別れ
別れは突然にやってくる。なんの前触れもなく。
4年半の付き合いだった。高校卒業後、大学へ入学するため1人東京へ向かった時からずっといてくれたよな。
辛い時も楽しい時もそばにいてくれた。お前がいなかったら私は生活できていなかった。まさに私の生活を支えていてくれたよな。
しかし別れは突然に訪れた。
その日はいつも通りの日常だった。いつも通りに昼に起き、いつも通りインターネットの世界に潜る、そんな日常のはずだった。
瞬間、バキッという異音が室内に轟いた。
すわ、肉体がとうとう限界を迎えたか、と天を仰いだが、身長179センチ、体重65キロの鍛え上げられた肉体に異常はない(あるとすれば痩せ気味だということくらいだ)。
瞬時に室内に目を走らせる。
ビールの空き缶、解体を後回しにしているダンボール、ありえない形に折れ曲がった洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形).....。
そう、4年半もの間愛用していた洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)が、真っ二つに折れ曲がっていた。
洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)は、2つに折りたたむことができるタイプだった。理由は謎だ。しかし今の彼は長年の疲れ、過積載により逆方向に折れ曲がっていた。私だったら確実に死んでいる。もしくは配信のネタにしている。
私は突然の別れに感情が溢れ、(こっち方向に折れることもあるんだなぁ)と思った。
さっきまで生き生きとしていた洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)は意志を失ったかのようにだらりと垂れ下がり、まるで無機物のようだった。
洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)との思い出は沢山あり、すべてを書くことはできない。
例えば、洗濯物を干したこと、洗濯物を回収したこと、洗濯バサミが足りなくなり上に洗濯物を散りばめたこと、引越しの際に、自転車の荷台にアームを引っ掛け、運んだこと......。
意外と少なかった。以上が4年半の間、洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)と紡いだ思い出の数々である。
私は生涯、洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)と寄り添うことを決めようとしたが、さすがに破壊された洗濯物を干す円盤状の枠の下に大量の洗濯バサミがぶら下がったやつ(正確には円盤状ではなく長方形)を使い続けるのは無理だと判断し、ニトリへ走りましたとさ。おしまい。
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