をくれる。

それはそうと、台湾漫画は可愛い絵柄で壮絶な人生描かれがちな気がする。そんなたくさん読んできたわけではないけど。


アオのハコ 12 / 三浦糀(集英社)

年末年始。お互いに会えない時間が相手への想いをより一層募らせる。離れてみて改めて自覚する自分自身の気持ちに二人は。

シチュエーションこそドラマチックだったけど、言葉の交わし方自体は良い意味で淡白で、それがむしろ良かった。飾らない大喜と千夏先輩が素敵です。にしてもこれからどうなっちゃうの…?この二人、毎日同じ家に帰るんやで…

そこにいなくても
千夏先輩のことを考えてしまう
その人の気配に 嬉しくなる
俺は今
そういう恋をしている

猪股大喜/『アオのハコ』12巻 p.25


【新】スーパースターを唄って。 1 / 薄場圭(小学館)

大路雪人。17歳、売人。覚醒剤中毒の母親と最愛の姉を亡くした彼には、唯一信じられる、信じてくれる親友・メイジがいた。メイジに導かれ、ヒップホップの世界に足を踏み入れる雪人。少年の押し殺し続けてきた心の声が、リリックとなり溢れ出す。

絵柄は可愛い(シンプソンズみたいな顔の店長が出てきたりする)反面、内容は浪速のウシジマくんみたいで痛々しい部分もあり。それでもズンと胸に響く熱い作品でした。ラッパー用語を少し勉強しよう。


来世は他人がいい 8 / 小西明日翔(講談社)

あざみとの交戦で負傷した霧島を残し、一時撤退する吉乃。そして描かれる霧島の過去。幼少期から並外れた戦闘力と狂った被虐欲求を持ち、人生に達観していた霧島少年の人生は、染井吉乃という光に出会ったことで180°変わる。

霧島が死なない限り吉乃は絶対に死なないし、吉乃が死なない限り霧島も絶対に死なない。この絶対的な関係性の上で物語が進むので、イカれた安心感があります。

アニメ化もめでたい!記念PVの豪華声優陣は少し声色が大人すぎる気はする。


【新】路傍のフジイ 1 / 鍋倉夫(小学館)

『リボーンの騎士』の鍋倉夫先生の新作。40歳を過ぎた非正規社員、交友関係も希薄で、一見何が楽しくて生きているのか分からない男・藤井さん。そんな道端に転がる石のような男の自然体な生き様とは。

「おひとりさま」だとか「孤独を愛する」だとか、そんな悠々自適で高尚なものではなく、ただありのままの自分を受け止め、自分基準の幸せを自覚して、自分で自分を喜ばす。人生を楽しむ秘訣の一つかもしれません。

世界にネタバレを感じた後でも、自分で自分の心を躍らせる。フジイの足腰強いぜ!

帯コメント/「オモコロ」編集長・原宿

良すぎッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

帯コメント/「オモコロ」編集部・永田

オモコロの二人が帯コメントで出てきてて笑いました。


鬱ごはん 5 / 施川ユウキ(秋田書店)

この作品の好きなところは主人公・鬱野の思考や行動が全て自己完結していて、行き止まりであるというところ。時事的な変化はあるものの、食を通じて誰とも繋がらないしどこにも行かない。行こうとしない。

人間は一人で考え、一人で行動し、その結果が全て自分一人だけのものとして残り、終わる。それだけが満足感なんだよな。

人生とは BETするものだ
必ずしなければならないし 誰も降りられない

目を背けていると ある日突然気づかされる
自分が全力で「BETしない」に BETしていたことに
そして結果は とっくに出ているのだ

だから僕は「うまうま唐揚げ丼」を食べる

鬱野/『鬱ごはん』5巻 p.93-94


【新】あくたの死に際 1 / 竹屋まり子(小学館)

仕事も恋も、それなりに順調な社会人・黒田。平穏な日々の中で、小さな心への蓄積によって病んでしまった彼は、学生時代の文芸部の後輩・黄泉野と再会し、再び筆を執ることになる。文学界の片隅で、もがく男の物語

主人公・黒田は(1巻時点では)後ろ向きに前向きなキャラクターで、世間体とかを気にするくせに本当は書きたくて仕方がない、みたいな人間。そんな黒田に厳しい言葉を浴びせながらも、誰よりもその実力を評価している後輩の黄泉野。この関係性、大好きです。


【新・完】龍行旅 / AKRUあくる(KADOKAWA)

神秘が息づく世界。辻芸人をしながら龍を探して旅をする龍族の兄・朔と盲目の弟の満月がいた。行く先々で妖怪が巻き起こす怪奇現象や事件を超常の力で解決しながら人々の心に平穏をもたらしていく兄弟の旅物語。

今月読んだ台湾マンガその2。個人誌で発表してきた作品を青騎士が掲載・単行本としてまとめたもの。美しい線で描かれる神秘的な世界観、素敵でした。


【新】ちがう宮原おまえじゃない! 1 / 帯屋ミドリ・藤高つむり(集英社)

同じクラスの憧れ女子・雪比良さんと仲良くなるべく奮闘する男子中学生・有馬の前にいつもタイミングよく現れるのは、幼なじみの宮原。三角関係未満の「違う、そうじゃない」な幼なじみラブコメ。

『今日から始める幼なじみ』の帯屋先生が原作の新な幼なじみ漫画。幼なじみほんと好きだなこの人。幼なじみのくせに苗字で呼び合う有馬と宮原に少し違和感を覚えながらも、これもまた一つの幼なじみの形。藤高先生の絵も可愛くてグッドです。


【新】この世は戦う価値がある 1 / こだまはつみ(小学館)

「人の役に立ちたい」一心で生きてきた主人公・伊藤紀理は、職場でのパワハラやセクハラ、モラハラ彼氏の言動によって身も心もボロボロになっていた。そんな彼女が全てを投げ出す覚悟を手にした時、搾取される人生は終わり、自分を取り戻す物語リベンジが始まる

虐げられてきた女性が吹っ切れて人生を清算していく系の作品。紀理がとあるキッカケで人が変わったようにリベンジャーになるんだけど、そのキッカケがどうも弱くてちょっと「?」って感じだった。ただ単に、生来の傍若無人ぶりを取り戻しただけなんだろうけど、え?それでここまで覚悟決まる!?と、思った少し。


【新】J⇔M ジェイエム 1 / 大武政夫(KADOKAWA)

殺し屋と小学生の入れ替わりギャグコメディー。裏社会で怖れられる殺し屋・純一(J)と孤独な小学生の恵(M)は、お決まりの頭ゴッツンコで中身が入れ替わってしまう。

小学生生活を送りながら殺し屋稼業をこなすJと引き籠りおじさんと化したM。二人の運命や如何に…(J側がハードすぎる)

大武政夫先生の代表作『ヒナまつり』からほとんど何も変わっていない、安心と信頼のギャグ感。『ヒナまつり』はどんどん頭おかしくなっていった(褒めてる)けど、今作もどんどんハジけていくのかな。

漫画誌『ハルタ』のウェブ版『ハルタオルタ』で連載中。こういうウェブ媒体立ち上げの流れは今後も加速していきそうです。


【新・完】異世界発 東京行き / 大武政夫(KADOKAWA)

『東京発 異世界行き』以来9年ぶりとなる大武政夫短編集。異世界に消えて行った暴走特急列車がまさか折り返して帰って来る日がこようとは。

【俺たちの非日常はこれからだ!】はもう少し長編作品として読んでみたくなるくらい面白かった。あとは過去のハルタ付録『ハクメイとミコチ』の小冊子に寄稿された【世紀末だよ!ハクメイとミコチ】まで収録されていて椅子から転げ落ちた。よく見ると表紙にハクメイとミコチがちゃんといます。


【完】君は放課後インソムニア 14 / オジロマコト(小学館)

イサキの入院・手術に日和ってしまうガンタ。それでも手術は成功し、受験や卒業式も乗り越えて未来へと続いていく。

眠れない夜を過ごす中で出会った二人の青春ストーリー、完結。最後は少し含みを持たせた締め方でちょっと肩透かしを食らった感はあるけど、それもまた良きです。


【完】サバキスタン 3 / ビタリーテルレツキー・カティア・鈴木佑也

サバキスタン共和国・ドゥルジヌイ市・地方民事裁判所第1387法廷。被告人席には過去に対する侮辱の罪で起訴されたある老犬。検察側と判事は一方的に被告人を有罪の方向で審議を進め、弁護人との激しい攻防が続いていた。しかし審理期間中のある日、ある歴史的人物の突然の死を境に、裁判の様相は一変する。果たして老女の犯した罪とは何か。そして判決は──。一つの判決が、過去を裁き、未来を決定する!血塗られた負の歴史を背負いながら、自由と真実の勝利を信じて闘う勇敢なるサバーカたちの物語、ここに堂々完結!

迷える大国ロシアから届いたアンチ独裁グラフィックノベル、完結。

正直ちょっと難解な部分もあったけどそこも含めて良い体験でした。3巻ともサイン本を入手できてハッピー。


【完】うみそらかぜに花 4 / 大石まさる(少年画報社)

まさかまさかのカナメとアミの駆け落ちエンド(????)。いやいや流石にちょっと投げやりすぎて呆然としてしまった。どうとでも終わらせられそうな話だっただけに。

まぁ「これもまた青春」ということで一つ、ってことにしておきましょう。


【完】落ちこぼれ召喚士と透明なぼく 3 / 漆原雪人・藤近小梅(ブシロードクリエイティブ)

2巻から、なんなら1巻から怪しかったけどほとんどまとまらないまま何がしたかったのかよく分からず終わってしまった…。作画買いだとこういうこともたまにある。


セシルの女王 5 / こざき亜衣(小学館)

ヘンリー8世4番目の王妃・アンは自由に生きるための条件を提示し、晴れて「円満離婚」に成功。5番目の王妃となったキャサリンは、女としての武器を最大限利用し成り上がりを計るも、最愛の人を見捨てられず、最期は死を受け入れる。

時代に翻弄される女たちの姿を前に、エリザベスは祈りと悔やみの涙を流す。理不尽で残酷な運命を辿った王妃たちの魂が、エリザベスの「女王の精神」の礎にになっていると思うと、少しは報われる気がします。

私は私のものだ
誰にも利用されたくない。

エリザベス/『セシルの女王』5巻 p.83


あかね噺 8 / 末永裕樹・馬上鷹将(集英社)

阿良川一門の前座錬成会。目の前の客を喜ばせることを第一に考える嘉一や声優というキャリアを活かし声色を演じ分けるひかる。強敵たちの高座を受け、最後に登場したあかねの演目は、かつて父が錬成会で演った『替り目』。

落語家として鍛錬は積んでいるとは言え、経験値はまだ乏しいあかねに今在るもの、それは父である「阿良川志ん太」という落語家に対する解像度の高さ。父の確固たる「弱さ」こそが、今のあかねの噺のクオリティを押し上げる最大の要素だった

「おっ父の落語はスゴい」そう言い続けてきたあかねの、落語家の原点と活力が今回(読者目線で)思ってもいなかった「弱さ」という形で落語そのものの魅力の一つとして繋がったのはすごい気持ち良かった。良いマンガ体験だった。

落語は英雄譚じゃない
見栄っ張り 呑気や助平に お調子者
完璧に成れない普通の人間の失敗を語る芸
それ故に弱さもまた武器になり得る
弱くてもいい それもまた人としての味

阿良川志ぐま/『あかね噺』8巻 p.169-170


ウィッチウォッチ 13 / 篠原健太(集英社)

ニコへの想いを自覚し、心のダムが決壊したモリヒト。走り出したら止まらない…ということはなく、心は自由に解放したまま表情だけ冷たく保つ術を身につけ事無きを得る(?)

序盤の日常パートから中盤〜後半のシリアス黒魔女ウォーロックパートへの移り変わりがまたしても秀逸。ケイゴ、さすが人気投票1位なだけはある良い立ち回りだった。このまま本筋の行くところまで行ってほしい。


ペンションライフ・ヴァンパイア 2 / 田口囁一(集英社)

ニカのペンションも人外カタラレの宿泊客で賑わい始め、エリも住み込みで生活することに。エリの後輩ちゃんが出てきたり、鵺が美少女化したり、商店街のBBAと揉めたり。

田口囁一先生の描くキャラクターはどれも丁度良く気が抜けた感じで、読んでいてすごく和みます。ギャグセンスも大好き。


放課後ひみつクラブ 3 / 福島鉄平(集英社)

毎回、ヒミツをミッケては首を突っ込む蟻ヶ崎さんとなんだかんだ相手してくれる猫田くんだけど、今巻は13話の「ヒミツ・ミッケ」ない平和回がかなり好きだった。平和が一番。

新キャラ・生徒会長の虎ノ門菊子様(表紙の娘)も可愛い。


メダリスト 9 / つるまいかだ(講談社)

狼嵜光の演技がリンクを支配する。多くの選手たちがその凍てついた空気に呑まれる中、遂に訪れるいのりの順番。圧倒的格上を前にした時、背中を押してくれるのは、今まで積み上げてきた時間と揺るぎない覚悟。二人分の願いをかけて金メダルを目指す渾身の演技が始まる。

いやはや今回も熱かった。物語はノービス編が終わり、ジュニア編へ。

アニメも楽しみです。つるまいかだ先生がオタクの夢を叶ていて、ただただ凄い。


ダイヤモンドの功罪 3 / 平井大橋(集英社)

中学生チーム相手にノーノー(正確には引き分けなので未遂)をした綾瀬川は、試合後でもなお「全員が楽しめる野球」を追求しようとする。雛や巴、奈津緒、椿も、チームメイトそれぞれが考え続けながらU-12日本代表として大会の駒を進めていくとともに、大会の終わり、つまり今の代表チームとしての野球に終わりの時が近づく。

現状、綾瀬川を含めキャラクターたちが「小学生だということ」がかなりネックな気がする。ここから身体的・精神的に成長して収束していってほしいけど、そこでもまた突き落とされるような展開になってほしいとも思う。あと、過去の読み切りにも登場した大和が登場したのも熱かったです。


つばめアルペン 2 / 南文夏(集英社)

登山初心者1年生たちをまとめる山岳部唯一の先輩、鴨原部長。山でのつばめたちの実力を見て「こんなこともできないのか」と愕然としながらも、すぐに手を差し伸べてあげられるところが素敵。空回りしてしまうこともあるけれど、誰よりも真剣に山に向き合う姿勢よ。

他校との交流会を経て、地区大会への特訓の日々を送る中で、部長がこの夏の総体へかける思いの大きさを知り、緑葉女子登山部の団結はより一層強まるのだった。コロコロとして絵柄に反してしっかり「登山部モノ」として描かれています。

やはり私は山が好きだ
穏やかな気持ちになれるから

鴨原響子/『つばめアルペン』2巻 p.82-83


かげきしょうじょ!! 14 / 斉木久美子(白泉社)

本編はさらさの母・えつこが出てきたものの、さらさの父親のことについては深くは触れられず。まぁ物語上無理に触れなくてもいいことではあるので「大人はちょっとズルい」ということだけ描かれて良かったかな、と思う。スキャンダラスな展開に引っ張られず、文化祭まで突っ走ってほしい

今回はスピンオフとして、さらさの後輩・澄栖杏編を収録。『かげきしょうじょ!!』は何冊かに一回挟まれるこのスピンオフ(番外編)が本当に良い。歌劇少女たちの群像劇がやっぱり一番面白い。


明日ちゃんのセーラー服 12 / 博(集英社)

表紙は冬服に身を包んだ明日ちゃん。最初、神黙さんとかかと思ったけど明日ちゃんだった。濃密すぎる日々が描かれるので、そういえばまだ作中では入学から1年も経っていないということに気づく。蝋梅学園の冬はどうなるだろう。

「明日×木崎」ペアも良いけど僕は圧倒的に「戸鹿野×蛇森」ペアを推すぜ…!


氷の城壁 5 / 阿賀沢紅茶(集英社)

「こゆん→(ヨータ→美姫)」のところを「こゆん→ヨータ」と勘違いしているミナトは2人の様子を観察しながら次第に自分のこゆんへの気持ちを自覚しつつある現状。良いねぇ。イケメンが悶々とするのを見るのは最高だ。

4人で一緒にいることも増えながら2年生へ進級。新しい出会いもあるみたい。弟だったかな?確か。


ガールクラッシュ 7 / タヤマ碧(新潮社)

先輩アイドルのMV撮影参加を経て、振る舞いに余裕が生まれるようになった天花。しかし、そのことを気持ち良く思えないスア。「いい子」でい続けられるほど甘くないアイドルの世界で、それでも非情になり切れなかった彼女の葛藤と涙。

真面目な子ほど割を食うことも多い世界なんだろうけど、それでも最後に残るのはやっぱり真面目ないい子であってほしいし、きっとそうなる物語だと信じている。


エロチカの星 2 / 前野温泉(講談社)

日本一のエロ漫画家を目指す遠藤とよすがのコンビ「えんえんら」は、よすがが通う大学の漫研サークルに入り、日夜漫画製作に勤しむ。夏の大規模同人誌即売会に向け、事前勉強として訪れたイベントの出張編集部に持ち込むことになった二人に編集者・柏尾が指摘した内容とは…!?

面白いし、本人たちが本気なのも伝わるんだけど、だからこそ笑ってしまう。「エロ漫画」が題材だとどうしてもな。「第六感セックスセンス」とか「性癖じぶんに正直であれ」とか。


かさねと昴 2 / 山田金鉄(講談社)

意外とすんなりお付き合いが始まったかさねと昴。昴の女装友達のマサムネと一緒にコスプレイベントに参加することになった二人。人を好きになったり好きになられたり、お尻を揉んだり揉まれたり(!?)

作風はラブコメなので、コメディ要素も強めですが割とちゃんと真正面から根っこの部分を描くのが山田金鉄先生。性的指向とか性的嗜好とか。

「コスプレ」題材の作品も結構増えたなと思う。


株式会社マジルミエ 9 / 岩田雪花・青木裕(集英社)

魔力規制緩和派の策略で東京湾に出現した人工怪異。アスト社の魔法少女・土刃と協力し、怪異撃退に成功したマジルミエだったが、規制緩和はの姑息な情報操作により会社丸ごと窮地に立たされる。

これはこれで面白いんだけど、めちゃくちゃ政治的権力に翻弄されて行っていて、ぐぬぬ…って感じ。「魔法少女」が職業として浸透している社会が舞台なので煌びやかさだけでは語れないのは仕方ないかもですが、こういう展開はなかなか完全な勧善懲悪に持っていくのは難しい。それは断言できますが、作品にプラスになることはない。絶対にです。


うるわしの宵の月 7 / やまもり三香(講談社)

少しのすれ違いから喧嘩イベントが発生していた二人。先輩から謝って、宵ちゃんが気持ちを伝えて無事仲直り。もう喧嘩して仲直りするだけで飛んでいってしまいそうな昂り様。宵ちゃんの気持ちが抑えきれなくなってきたタイミングで先輩の口から他の生徒の前で交際公言。うお〜!

先輩の友人・桑畑先輩と宵ちゃんの友人・利根さんにフラグが立ってニッコリしています。


今日から始める幼なじみ 8 / 帯屋ミドリ(新潮社)

「幼なじみ」の再定義に挑み続ける意欲的なラブコメ。”擬似幼なじみ”の二人が過ごす冬はドキドキはありつつも、いつもと変わらない。正直結構好きな作品です。


幼馴染のお姫様 3 / 9℃(秋田書店)

駿介をそっちのけでひなきと小岩井さんの仲が深まっていく。ヒロイン二人のキャラクターが魅力的な反面、駿介のキャラが若干弱くて影が薄いかも。もうヒロイン同士でくっつくのが一番良いんでないだろうか。割とマジでアリな気がする。

お忙しいのか、毎月のnote更新が止まってしまっているのが少し悲しい。


テンマクキネマ 2 / 附田祐斗・佐伯俊(集英社)

『渚』の撮影をしながら倉井さんの本業の撮影現場にも見学者として参加する新市監督。プロの仕事を目の当たりにし、役者との向き合う姿勢を学んでいく。そして天幕さんの過去も描かれながら撮影合宿で海へ。

来月発売の3巻で完結ということで。やっぱり内容的に短期集中連載だったか。


針と羊の舟 2 / 幌琴似(KADOKAWA)

フェルトに針と刺していく度に、亡くなったペットを偲ぶ時間が減っていくことに空虚感と罪悪感を抱く花原と、そんな花原にを見て人知れず孤独感と焦燥感を覚える弥生。ゴールに旗を立て、それを目指して歩いていくだけとは言うけれど。

表紙のデザインがなんとも素敵で大好きです。


兄だったモノ 4 / マツダミノル(GANMA!)

巻を追うごとに増していく「中眞聖」という男の不気味な人物像。異常な立ち振る舞いに周囲の人間は否応なく狂わされ、堕ちていく。彼の本当の顔と姿を消した兄だったモノ、真相はいまだ藪の中──。


弱虫ペダル 86 / 渡辺航(秋田書店)

合宿に参加できずにいた段竹の不調の原因は単なる「成長痛」だったという。成長を続ける自身の体格とバイクのサイズが合わず上手く乗れていたなかったらしい。寒崎さんのいつもの計らいでサイズの合ったバイクを用意してもらい、鏑木とのコンビ「チームSS」が復活。1000km走破に闘志を燃やす二人に待ったをかける杉元との熾烈なメンバー争いが繰り広げられる。

段竹が巨大化してデカキャラになったのは熱い(?)。今の総北は比較的小粒なキャラが多いので、見た目のバランス的にも段竹のメンバー入りはやはり堅いか。しかし杉元の熱い想いも無視はできない。次回、杉元死す。(本誌で続きを読んでしまいました。)


音盤紀行 2 / 毛塚了一郎(KADOKAWA)

国境も時代も超えて紡がれる音盤レコードにまつわるオムニバス短編集の2巻。聴き継がれていくレコードという媒体の持つ魅力が伝わってきます。音盤紀行。音盤聴こう。


僕の妻は感情がない 7 / 杉浦次郎(KADOKAWA)

ロボットが普及すれば、みんな幸せ?すこしふしぎな近未来。タクマくん一家は、知り合いや友人が増えてきました。ロボットも人間も、少しずつ成長していきます。


ネバーエンディング・ウィークエンド 2 / 座紀光倫(幻冬社)

ドイツで暮らす写真家、塁。同居人であるオスカーの提案で、突然の旅行が決まったある日。とある事件をきっかけに、二人は謎多き少年、エルに出会う。「母親のもとに連れて行ってほしい」と言うエル。最初はまったく取り合わないオスカーだったが、エルの必死な様子に結局連れて行くことに。行き先での聞き込みを繰り返し、わずかな手がかりを頼りに、次の目的地を決める旅。そこで出会う人々との交流を経て、エルは自分の過去を深く顧みる。「俺は本当に母さんに愛されていたのだろうか」「母さんに会えたら、俺は、俺は――」暗い気持ちが渦を巻き、ある朝、エルは二人の前から忽然と姿を消してしまう――! ドイツを駆けるロードムービーコミック、それぞれの過去が明かされる第2巻!


わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~ 4 / 瀧波ユカリ(講談社)

前巻から引き続き、主人公の友人家族のDV問題にクローズアップ。もう夫が100悪いことに疑いの余地がないので、単にスカッとしたくて読んでいる。DV問題の被害者を「サバイバー」と呼ぶことを初めて知った。

他人の幸せや成功に対して、本当に分け隔てなく真正面から喜んでお祝いできているだろうか、みたいな回は面白かった。今まで一番面白かった。人間ってどうしても他人の不幸や失敗を美味しく感じてしまう生き物だと思うので。


霧尾ファンクラブ 3 / 地球のお魚ぽんちゃん(実業之日本社)

クラスメイトの霧尾くんの熱狂的なファンのようなストーカーのようなJK二人組の変態的活動記録。霧尾くんが所属するサッカー部のマネージャーが二人のことを陰ながら推していたり、霧尾くんの友人も交えて微細な恋愛描写が描かれかけたり、毎回巻末に無意味なしんみりパートが来たり。平和だ。

霧尾くんが実のところあまりパッとしないキャラクターなのが地味に面白いなと思う。クラスのモブを推すモブという構図。オタク女子のイキり感が若干キツいと感じる時はあるけど概ね楽しいです。


アラバスターの季節 2 / 高津マコト(少年画報社)

自らヌードデッサンのモデルを申し出た美人美術教師とデッサンにのめり込んでいくヤンチャ(だった)美人男子の肌色美術漫画の2巻。

裸体が「究極のデッサンモチーフ」でその魅力に惹かれていく男子高校生、という構図なのは分かるけど、それにしても肌色成分が多すぎるというか、爛れた関係にならないのが逆に不自然というか、でも恋愛関係になっても興醒めだし、クラスの女子は普通に男性教師と援交してたりするし、全体的にだいぶ散らかってんなーって感じです。


一ノ瀬家の大罪 4 / タイザン5(集英社)

毎話毎話、あとだしで新しい展開がされていてかなり難解、というか理解不能。面白い/面白くない以前の問題になってきた感。夢でも現実でも回想でも何でもいいから広げた風呂敷を畳む展開に早くなってほしい…


オンノジ / 施川ユウキ(秋田書店)

『鬱ごはん』『バーナード嬢曰く。』などの施川ユウキ先生の過去作。ある日突然人々が消えた世界で、たった一人残された女の子・ミヤコと、かつて人間だったというフラミンゴのオンノジの二人だけの世界が描かれる。

無料だったので読んでみたけど面白かった。施川ユウキ作品は『鬱ごはん』『バーナード嬢曰く。』『ヨルとネル』しか読んだことがないので、他の過去作も読んでいきたい。


北極百貨店のコンシェルジュさん 1~2 / 西村ツチカ(小学館)

アニメ映画の公開に合わせて発売された2巻セットを購入。過去に電子版で読んだだけだったので改めて読み直しました。「絶滅した動物」の客を「人間のコンシェルジュ」がもてなすというストーリー。内容はほっこり優しいけど、テーマ自体かなり皮肉が効いているし、改めて不思議な作品だな、と。

映画、かなり良かったのでおすすめです。「お仕事モノ」に少し振った内容でとっつきやすかったし、画がカラフルで可愛くてキラキラしていた。大切な人にプレゼントを贈りたくなる。




雑記

10月に読んだマンガまとめでした。

今月のMVP的な作品はやはり『東京ヒゴロ』の最終巻でしょうか。個人的に苦手意識があったよしながふみ先生の『環と周』も良い一冊でした。もっとちゃんと色々読もう。今月から始まった『きのう何食べた?』のドラマ2期は毎週楽しく見ています。

『縁もたけなわ』も大変良かったですが、個人的な作家さん推しの気持ちもそれなりに入るので、他人にほいほい勧められない気もします。『いやはや熱海くん』の2巻も圧倒的に好きでした。

このnoteを書くにあたって月初のジャンプ作品もザザッと読み返していたら『アオのハコ』『あかね噺』『ウィッチウォッチ』あたりも過去イチ良かったなと改めて思いました。

あとは『サバキスタン』『ヘレナとオオカミさん』『龍行旅』など、海外発の作品も普段と比べると読んだ方かも。台湾の作品は今まで以上に勢いを増していきそうなので、これからもちょっとずつチェックしていこうと思います。

マンガを読むのに最適な場所はどこか、といつも考えています。まぁ結局「自宅が」が一番なんですけど、今月中旬頃自宅の隣の空き家解体工事が始まってしまい、(多分)日曜日以外は朝から夕方まで大騒音でとても読書ができる環境ではなかった我が家。

普段、ちょこちょこ喫茶店とかでも読みますが、席代としてコーヒー代+αがかかってきたりするので。でもちょっと人気がある中の方が集中出来たりもするし、やっぱり難しいところです。

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