歩行分析で重心をみる具体的なポイント
どうも!脳卒中の歩行再建を目指す中上です!
歩行を臨床でみるポイントとして、力学的側面を理解することは非常に重要となります。
これは効率的な歩行動作を獲得するためには重要な要素で、身体重心は支持基底面や床反力の観点から、歩行時の下肢関節に加わる力などを評価・分析する上でもとても大事な視点となります。
今回は歩行分析シリーズの第2段として、実際に重心を臨床場面ではどのように評価する必要があるのか?そして、その際に何に着目すべきかについてまとめてみました。
重心の偏位の原因なども含めた臨床で見る際のポイントにも触れていきますので、是非最後までお読みください!
それではスタート!
重心をみる際のポイント
そもそも人の重心とは一体どの位置にあるのか?
これは一般的に身体を各パーツに分けた時に(頭部・胸郭・上肢・下肢など)、それらの物体の各重心位置を合成し、その中点として同定していきます(これを身体重心:Center of Gravityといいます)。
そしてこの身体重心は、姿勢の変化によって重心の位置は刻々と変化するのが特徴です。
よくみられるのが、静的立位時の場合で、その時は仙骨の前方(第2仙椎の高さで骨盤の中央)と言われる部分に重心位置が位置するのですが、歩行などの動作を見る際には、さらにそれらを上半身重心と下半身重心という大きく2つの重心位置から考えていくことが重要となります。
上半身重心:第7〜9胸椎(肩甲骨下角:第7胸椎)
下半身重心:大腿1/2と近位1/3の中点
なぜ上半身・下半身と分けて考える必要があるかについては、歩行という動作はパッセンジャー(骨盤から上の上半身)とロコモーター(骨盤を含む下半身)といわれる2つの身体運動の機能的要素から考えることが一般的です。
そして、歩行ではこの上半身・下半身の2つの要素が体軸内での回旋運動として逆位相(右手が前にある時は左足が前に)の動きを呈すのが最大の特徴になります。
結果だけをみたときには、この上半身・下半身重心の合成重心を歩行ではみるのですが、どちらか一方に影響が加われば、自ずと合成重心にも影響を及ぼすため、臨床上では、2つの関係性から重心位置をイメージすることがとても重要となるのです。
では、実際にこれら上半身・下半身重心がどのように歩行に影響を与えるのかについて考えていきたいと思います。
歩行で考える左右への重心移動
歩行で考える重心移動には3つの側面から考える必要があります。
1.矢状面からみた重心の上下動の動き
2.水平面からみた重心の左右動の動き
3.矢状面からみた重心の前後動の動き
前回は1.矢状面からみた重心の上下動の動きに対する臨床のみるべきポイントについてまとめていきました。
↓前回の記事はこちら
今回はこの2.水平面の重心の動きを考えていくのですが、左右の動きの特徴は、上下や前後に比べるとその移動幅は小さく、実際には立脚中期での片脚支持の際にも支持基底面上に重心がのってないのが特徴です。
つまり、歩行という動的要素の中では静止姿勢のように支持基底面と重心が一致するフェーズがほとんどないということです(定常歩行として常に歩き続けている場合は)。
では、なぜこのように重心の左右移動が少なくて済むのかというと、前述したように胸郭の動きが中心の上半身、骨盤の動きが中心の下半身が逆位相の動きを行うこと、そして重心に対して前方への加速度が生じることによってそれが可能となります(前後加速度についてはまた別記事でまとめる予定ですので、よければフォローをお願いします)。
歩行で考える重心への力学的影響
これは人とチンパンジーを対象にした際の胸郭・骨盤の動きになるのですが、歩行中人は胸郭・骨盤が逆方向の動きをするのに対して、チンパンジーでは同側方向に回旋しているのがわかります。
では、この上半身・下半身が同位相(同じ方向に)ないし逆位相(逆方向)で回旋した際には重心はどうなるでしょうか?
これは直立2足歩行をする人と、チンパンジーなどの動物を例に考えるとイメージしやすいのですが、人は歩行中に左右への重心偏倚はそれほど大きくみられないのに対して、チンパンジーのように4足歩行(股関節が屈曲位を呈すような歩行)がメインの動物では、移動するたびに重心が左右へ大きくブレるのがわかります。
これらの重心偏倚が立脚期における股関節伸展、それに伴う前方推進力にも大きく関与し、左右への重心のブレは姿勢の崩れや不安定さを助長することで、歩行時の安定性に影響を与える可能性が示唆されます。
つまり、歩行介助などにおいても麻痺側下肢への支持性低下に対して、重心を過度に麻痺側立脚期へ移動させることは、歩行という観点からは逆に過負荷の刺激となり、麻痺側下肢へのより強い筋活動を要求する原因になるということです。
まとめ
臨床を見る上で重要なことは、この重心移動の軌跡を理解した上で、立脚側へ重心を移動させるのではなく、胸郭・骨盤としての上半身重心・下半身重心をコントロールしながら、逆位相の動きを作っていくことが重要
立脚期における重心移動としての力学的なメカニズムを把握するうえで、もう一つそれを可能とする神経システムの理解が必要
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引用・参考文献
1)Perry J. Gait Analysis, Slack; 2010
2)Nathan E , et al : Surprising trunk rotational capabilities in chimpanzees and implications for bipedal walking proficiency in early hominins . Nature Communications 6 , 2015
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