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肩関節疾患でセラピストがみるべきレントゲンのポイント

おはようございます(^ ^)

本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。

291日目を担当するのは理学療法士のゆーすけです。


肩関節周囲炎、腱板断裂患者様を担当した時にレントゲンで何をみていいかわからない人

「そもそも骨折ではない肩関節疾患でレントゲンをみる必要性ってあるの?…。レントゲンが何枚かあるとそれぞれで何をみたらいいかわかならい…。レントゲンしか撮っていないけど腱板断裂かわかるの?…。」

こういった疑問にお答えします。



★はじめに

今回は肩関節疾患のなかでも肩関節周囲炎と腱板断裂についてレントゲンで何を
みるべきか
レントゲンの見方について考えていきたいと思います。
今回イメージする患者様像として外傷性の腱板断裂ではなく、明らかな原因はなく肩が痛いから病院を受診したら肩関節周囲炎もしくは腱板断裂と診断されたというイメージです。
肩の痛みや可動域制限でADLが制限されいるような患者様です。このような患者様では自動挙上が90°に満たないケースも珍しくありません。

リハビリ場面では問診、関節可動域等の評価から開始していくと思いますが、皆様はここにレントゲンを評価の一項目として入ってますか?

何をどうみていいかわからないし、リハビリ評価としてどう使えばわからないからみないという方も多いのではないでしょうか。
自分自身も以前はほとんどレントゲンをみていなかったのですが、みれるようになると痛みを考える時の判断材料や患者様への説明する時の根拠となり、今では評価の一項目となっています。普段ほとんどレントゲンをみないという方もみるポイントがわかれば難しくないので、このブログを読み終わった時にレントゲンをみてみようと思ってもらえると嬉しいです。

★正面から読み取る情報

肩関節周囲炎とは、「関節を構成する骨、軟骨、靭帯や腱などが老化して肩関節の
周囲に組織が炎症が起きることが主な原因と考えられています。(日本整形外科学会)
このように肩関節に痛みがあるということは、関節周囲組織・筋組織に何らかの損傷がある可能性があります。

レントゲン画像は2枚〜4枚撮影されていることが多いです。
肩関節は可動範囲が広い分、損傷される部位も広くレントゲンでもそれだけ確認するべきポイントがあります。撮影方向はそれぞれに見えやすい部位の特徴がありますので一つずつ解説していきます。
まずは正面からみていきましょう。

「正面」は前額面方向から撮影された画像です。

この画像から確認していきたいポイントとして
①肩峰下の骨棘の有無
②肩峰下と上腕骨頭の空間の有無

になります。

上記のレントゲン画像は肩の痛みで受診され、「肩関節周囲炎」の診断を受けた方の正面像です。

正面

確認ポイントから
①肩峰下の骨棘の有無 →無し
②肩峰下と上腕骨頭の空間の有無 →有り

この所見からは骨・関節には異常所見無しという結果です。

★2つの正面画像はどう違うの?

画像の撮影方法は医師からの指示によるのでそれぞれにはなりますが、正面にも実は2種類あります。

上の2つの画像は同じ人の正面画像です。
似たような画像ですが違いはわかりますか?

一つ目の画像では上腕骨頭の関節面と肩甲骨窩が重なりあって見えづらくなっているのに対し、2つ目の画像では上腕骨頭の関節面と肩甲骨窩が重なり合わず見えやすくなっています。
2つ目の画像の方が正面でもやや内側から撮影されいて関節窩の状態を読み取りやすくなります。

正面②

この画像では
③関節窩の上下の骨棘の有無が確認できます。

症例様の画像では骨棘はありません。

★スカプラY

スカプラY?何それ?聞いたことないという方も少なくないのではないでしょうか。
スカプラYは肩関節疾患において非常に重要なレントゲン所見になります。

スカプラYとは、肩関節側面画像肩峰烏口突起肩甲骨外側縁によって「Y」字に投影されるため、スカプラYと言います。

この画像では肩峰と烏口突起で形成される④烏口肩峰靭帯の骨棘の有無を確認します。

では、症例様の画像をみていきましょう。

スカプラY
スカプラY

画像からは骨棘は認めません。

以上、4つがレントゲンから確認すべきポイントです。
この症例様では骨・関節レベルでは疼痛を起因する所見がないことが確認できたので、次に評価するポイントとしては筋性を考えていくことになります。

参考にもう1症例様のレントゲンをみていきましょう。

正面


正面2


スカプラY

4つのポイントから所見は確認できましたか?


1つずつみていきましょう。

正面

①肩峰下の骨棘 →有り
②肩峰と上腕骨頭の空間の有無 →狭い


正面2

③関節窩の骨棘の有無 →有り


スカプラY

④烏口肩峰靭帯の骨棘の有無 →有り

以上、4つのポイント全てで異常所見があったので骨・関節レベルでの
問題があります。
ちなみに、本症例様は腱板断裂の診断で手術に至っています。
腱板断裂はさらにMRIで精査し確定診断に入っていきますが、レントゲンでのポイントとしては②の肩峰と上腕骨頭の空間が狭いと腱板断裂の可能性が疑われます。

★さいごに

いかがでしたでしょうか?
ポイントがわからずに何気なくみるよりも、撮影方向の意味やそれぞれでの確認ポイントがわかると少しみてみようと思ってもらえたのではないでしょうか。
自分自身もレントゲンをみていない頃は、疼痛が消失していく方となかなか消失しない方の違いがわからず問診と触診だけで判断するしかありませんでした。
実際に1症例目の方は手術の必要性はなく、1ヶ月も経たないうちから疼痛は大幅に軽減し可動域も右肩上がりに改善していきました。一方で、2症例目の方は可動域は改善するものの、疼痛は軽減と増悪を繰り返し消失しきらずに手術となりました。

レントゲンから紐解くと、その一つの要因として骨・関節レベルでの炎症の原因の残存があったように思います。ここを押さえておくとガンガン可動域訓練を行うよりも、関節に負荷のかからないADL指導を多くしたり、骨頭の上方偏移に留意した関節運動といった治療選択になってきます。

逆に1症例目の患者様では筋性の制限がメインと考えられ、肩関節周囲炎による炎症期が終焉するとともに積極的な関節可動域訓練やセルフでのストレッチを指導すべきと判断することができます。

レントゲンからリハビリにおける評価・治療に展開していけると私自身思っています。
少しでも臨床へのヒントになれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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