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2023年3月の本棚

3月に読んだマンガをまとめました。




ニャリウッド! 1 映画大好きマズルカちゃん / 杉谷庄吾・プロダクショングッドブック(KADOKAWA)

終わらない「ポンポさん」シリーズ。今回はニャカデミー賞カメラマン・マズルカちゃんが主人公。

退屈な毎日を過ごす中、しがない路上ミュージシャンのビビと出会ったマズルカは彼女の歌に光を見出し、共にポンポさんの元へ向かう。脚本も手掛けたいマズルカ、プロのミュージシャンを目指すビビ、創作に対する登場人物たちの狂気に満ちた衝動が、再び最高の映画を作り上げる

他者の介在しない世界で
自ら定めた目標に向けて
自らを研鑽する
それこそが「本物の自由」よ

ポンポさん/『ニャリウッド!』1巻 p.109



往生際の意味を知れ! 1~7 / 米代恭(小学館)

7年前に突然フラれて失踪した元カノ・日和ひよりのことを忘れられない主人公・海路かいろは、彼女のことだけを考えて日々生きていた。そんな海路の前にある日再び現れた日和は「自分の出産記録を撮ってほしいからあなたの精子が欲しい」と言う。荒唐無稽な要求をする日和を疑いながらも求められているという事実に喜びを隠しきれない海路。しかし彼女の真の目的は「エッセイ漫画家である自分の母親への復讐」だったーー。

”元カレ”と”元カノ”のクソデカ感情が引き起こす、醜く歪なサスペンスラブコメ。未練しかない海路が復讐心しかない(?)日和に振り回されながら進む復讐劇は、ドロドロで危なっかしくて面白すぎたし、日和の魔性っぷりも最高でした。ドロドロしてそうだな~、と読まずにここまで生きて来たことを後悔するくらい。

最新7巻では、ラスボスである日和の母親・由紀の故郷・山形を舞台に物語は佳境へと進んでいきます。この母親がガチのマジでヤバいやつだけど、どんな結末になるのか全く想像できなくて楽しい。ハッピーエンドでお願いします。

3月からドラマが放送しているみたい(それに伴う2巻まで無料公開がキッカケでした)



ものするひと 1~3 完結 / オカヤイヅミ(KADOKAWA)

警備員のバイトをしながら小説を執筆する30歳・独身男性、スギウラ。”先生”でもなければ”天才”でもない一人の文学作家の”物する”日々を覗き読む作品。

強烈な欲望に動かされながらも、あくまで淡々と、ただ言葉を紡ぐ、ごく普通で、少し変わった毎日。スギウラが自分の時間を生きている様がとても良かった。読後感も好み。

もの・する【物する】
ある動作をする。
ある物事を行う。
「言う」「書く」など種々の動作を湾曲にいう語。

(『広辞苑』第七版より)


いいとしを / オカヤイヅミ(KADOKAWA)

母の死をキッカケに、72歳の父が住む実家に42歳バツイチの息子が帰る。「おじいさん」と「おじさん」、男二人の特になにもないどこか他人行儀の日々。母が遺した現金500万円、親の介護、自分の体調、漠然とした不安や焦り、気がかりは尽きないけれど、生活は続いていく。

コロナ禍や東京オリンピックがもう遥か昔のことのように感じる今日この頃。


白木蓮はきれいに散らない / オカヤイズミ(KADOKAWA)

孤独死した高校時代の同級生の遺書に名前が記されていた3人の女性。「ほんとうは料理も掃除も洗濯も好きじゃない」専業主婦のマリ、「自分の身を守るなんてこの歳までしたことなかった」夫と離婚調停中のサヨ、「お嫁に行って子供を産まなきゃだめですか」キャリアウーマンのサトエ

40年近くもお互いに交わらなかった3人の人生が、知人の死により再び重なる。何故名前が記されていたのか。それぞれの幸せと何なのか。



一ノ瀬家の大罪 1 / タイザン5(集英社)

交通事故で一家全員が記憶喪失になってしまった一ノ瀬家。長男・翼、長女・詩織、母・美奈子、父・翔、祖母・幸恵、祖父・耕三、温かな家族かと思われた6人にはどうやらそれぞれとんでもない秘密があるらしい。一体何なんだこの家族。

『タコピーの原罪』のタイザン5先生の新作はまたしても不穏なタイトル。「罪」好きすぎんか。そして「大罪」なのに6人家族、妙だな… 記憶が戻る時が来てほしいけど来てほしくなさすぎる。



あかね噺 5 / 末永裕樹・馬上鷹将(集英社)

前座修行の楽屋働きで嫌味な先輩の新人潰しの標的になった朱音。開口一番を任された高座の中で見返すことに成功するも、そのことが落語界でちょっとした波乱を呼ぶこととなってしまう

ただでさえ少ない持ちネタという武器を増やそうにも件の行いから苦戦する中、朱音に手を差し伸べてくれたのが蘭彩歌らんさいかうらら師匠。大看板の女性落語家にして、妖艶さを巧みに操る廓噺くるわばなしの名人だった。

仕返し回はスカッとしたけど、確かに落語であんなことしちゃアカン。禄郎兄さん、うらら師匠、次々面白いキャラクターが出て来て楽しい。目の前のチャンスを掴みながら一歩ずつ成長していくしかない。



正反対な君と僕 3 / 阿賀沢紅茶(集英社)

おうちデート、制服デート、誕生日デートとデートしまくりな鈴木・谷カップル。もう何も心配はいらないくらい順風満帆の二人。お互いに相手個人だけでなく、一緒にいる空気ごと好きとのことで、そこがまた堪らなく良い。季節に対する気持ちを共有できる間柄って素敵。初々しいけど良い意味で熟した面もある関係が、相変わらず堪らんです。

そして山田と西さんというまた別の「正反対な君と僕」についても描かれることが多くなってまいりました。ここが今一番ホットなまである。西さん好きすぎる。西さんの友人・ホンちゃんこと本田さんのポジションも好き。タイラズマ(平と東)の絶妙な交友関係も好き。平の言語化能力には目を見張るものがある。ラストのテラスタル鈴木もキュートで好き。(好きしか言ってないな)

LINEスタンプも同時発売されていて即買いしました。なお、送る相手はいない。

ッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!(声にならない声)

2月の話ですが、2巻の時の懸賞(抽選100名)が当選していました。無作為とは言え、選ばれた100人のファンの一人になれたと思うと、素直に嬉しい気持ち。



ダンダダン 9 / 龍幸伸(集英社)

オカルンのクラスメイト・坂田金太(表紙のデブ)の活躍もあり、団地に現れた巨大怪獣の撃退に成功。しかしその中から美少女が現れてオカルンになんとキスをして周りは大騒ぎに。

バモラと名乗る怪獣少女から「金玉」のことを聞き出すために意思疎通手段を模索する面々。とりあえずサラッと転校してくる流れよ。バモラちゃんのカタコト具合が可愛い。



ココロのプログラム 2 / 中村ひなた(集英社)

作者療養で半年ほど休載されていたので久しぶりに新刊。心待ちにしておりました。「心」を学ぶためにホームステイにやってきたロボットのいちこと思春期真っ只中の少年・きゅうとその幼馴染・愛の三角関係(?)が描かれる

揃って中学生になった三人。純粋無垢ないちこに対して、家族とは違う特別な感情を抱きつつある九は悶々としながら日々を過ごす。一方の愛は、もう九への想いが限界突破し遂に告白!よくやった!二人の関係を前に、いちこは何を思うのか。

本作は「人間がロボットに抱く劣等感」と同じくらい、「ロボットが人間に抱く違和感」が描かれていて、なんというか、一筋縄じゃいかない感があります。いちこがあまりにも人間すぎる。それが良い悪いってわけではないですが。


僕の心のヤバいやつ 8 特装版 / 桜井のりお(秋田書店)

3年生に進級した市川と山田。無事みんな同じクラスになり、新しいクラスで体育祭、修学旅行とイベントが続く。そして遂にお互いに想いを伝え合う二人。ヤバさ最高潮の第8巻!

110話〜113話の流れはサブタイトルも含めて感情が昂り昂り、昂り切ってもうヤバかった。最高だ。もう終わってもいい、というか終わってほしい。終わってくれ。

アニメは4月から放送開始。ヨルシカの「斜陽」がバツグンに合ってて楽しみ。山田役の羊宮妃那さんは最近、界隈的にも個人的にも注目の声優さんの一人です。



きみのご冥福なんていのらない 5 完結 / 松尾あき(秋田書店)

先輩や友人たちにも小野のことを打ち明けることとなった亜音。逃げるように小野の故郷・祖母の家へと向かう二人。小野が蘇った経緯が明かされ、お別れの時が訪れる。

最期の瞬間まで”二人だけの物語”で、綺麗に締め括られていたのが良かったです。お疲れ様でした。



ババンババンバンバンパイア 4 / 奥嶋ひろまさ(秋田書店)

李仁くんのことが気になるギャル・山羽カオルヤマンバも加わり、ますますカオスになる人間関係。全体像を把握しきれているキャラが一人もいないまま、物語は夏休みへと突入。

こじれにこじれてはいるけど、実害も特にないのがくだらなくて面白い。個人的には李仁くんのアクションがもう少し欲しいところかな。そんな中、次なるバカも登場して次巻に続く。多分、見た目的にもう一人の吸血鬼と思われるが果たして。



矢野くんの普通の日々 5 / 田村結衣(講談社)

矢野くんの前に現れた中学時代のクラスメイト・岡本さんが登場。今、明かされる矢野くんの眼帯の下に隠された秘密とそれにまつわる悲しい過去ーー(?)

と仰々しいあらすじではあるけど全然大丈夫で、今回もピースフルな内容で安心した。呪いだろうがなんだろうが、”今”を一緒に過ごすことが何よりも大切なのです。そして羽柴くんと泉ちゃんにもラブコメの波動が…!修学旅行編へ続く。



落ちこぼれ召喚士と透明なぼく 2 / 漆原雪人・藤近小梅(ブシロードクリエイティブ)

妹を攫った「悪役」を探していた歩自身が実は妹と成り変わった存在で、一つの物語の「悪役」だったという事実。マシロは歩を庇うが、周りの人間はそれを許すはずもなく…という展開。

全然想像していなかった方向に進んでいくのは面白い。歩にあまり同情の余地がないので裁かれて当然なのでは?とは思うけど。



戦車椅子 -TANK CHAIR- 2 / やしろ学(講談社)

凪を「特別な”器”」と呼ぶ、学園の支配者にして「完全な存在」である”先生センセイ”が本格的に動き出す。向けられる全ての殺意を薬に戦う兄妹の物語。

新たな刺客・渦の強キャラ感も良いけど、先生がちょっと桁違いすぎる。勝てるのか。本当に勝てるのか。



君に会いたい 2 / 売野機子(新潮社)

1巻のラストから数年の時が経ち、王太子となったアルは、キスリムとの関係に線を引いていた。自分の出自に対するコンプレックスや「認められたい」「居場所が欲しい」という切実な思いが政治に利用されてしまっている現状が悲しい。

真っ直ぐなキスリムと強く美しい女性に成長したウルル、そしてアルの3人が笑い会える未来を願っております。



今日から始める幼なじみ 6 / 帯屋ミドリ(新潮社)

気がつけば登場人物とかなり増えた擬似幼なじみラブコメももう6巻

航平と楓の秘密の関係を偶然知ってしまった後輩・滝さんに「お姉ちゃんになってほしい」と言い寄られ、引き受ける楓。ユルい雰囲気とは裏腹に関係性はだいぶ歪んでいるけど、幸せそうなのでOKです。



ミューズの真髄 3 完結 / 文野紋(KADOKAWA)

絵を描いていると
花が 草が 鳥が 空が 人が
美しく見えてくる

私はたぶん
世界を愛していたかったから
絵を描くのが好きだったんだ

私は汚くて
ダサくて
軸がブレブレで
個性がわからなくて
他人から見たら
立派じゃないんだと思う

私も 私の絵も
誰からも愛されないかもしれない
でも
だからこそ
描きたい
描き続けてあげたい
誰かに評価されるためじゃない
私のために描いてあげたい

だってそれが
それが私
瀬野美優の
真髄なのだから……

瀬野美優/『ミューズの真髄』3巻 p.137-140



にゃこと博士 / 空次郎(KADOKAWA)

天才女博士と博士が作った猫耳メイドのにゃこのゆるゆるほっこりストーリーだにゃ。「作った」とは言っても、にゃこはロボットではにゃく生物で複乳にゃ。ひたすらに優しく可愛く描かれた光の漫画にゃ。にゃこの造形に作者の並々にゃらぬ拘りと情熱を感じたにゃ(おすすめです)



からかい上手の高木さん 19 / 山本崇一朗(小学館)

かなり久しぶりに感じる新刊。内容に関してはもう特に言うこともないですが、真野ちゃんと中居くんのキス回は非常に良かった。西片と高木さんも二人を見習ってほしい。

そしてなんとドラマ化決定!?マジかよ!



くノ一ツバキの胸の内 8 / 山本崇一朗(小学館)

丑班の回が好き。アジサイがケンカしているシオンとスズランの仲裁をして褒められようとするも、ケンカの原因を作ったのは自分だったと早とちりをしてスッポンポンで厠にダイブしようとするという愛すべきバカっぷり。オチも含めて可愛かった。



ギュゲスのふたり 3 / カトウタカヒロ(小学館)

藤堂の”消す力”を利用して殺人鬼を透明人間化させ、国の要人を次々と襲う藤堂の旧友のギャング・キンタ。国家転覆を目論む中、謎の刑事コンビも藤堂に接触する。漫画家、ギャング、警察、三つ巴の透明人間バトル勃発

”消える力”の優がまだ影薄めなのと全体的に設定がとっ散らかってる感はあるので、まだ何とも言えない、というのが正直なところ。もう少しジワジワと追い込まれていく展開かと思ったら透明人間大量発生でド派手な能力バトルものとして進みそう。



誰何Suika 2 / つばな(徳間書店)

極度のストレスがかかると”消滅”してしまう世の中で、消えていった男子たちを復活(?)させるためにアイドル活動に勤しむ女子高生たちを描いた作品。

わからないことだらけの1stライブに向けて、楽曲制作やダンス練習など、セルフプロデュースを試みていくあやかたち。各々が得意分野を発揮してなんやかんやポジティブに頑張る姿は見ていて楽しい。話自体の演出も好き。

紅ちゃんの元所属グループのメンバーも登場し、1stライブ後の展開がどうなるのかも気になる。消滅設定を扱い切れるかはまだちょっと謎。



琥珀の夢で酔いましょう 6 / 村野真朱・依田温・杉村啓(マッグガーデン)

スタンプラリーイベントが始まり、盛り上がる「白熊」。今回は知愛ちあや鉄雄にフォーカスした話中心。よく行く酒屋さんが作中にもガッツリ出てきて嬉しかった。あっつい夏の日に鴨川の辺りでビール飲みたいなぁ。

「ビールも人間も多種多様」的なことを描きたいのは分かるけど、在日外国人差別とか複数愛者ポリアモリストとか、なんかやたらポリコレ要素が目立つのだけは気になる。彼ら彼女らを蔑ろにするつもりは毛頭ないけど、この作品で扱うことなのかは甚だ疑問。



アビスアジュールの罪人 3 完結 / 冨明仁(KADOKAWA)

人魚を統べる大臣・ハルジオンが掲げる「人魚島計画」の真相を知ったジョーは、計画のために捕らわれたリュウと雪を救うべくハルジオンに接近する。

変身薬の材料として捉えられていた皇魚・リンリンを救い出したことで罪人として捉えられてしまうジョーだったが、あまり大きな盛り上がりはなく大団円、完結。もっと壮大な話になるかと思っていたけど、絞った感じにはなっていたかな。海は誰のものでもない。



夜の名前を呼んで 4 / 三星たま(KADOKAWA)

不安を感じると、人や空間を真っ暗にしてしまう“夜”を呼ぶ少女・ミラ。その病を治すため、担当医レイと森の奥に療養生活を送っている。

ある日、レイの元にやってきたのは、太陽の光で火傷をしてしまう病のアルデ。ミラは生まれて初めて、病の苦しみをわかちあえる相手に出会った。仲良くなりたい想いが芽生えるが、ミラの病を知らないアルデは、彼女にひどい言葉を放ってしまい――。同じ境遇のふたり、本音で向き合うことで生まれる友情。



よふかしのうた 15 / コトヤマ(小学館)

キクとマヒルを追いかけ、コウたちは修学旅行で北海道へ。旅先で出会った学ラン姿の吸血鬼・ハルカはナズナの母・ハルの眷属だった。

コウと拳を交え、ぬるりと仲間ポジに落ち着いたハルカのことは一旦置いておいて、キクとマヒルの旅の果て、ついに全員が邂逅する!のは次巻に持ち越し。キク編長い!いいけど!



葬送のフリーレン 10 / 山田鐘人・アベツカサ(小学館)

七崩賢・黄金郷のマハト編続き。マハトの記憶の中で綴られる、人類と魔族の特異な関係。黄金郷の結界が解かれる時、決して相容れない人類と魔族の戦いの火蓋が静かに切って落とされる。

お願い死なないで、シュタルク、フェルン、デンケン。”解析”が完了したフリーレンが暴れてくれるであろうことだけが救いだ。

マハトとグリュック卿の関係はかなり興味深かった。描いた上で「絶対に理解し得ない」ことをまざまざと痛感させられる流れはお見事でした。

アニメは今秋から。フリーレン役は種﨑さんなの、ピッタリすぎますね。よう分かっとる。



宇宙の音楽 1 / 山本誠志(講談社)

持病の喘息の影響で、大好きなトランペットの道を諦めた少年・宇宙零たかおき れいは、進学先の吹奏楽部のない高校で、創部したての吹奏楽部部長の先輩・星野水音ほしの みおに「指揮者」として勧誘される。技術も人間関係も問題は山積みだけど、みんなで”息”を合わせて”音”を奏でる青春吹奏楽ストーリー。

音楽マンガ特有の「音」の表現だけでなく、「風」や「息」の表現にも強い拘りが感じられて面白かった。尚且つ、「吹奏楽」の根本的な魅力も描かれていて、想像以上に情動を掻き立てられる作品でした。キャラが関西弁なのも好き。

タイトルは実際に存在するブラスバンド曲『宇宙の音楽』から。

期待ともおどしともとれる
その言葉の重圧は
今の俺には丁度心地よくて
たった二人から始まった音楽の息の
まだ脳裏をかすめていた

宇宙零/『宇宙の音楽』1巻 p.128-129



カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義 4 / 甲斐谷忍・夏原武(集英社)

悪徳マルチ商法集団のトップ・鈴鹿十郎と加茂教授の直接対決の鍵を握るのは「家族の力」。マインドコントロールへの対抗手段はとてもシンプルなものだった。

そして次なる講義は「初期リスクの低いビジネスモデル」について。廃れゆく住宅地で情弱高齢者をカモにするビジネスの「カモリズム」なポイントとは。悪い人たちはどこにでも湧いてくるもんだな〜。



ウマ娘 シンデレラグレイ 10 / 久住太陽・杉浦理史ほか(集英社)

オグリキャップ、メジロアルダン、イナリワンの三つ巴の毎日王冠は写真判定の末にオグリが勝利。アルダンは悔しい結果だったけど、また這い上がってきてほしい。一方、京都大賞典では復活したスーパークリークが余裕の勝利。

永世三強がぶつかり合う黄金時代の天皇賞(秋)の行方は次巻!激突せよーー。



【推しの子】 11 / 赤坂アカ・横槍メンゴ(集英社)

役者とアイドルの間で揺れ動く有馬かなは、新進気鋭の映画監督宅に招かれ、その姿を週刊誌に撮られてしまう。交通事故的とは言え、スキャンダルはスキャンダル。絶対絶命のピンチにアクアが動く。

アイを殺害した真犯人「カミキヒカル」も本性を現し、物語は〈映画編〉へ。

若干中弛みしていた中で登場したキャラクターたちも集結していよいよ物語が大きく動き出しそうな予感。”繋がった”感が気持ち良かった。アクアとルビーの仲違いは悲しいけどここからの展開も楽しみ。

4月からいよいよアニメもスタート。楽しみです。



少年のアビス 12 / 峰山りょう(集英社)

黒瀬夕子の闇を知った柴ちゃん先生は黒瀬家崩壊を決意し、ついに本気を出す。

今回は柴ちゃん先生の逆襲が多く描かれるので彼女が光に見えがちだけど、この女の行動心理も大概狂ってるので救いはない。

チャコの暴走、玄の行方、そして令児の運命。物語はさらに深い地獄アビスへーー。

柴ちゃん先生なめんな

柴沢由里/『少年のアビス』12巻 p.62



明日ちゃんのセーラー服 11 / 博(集英社)

同級生・戸鹿野舞衣の過去を知り、ひどく心を揺さぶられる小路。両親を交通事故で亡くし、それでも今を”普通に”生きている彼女のことを分かりたいのに分かない。分かれない。だからこそ、知りたいと思う。

最後の秋分の日の小路との心の叫びのシーンは涙なしではとても読めなかった。戸鹿野さん推しとして必読の11巻。本当に彼女を尊敬する。素敵な女性に育っていってほしい(謎目線)

100万部おめでとうございます



塩田先生と雨井ちゃん 5 / なかとかくみこ(イースト・プレス)

16歳の雨井やよいと29歳の塩田嗣春。生徒と教師の恋愛関係は勿論誰にも秘密。ドタバタないつもの二人はドキドキの修学旅行へ。そして遂に雨井ちゃんの親友・まりあちゃんにこの関係がバレてしまう…!?波乱の5巻。

塩田先生の人生観というか人間像を作り上げたエピソードは個人的にかなり響いたし、雨井ちゃんとまりあちゃんの関係はもうなんか笑いながら泣けた。この「笑いながら泣ける」ってのが結構重要で、シリアスやドロドロに持っていくのは簡単だけど、あくまでラブコメとして確立している感じが大好きです。

ゆくゆくは私ーーー…

先生を食べたいの

先生の死も私のものにして
ひとつになって
ずっとずっと
宇宙空間を漂ってたいの

雨井やよい/『塩田先生と雨井ちゃん』5巻 p.261-262



ピッコリーナ 1 / 大槻一翔(KADOKAWA)

『欅姉妹の四季』の大槻一翔先生の新作。焼き鳥屋を営むあきらと、店に来たバニーガール姿の峰香ほうかさんの恋模様が描かれる。バニークラブとか出てくるけど、全体的に爽やかで健全な雰囲気で、二人の働く描写にもリスペクトを感じる。峰香さんが自分と瓜二つなバニーガールたちを4人も連れて歩いてるのも面白い。

バニーガールと焼き鳥の素晴らしさが詰まったユニーク故に新鮮な恋愛ものでした。

多分大丈夫だろうけど『五等分の花嫁』みたいにせず、峰香さん一人に絞ってやってほしいけどどうなるか…(表紙的に勘違いされそうですが全然えっちなやつではないです。えっちでなくはないけどえっちなやつではないです。)



僕の部屋のユウ子さん 1 / 武川展子(スクウェア・エニックス)

格安で”いわく”つきの部屋を借りた主人公の青年・カンナ。何が出てきてもへっちゃら〜、なんて思ってたら本当に幽霊が出た。幽霊に「ユウ子」と名付け、始まった同居生活。怪奇な毎日は当たり前の日常へ変わっていき、当たり前の日常はかけがえのない日々へと変わっていくーー。

ユウ子がとにかくキュート。表情はないけど割としっかり「女子高生の造形」を保ったまま幽霊になったユウ子との生活は”怖いもの”を見ているというより”いけないもの”を見ている感が強くて変な感じです(褒めてる)。気になる引きも楽しみ。



嘘の子供 1 / 川村拓(スクウェア・エニックス)

4月からアニメも始まる『事情を知らない転校生がグイグイくる。』の川村拓先生の別連載作。我が子を亡くした夫婦の元に、子供の姿に化けた狸がやってきたことで始まる優しい嘘の物語

「こんなん泣くに決まっとるやん…」という展開かと思いきや、どうやらそうでもなさそう。「嘘の子供制度」とは一体…?



わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~ 3 / 瀧波ユカリ(講談社)

星屑男子がもはやただのゴミクズ男子だったり、絵に描いたような(絵に描いているんだけど)モラハラ夫も出てきたり、これら全てを「面白い」に昇華できないまま読み終えてしまった。こんなん存在してはいけない生き物たちでしょ…。

モノローグがいちいち鍵垢ツイートなのもずっと癇に障る。「じゃあ読むな案件」すぎるんですけど、それでも読んでしまうところはこの作品の魅力かも。



僕の妻は感情がない 6 / 杉浦次郎(KADOKAWA)

ロボットと人間が共存する世界のとある家族の物語

亡き父をロボットに重ねて成長した女の子のエピソードがあったり、マモルくんのボディーをヒト型に交換するフラグが立ったり、ロボットの成長や感情の在り方についてどこまで誠実に向き合う姿勢が作品を通してずっと伝わってきていてすごいです。応援しています。



夏・ユートピアノ / ほそやゆきの(講談社)

ピアノの調律師としての家業を継ぐために見習いとして働くあらたは、不思議な雰囲気を持つ弱視の少女・響子きょうこと出会う。実は有名ピアニストの娘だという彼女とひょんなことから行動を共にすることになった一夏の物語。

こういう行間を読ませるような静かな作品が好きなので個人的にはとてもハマった。っていうのと、ピアノ弾ける人も調律できる人もめちゃくちゃかっこいいなと改めて思った。職人はすごい。

後半は四季賞受賞の読み切り『あさがくる』も収録。こちらも好き。



その着せ替え人形ビスク・ドールは恋をする 11 / 福田晋一(スクウェア・エニックス)

「館」のコス合わせ続き。この作品で一番コスプレに対して真摯な姿勢を貫くジュジュ様ならではの悩みや葛藤が解消されてよかった。年上お姉さんたちの言葉も正論すぎる。いつまで好きでもいいし、いつから好きでもいい

一方、この合わせが終わったら五条くんに告白しようと決心していた喜多川さんだけど、スイッチが入ってしまった五条くんはそのまま冬コミに向けて次なるコスへの情熱を燃やしまくり、告白のタイミングを逃す形に。

冬コミの最後に告白、からの大晦日・お正月~みたいな流れの方が華やかにはなるだろうけど、もう少し二人の関係を進展させる描写がこの巻に少しでも収まっていたらもっとグッドでした。最後のタイトル回収的演出はちょっと鳥肌立ちました。



みずほ、中学生、世界崩壊は突然に 1 / まつだこうた・からあげたろう(KADOKAWA)

女子中学生・みずほは、ある日唐突に神様に世界の崩壊を防ぐための役目を任されてしまう。頼りなさすぎる神様の使い・アプカと協力(?)して、理不尽に発生する世界崩壊を食い止めるためにタイムリープを繰り返すみずほの運命や如何に。

まつだこうた先生原作ということで手に取ってみたけどちょっと内容が突飛すぎた感は否めなかったかも。装丁デザインとかは好きです。



生きてるうちに推してくれ 2 / 丹羽庭(小学館)

霊感のあるアイドルと除霊パワーのある坊主のバディお祓いコメディーの2巻。

主人公のミサキがお祓い活動を通じてアイドル活動における自分の在り方とかを模索していくストーリーだけど、まだあまり「アイドルに拘る理由」は感じられないところ。

最後の友達との過去エピソードはキツかった。この悲しい経験が、今の彼女を作った一因だったと思うと同情したくもなる。



トリリオンゲーム 6 / 稲垣理一郎・池上遼一(小学館)

ドラゴンバンクのトップ・黒龍社長に対して直々に宣戦布告したハルたちトリリオンゲームは、満を持して「動画配信事業」に舵を切る。自社メディア「トリリオンTV」を開局し、撃ち込む弾はまさかの「報道」。大帝国相手のマネーゲームは予測不能の新展開へ。

ソシャゲ事業が終わったと思ったらすぐさま次なる展開は目まぐるしくて最高。買収を持ちかけてきたドラゴンバンク相手に逆に買収宣言をするシーンは痺れた。こういうところはやっぱりドラマ映えしそう(ドラマ化おめでとうございます)

あと、新キャラの局アナが真っ直ぐで可愛いくて良い。でもこんな純粋な女子アナはおらんやろな(偏見)



ひらやすみ 5 / 真造圭伍(小学館)

3月最後にして最大の楽しみだったハートフル平家暮らし物語の第5集。

ヒロトとなっちゃんが過ごす阿佐ヶ谷での二度目の春。ヒロトの高校時代からの友人・ヒデキに異変。育児や仕事に奮闘しながらも心が削られていく彼を救ったのはヒロトの言葉と行動で。なんてことない一言が、隣にいる誰かにとってかけがえのない魔法の言葉になる。二人のエピソード、素敵すぎて泣いちゃった。

他にも、なっちゃんが高野文子に多大な影響を受けたり、あかりちゃんと山田に春が訪れたり、中島さんは声でかいけど良い子だったり、石川さんの執筆活動が捗ったり、阿佐ヶ谷姉妹のお二人がさりげなく登場したり、よもぎさんに"運命"感じちゃったり、ばーちゃんも頑張ってたり、ヒロトが過労でぶっ倒れたり、と、春の高揚感とか侘しさとハプニングの詰まった、今の季節にぴったりの一冊でした。好きだ〜🌸

このTSUTAYA限定特典ステッカーを手に入れるために3時間くらい彷徨い続けたのが発売日の思い出…




総括・雑記

あっという間に3月も過ぎ去り、年度が変わってしまうことに恐れ慄いております。今月は『正反対な君と僕』で始まり、『ひらやすみ』で終わる素晴らしい月でした。『塩田先生と雨井ちゃん』『明日ちゃんのセーラー服』『僕の心のヤバいやつ』も最高を更新する最高っぷりで大満足です。

新作も、あまり多くは読めなかったけど、読んだものはどれも好きなやつでした。ある程度厳選して読んでいるだけのことはある。

2月の終わりと3月の始めに複製原画を立て続けに注文してしまい、お財布は悲鳴を上げていますが、後悔はないです。手元に届いたらまた盛大に写真撮ったりしたい。

今月は毎年恒例の「マンガ大賞」も発表されましたね。大好きな『これ描いて死ね』が受賞ということで、大変喜ばしい。とよ田みのる先生作品で未読のものは来月、集中的に読もうと思っています。4月は「とよ田みのる強化月間」だ!

マンガ外だと、今月は何と言ってもWBCの熱狂が個人的には凄まじかったです。

決勝ラストの「大谷翔平vsマイク・トラウト」の対決は、もう完全にマンガや映画のワンシーンのようでした。でも、そうだとしてもあそこまで劇的なラストは描くことは出来ないんだろうな。

村上の復活や正尚さんの活躍、ダルビッシュの献身、若手投手陣の台頭。どこを切り取っても「物語」があって、それらが想像を凌駕する瞬間に、画面越しとは言え、立ち会えたことに震えました。感動をありがとう。

『MAJOR』公式のフットワークの軽さもすごかった。

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