見出し画像

野球肩について 〜後方タイトネスに対する考え方〜

おはようございます(^ ^)

本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。

332日目を担当するのは理学療法士のゆーすけです。


野球肩における後方タイトネスにどう対応すればいいかわかならい人

「後方タイトネスってどの程度でよくないの?…。どのようにケアしていけばいいの?…。」

こういった疑問にお答えします。

★はじめに

前回のブログでは野球肩の基礎的理解として、野球肩の代表的な病態やピッチングフォームの肩関節への負担がかかりやすい相についてお伝えしました。
その中で肩後面のタイトネスから疼痛を引き起こすことが多く、一般的な野球肩の評価として原テストをご紹介しました。
今回は後方タイトネスはどの程度で問題なのか?
後方タイトネスをどのように考えていけばよいのかをお伝えしていきたいと思います。

★原テスト

まずは原テストとはどんなものかをお伝えします。

①Scapula spine distance
・肩甲棘内側縁・肩甲下角と脊椎棘突起の間の距離
・投球側が非投球側に比べ1㎝以上大きい場合を陽性

②Elbow extension test(ET)
・肩90°屈曲位・肘屈曲100°以上屈曲位からの肘伸展
脱力現象・筋力の左右差を認めるもの陽性

③Elbow push test(EPT)
・肩90°屈曲で腕を前方で組み肘頭を前方へ押す
・脱力現象・筋力の左右差を認めるものを陽性

④外転筋力評価

⑤外旋筋力評価

⑥内旋筋力評価(リフトオフ)

⑦Combined abduction test(CAT)
肩甲骨を固定しての肩関節外転可動域
肩甲骨を固定することにより頭に上腕がつくか
つかなくなると陽性

⑧Horizontal flexion test(HFT)
肩甲骨を固定しての肩水平内転可動域評価
肩甲骨を固定することで指先が床面につかなくなると陽性

⑨Capsular laxity
・Sulcus sign
・Apprehension test
・load and shift test
各テストで不安定性・不安感を認める場合は陽性

⑩Hyper external rotation test(HERT)
・徒手的に外転90°で最大外旋を加えその際の疼痛を評価
疼痛を認めるものを陽性
脱臼の既往がある場合は注意が必要

11 Subacrominal impingement test
・Neer
・Hawkins
・Ellman
いずれか一つでも疼痛を認めると陽性

この中で特に⑧と11に陽性を認めると後方タイトネスが考えられます。

★どの程度の後方タイトネスが問題なのか?

身体の柔軟性は個々人で異なり、原テストの⑧、11で陽性を認めたからと言って必ずしも問題なのか?

脳卒中や大腿骨頸部骨折などの一般的なリハビリ評価でも関節可動域制限や筋力低下がそのまま活動制限や参加の問題にならないのと同じで、身体機能低下と投球障害との見解は必ずしも一致しないと言われており、肩や肘の投球障害を有する者ほど、筋力や体格が大きかったという報告もあります。

このような報告から関節可動域や筋力測定による障害予測には否定的な報告もみられますが、非投球側との差異に着目した報告については肯定的な意見が多いです。

こちらは投球肩を有する高校野球投手の特徴を、関節可動域や筋力の非投球側との差異より分析されたデータです。

幸田仁志,高校野球投手における身体機能の非投球側差と投球肩・肘障害について 2018

関節可動域については陽性群と陰性群とも内旋角と水平内転角で角度が減少しています。
ここからわかることは肩の痛みがあるないにかかわらず、野球特に投手をしていると肩後方タイトネスは少なからずあるということです。
非投球側との差として10°程度あります。

しかし、陽性群の中で内旋角は非投球側と21°以上の差があります。

普段の評価の中で後方タイトネスは感覚的になっていることが多いですが、陽性群と陰性群ではこの10°の差が大きいことがわかりました。
投球では肩局所の問題と全身の連動性からの問題を考えていくことが必要ですが、前回もお伝えしたようにまずは肩局所の問題を評価できることが重要だと考えています。

★さいごに

いかがでしたでしょうか?
今回は野球肩の基礎的理解を踏まえた上で、後方タイトネスがどの程度だと問題かということについて考えてきました。
投球動作自体がそもそも肩関節へストレスをかけることになので、特により強いボールを投げ、他のポジションより球数をたくさん投げることが求められる投手では投球肩になる可能性が高く、また投球肩に至ってなくても後方タイトネスを有することが多いです。
評価の中で後方タイトネスは非投球側との差が重要で10°程度ではそれ以上タイトネスが進まないようケアを指導し、20°以上ある場合は積極的な介入が必要と考えます。

今回の内容が少しでも臨床へのヒントになれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

次回の臨床BATONは、一平さんです!
今回のテーマは「サッカー動作を紐解いていこう! 〜ドリブル動作をみるためのポイント③〜」です。
皆さんお楽しみに!
それでは、一平さんお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?