【書評】『税務調査立会い年間200件!ギリギリを攻めたい社長のためのグレーな税金本』~合法的な"グレーゾーン"で税務戦略を極める~
年間200件もの税務調査立会いを行う気鋭の税理士・永江将典氏が、その豊富な実務経験から導き出した"合法的な"税務戦略の全貌を明かす必読の一冊を紹介します。
本書の真髄は、書面添付制度による税務調査リスクの低減から、小規模企業共済を活用した利ざや獲得、出張旅費規程の戦略的活用まで、法律が認める範囲内での最適な税務戦略を具体的に示している点にあります。特筆すべきは、各戦略の実践的な数値例や、実際の事例に基づく詳細な解説が豊富に盛り込まれていることです。税務調査での「逮捕基準」に関する衝撃的な実態など、著者だからこそ語れる貴重な知見も満載。経営者から税務の専門家まで、税務戦略の新たな地平を開く決定版といえます。
元国税調査官も認める「書面添付制度」の驚くべき効果
税務の世界には、意外にも「攻め」と「守り」が存在します。本書の著者である永江将典氏は、年間200件もの税務調査立会いを通じて、その両方を熟知している稀有な存在です。本書で特に印象的だったのは、「書面添付制度」の戦略的活用法です。
この制度を利用すると、なんと税務調査のリスクを約4分の1に抑えられるという驚くべき効果があります。しかし、相続税申告での利用率はわずか23.4%。この「知る人ぞ知る」制度の存在は、著者の実務経験なくしては決して得られない貴重な知見といえるでしょう。
知る人ぞ知る!「小規模企業共済」で実現する"合法的"な利ざや戦略
「年利1.5%で借りて、3.57%で運用する—これほど確実な投資はありません」と著者は語ります。この驚くべき投資戦略の核心は、小規模企業共済の契約者貸付制度にあります。
具体的な実践例として、著者は次のようなケースを紹介しています:
「毎月7万円を小規模企業共済に積み立てており、1年後、積立額84万円に対して67.2万円(約80%)を年利1.5%で借り入れ。この資金を年利3.5%が保証された外貨建て保険に投資することで、利ざやを得るイメージです。これを10年継続すると、利ざやだけで10万円以上の収入になります」
参考:https://liberaluni.com/insurance-topic
ただし、著者は注意点も詳しく解説します。外貨建て保険の場合の為替リスクや、中途解約時の元本割れリスクなどがある点は注意です。
「出張旅費規程」を活用した"完全合法"な資金移動術
著者は、適切な出張旅費規程の整備により、税負担なしで会社から個人へ資金を移動できる方法も解説しています。
例えば、「視察のための日帰り出張に対し、社長に日当2,000円を支給する」というケース。また、「東京-大阪間の出張で、実際の宿泊費が8,000円の場合でも、規程で定めた定額(例:15,000円)での支給が認められます。差額の7,000円は、非課税で受給者の手元に残ります」
意外と知られていない!税務調査における「逮捕基準」の実態
本書の最も衝撃的な部分は、税務調査での逮捕基準に関する解説です。著者は、自身の経験から「脱税額1億円」という一つの目安を示しています。
例えば、2024年12月の化粧品会社の事例では、所得1.2億円を隠し、脱税額約3,250万円で逮捕されています。
一方、5,100万円の脱税でも修正申告の対応をしえt告発のみで済んだケースもあります。
あくまでも参考ではありますが、逮捕基準は所得1億円レベルの脱税を念頭に置いておくのがよさそうです。
結論:税務戦略の新たな地平を開く一冊
本書の真価は、豊富な実例と具体的な数値に基づく解説にあります。著者の永江氏は、年間200件という圧倒的な税務調査立会い経験から、「グレーゾーン」を法律の範囲内で最大限活用する方法を、余すところなく解説しています。
出張旅費規程の整備と書面添付制度を組み合わせることで、より確実な節税効果を得られることや、小規模企業共済の利用と適切な投資戦略の組み合わせによる、持続可能な収益確保の方法など、実践的なアドバイスが満載です。
節税と脱税の境界線を明確に示しながら、合法的な範囲での最適な税務戦略を追求する—この一冊は、経営者から税務の専門家まで、幅広い読者に新たな視点と具体的な行動指針を提供してくれるでしょう。