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大腿骨転子部骨折術後のレントゲンで確認すべきポイント Part①
おはようございます(^ ^)
本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。
214日目を担当するのは理学療法士のゆーすけです。
皆様の臨床に少しでもお役に立てるようなブログを投稿していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
目次
・大腿骨頸部骨折と転子部骨折の違い
・術前レントゲンの確認ポイント
・整復の目的
・術後レントゲンの確認ポイント
・さいごに
大腿骨転子部骨折術後で早期から全荷重ができる患者様と部分荷重から始まる患者様の違い分からない人
「人工骨頭術後は全荷重から開始するのに対して、転子部骨折術後では全荷重だったり部分荷重だったりするのはなぜ…。そもそも転子部骨折に対する整復ってどうなってたらいいの…。整復の良し悪しを判断するためにレントゲンをどう使えばいいの…。レントゲンの具体的な見方を教えて下さい。」
こういった疑問にお答えします。
★大腿骨頸部骨折と転子部骨折の違い
まずは頸部骨折とはなんぞやというところから簡単におさらいしていきましょう。
大腿骨頚部骨折は大腿骨頚部で起こる骨折であり、股関節を包む膜(関節包)の中で生じている。股関節付近で生じる骨折には大腿骨頚部骨折の他に大腿骨転子部で生じる大腿骨転子部骨折があり、合わせて大腿骨近位部骨折と呼ぶ。とされています。
![転子部骨折](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53132865/picture_pc_2e93741e4b0ad8eb11aebbc2c300a0ba.png)
転子部骨折は青色部分です。
頸部骨折はその上の部分になります。
頸部骨折は関節包内で生じる骨折で、骨癒合が得られにくい骨折です。頸部骨折は一般的に骨癒合が得られにくいとされていますが、その理由として関節包内骨折のため仮骨形成に必要な骨膜が存在しないこと、関節液があるため血腫が形成されにくいこと、骨頭への血流が乏しく骨頭は阻血状態になることなどが考えられます。合併症として骨頭壊死や偽関節を生じるリスクがあります。
一方、転子部骨折は関節包外で生じる骨折で、骨折部の血流が十分に保たれているため頸部骨折より骨癒合が得られやすいです。そのため、合併症として骨頭壊死や偽関節は起こりにくいとされています。しかし、Evans分類の不安定型では、骨折部の変形(内反、後捻)を生じるリスクがあります。
頸部骨折では骨癒合が得られにくく骨頭壊死や偽関節が生じるリスクが高く、Garden分類で転位が少ないstageⅠ・Ⅱ以外は人工骨頭置換術になります。そのケースでは術後早期より全荷重が可能となるので、荷重練習で困ることはないかと思います。
頸部骨折後のレントゲンの見方については、前回・前々回でのブログでも書かせて頂いているので是非ご覧ください。
転子部骨折のリスクは骨折部の変形(内反、後捻)であるので、折れ方をまず把握することが大切です。
★術前レントゲンの確認ポイント
転子部骨折は上記で述べたように大腿骨頸部より下で折れている骨折です。
つまり、大転子が骨折線に入ってきます。1点目は大転子の割れ方です。骨折時に中臀筋に引っ張られて上後方へ転位していることや大転子が骨片として割れていることがあります。大転子の状態によってある程度術後の中臀筋トレーニング開始のタイミング決定してきます。
2点目は内反の程度です。転子部骨折を骨頭骨片と骨幹部骨片の関係としてみていきます。その名の通り、骨頭側にある骨片を骨頭骨片、骨幹部側にある骨片を骨幹部骨片と言います。転子部骨折では骨折時に内転筋に引っ張られることにより骨幹部骨片が内側に転位していることがあります。この程度が強いと術後も内反のリスクも高まってくるので荷重に関わってきます。
では、実際のレントゲンで確認していきましょう。
![スクリーンショット 2021-05-26 6.49.35](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53135548/picture_pc_18a4e38342756a5aaf9a130a92e3d1c2.png)
今回の骨折では大転子の骨片が割れており、骨幹部骨片が内側へ転位していることがわかります。
では、手術によってどのように整復されていくのでしょうか。
そのために整復の目的を理解しておく必要があります。
★整復の目的
整復の目的とゴールを理解しておくことは術後のレントゲンで確認すべきポイントがわかると共に術後のリハビリのプロトコールの理解に繋がるので非常に大事になります。
まず1点目は体重を支えられる脚にするということです。これは骨頭骨片と骨幹部骨片が体重を支えられる関係性にすることがゴールになります。折れ方として転位がない場合を除いて、転位している際は骨幹部骨片が骨頭骨片に対して内側へズレていることが多いです。この状態で荷重していくことは困難です。体重を支えられる脚にするために、骨頭骨片と骨幹部骨片の内側皮質が一直線にするように整復します。もしくは、骨頭骨片の内側皮質が骨幹部骨片の内側皮質に対して正中側に少しだけ張り出すように整復される場合もあります。なぜならば骨幹部骨片が内側へ転位していくことが多く、整復される時点で骨幹部骨片が骨頭骨片より外側へ張り出していると荷重を進めた際に転位の可能性が出てしまうためです。
2点目は大転子の位置を整え中臀筋を発揮させやすい状態にすることです。大転子の位置が飛んでいたり、上方に変位していると中臀筋の発揮困難になるためできる限り、元の位置に戻すことになります。
術式はEvansの分類から選択されるのが一般的で以下の2種類がメジャーです。
![Evans分類](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53132900/picture_pc_bea8bc06110605b33064b8445fa99ad1.png?width=1200)
転子部骨折の手術①:CHSプレートとラグスクリューによる固定が特徴的で安定型への適応となります。
転子部骨折の手術②:γネイル髄内釘とラグスクリューによる固定が特徴的で安定型・不安定型両方が適応となります。
★術後レントゲンの確認ポイント
術後のレントゲンです。
今回はγネイルでの術式となります。
![術後レントゲン](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53132905/picture_pc_a0ec6e7e3e00c7c89ad0b8fc33093cb8.png)
確認していくポイントとしては、骨頭骨片と骨幹部骨片の位置関係が一直線になっているかどうかです。
![術後レントゲン 解説](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53132912/picture_pc_0e0fdb18b85ecbe1e8522d542b2e1511.png)
術後のレントゲン画像からは骨頭骨片と骨幹部骨片の位置関係がわずかではありますが一直線がズレていることがわかります。術直後からの全荷重では転位の可能性があります。
大転子の骨片は整復不十分であり早期から中臀筋トレーニングを開始することが困難であることが予測されます。
実際の医師からの指示としては、2週間免荷可でその後のレントゲンで荷重開始の検討、中臀筋トレーニングは6週間後から開始との指示でした。
★さいごに
人工骨頭置換術後では早期荷重が一般である為荷重で迷うことは少ないと思いますが、γネイルなどの骨接合術後では症例によって早期から全荷重かあるいは部分荷重となり、どういった要素で決まるのだろう、医師からの指示に従うのみで患者様に上手く説明できないなどの悩みもあるのではないでしょうか。荷重訓練や歩行訓練を直接的に行うセラピストとしてそこを理解しレントゲンからある程度判断することができれば患者様への説明の仕方や信頼の築き方も変わってくると思います。今回は基本的なレントゲンの見るポイントをお伝えさせて頂きました。少しでもレントゲンを見る時のヒントになれば幸いです。
次回は、術後から経過した際のレントゲンの見るべきポイントについてお伝えしていきたいと思っていますのでまた是非臨床BATONに足を運んでください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回の臨床BATONは、脳外臨床研究会 触診講師・触診アシスタントの橋本一平さんです!
今回のテーマは「家に帰りたいを叶える為に必要な動作を考える〜またぎ動作をみる上で必要なポイント〜」です。皆さんお楽しみに!それでは、一平さんお願いします!
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