見出し画像

田舎のデイ起業セラピストが考える「はじめてのお試しデイサービスでの評価経験」

本日も臨床BATONにお越し頂きありがとうございます。
225日目を担当させて頂くのは、5月1日からオープンした私のデイサービスがおかげさまで徐々に利用者が増えてきており、7月からは看護師をパートでいれて、定員を増やしていこうと計画を立てて動いている田舎のデイ起業セラピストことPT貴田農士です。

さて、今回は「はじめての○○」シリーズ第3弾。
(評価月間に無理矢理はじめてシリーズをぶちこむ荒技・・・)
「はじめてのお試しデイサービスでの評価経験」というテーマで、私が開設したデイサービスにお試し利用しに来て頂いた方々への初期評価を含めた関わりの経験と感想を投稿させて頂きます。
急性期や回復期病院などとは違った、利用者自身(またはその家族)が施設を選ぶ、そして辞める選択肢がある生活期における初期評価や契約していただくための関わり、仕組みなどを私の経験を踏まえながらお伝えできればと思っていますので、ご興味のある方は、お時間を少し頂きご一読頂けると幸いです。

・お試し利用とは

まず、お試し利用とは、なんでしょうか?

これは、病院などを退院し自宅復帰した後に、通所サービスを利用するためのお試しのことです。
私の施設では、基本的には半日(約3時間)のお試しを実施しています。他の施設がこのようなお試しを行っているか、どのくらいの時間行っているかはあまり調査していませんが、いわゆる無料お試しという類いのものであり、最近では自費リハビリでも初回60分無料お試しなどの広告を目にすることもあると思います。
病院勤務では非常に現実味が無いことかもしれませんが、生活期ではあるあるだと思いますし、もっというと、サービスを提供する仕事、業種においてはある程度当たり前な手続きだと思います。

病院の場合は、すでに入院した後に初期評価があるのが当たり前だと思いますが、通所サービスや自費リハビリなどに関しては、契約前に初期評価、そして介入をしなければならないということがあり、このことに関してはプレッシャーもさることながら考えるべき点、意識しなければいけない点も非常に多いと思っています。
(例えば、その空間の雰囲気、物の配置とか清潔感とかスタッフのユニフォーム、挨拶とか接遇とかもより意識して考えます)

私は病院勤務時代から初期評価での関わり、接遇、説明には特に気をつけていましたし、治療もして効果、結果を初日で出すと決めて関わらせて頂いていましたが、すでに入院しているという事実があったので、それに甘えていた部分があったかもしれないと今生活期でお試し利用を経験して思います。


・生活期の特徴、回復期時代との違い

最初にもお伝えしましたが、生活期における特徴であり、私が今まで回復期病院で10年以上勤務させていただいていた時との大きな違いは、利用者、またはその家族に施設を選ぶ権利、辞める権利があるということです。

回復期勤務時代には、勤務していた病院を自ら選んできた利用者さんも確かにいました。
しかし、地域に回復期リハ病院が多くあるわけでもなく、選択肢も少ないです。
実際当時の患者さんから聞くと、急性期のドクターやナースに勧められて・・・とか家族が勝手に決めたとかが多かった印象です。そして、途中で自主的に退院、転院する方もとても少なかったです。
ぶっちゃけると、どんなに病院が嫌でもリハビリがたくさん受けられるのは、この回復期病院だけ、今の時期を逃したら今ほどリハビリが出来ない、選んでくれた家族に迷惑かけたくない、今の身体機能、能力で自宅に帰ってしまうと家族に迷惑かけるから我慢して入院しておくなどと思っていた方も中にはいたと思います。
(さらにぶっちゃけると担当セラピストを変えて欲しかったという声も聞いたりします・・・)

そして、もう一つ生活期での特徴は、選ぶ理由が様々であるということです。
(顧客、デマンドの細分化というべきでしょうか)

例えば
・退院後も効果的なリハビリをもっと継続したい
・もっと出来ることを増やしたい、目標を達成したい
・もっとリハビリをやってほしい(受け身)
・今の機能、能力を維持したい
・他者交流をしたい、(家族が)他者交流させたい
・社会参加したい、(家族が)させたい
・認知症の悪化を防ぎたい
・家で動かず、生活が活発ではないので、それを改善したい、(家族が)させたい
・筋力、体力が低下してきたから運動して欲しい
・預かって欲しい(レスパイト)
・家で入浴が難しいからデイサービスで入ってきて欲しい
・デイケアは単価が高い、人数が多すぎて嫌だから、こじんまりとした通所施設にはいりたい
・きれいで新しい施設にいきたい
・自由に自主トレが出来る施設に行きたい
・自立したい、自立している動作を施設の都合、転倒予防のため制限されたくない
・自分で着替えや入浴をやりたくないからやってもらいたい
・人と話したい、外に出たい

などなど、私がこの1ヶ月半経験してきた中でもこれだけのことは感じてきました。

つまり、評価に関しては、上記のような、なぜここを利用してくれようとしているのか?何のために利用しようとするのか?誰が利用させたいのか(家族のデマンド)?ということや今までの通所サービスの経験は?比較する対象があるのか?などを事前に調べておいたり、ご本人や家族、ケアマネに聴取したりしておく必要性もあります。


また、私がひとつしんどいと思ったのが、いわゆる「回復期の呪縛」です。
(呪術廻戦みたい)

これは、回復期病院で受け身のリハビリをこれまで数多く行ってきた場合や患者教育、病態説明、今後希望の持てる予後予測や説明などが全くされていない場合、連携が全く取れていないなどです。この呪縛により、介護保険領域においてはリハビリの資源が時間的にも物品的(電気刺激や装具など)にも回復期や病院入院の時よりも少なくなるということを全く理解されてきていないことがあり、積極的に自らの身体に向き合い、自己で試行錯誤しながら主体的に目標を持ってリハビリ(自主トレも含む)をしていく方法や精神が培われていないことが往々にしてあることを実感しています。

・お試し利用の成功率

色々お伝えしてきましたが、ここで私のデイサービスのお試し利用の成功率(ここでの成功率とは、お試し利用から契約に至った利用者さんの割合)について少しお伝えします。

6月20日までで約7~8割です。

これが高いのか低いのかも分かりませんし、正直契約まで至らなかった方々になぜ選んでもらえなかったかまで聞き取ることも出来ないので、この結果の解釈はかなり難しいです。そして、この結果から何かを改善するには情報が少なすぎるのも否めませんでした。

ただ、確かに契約までに至らなかった方々のお試し時の反応、表情や私の手応え感はあまり良いとは言えませんでした。

いわゆる商売には、「期待値」と「満足度」の関係があるとされており、あまりにも「期待値」を上げすぎるとその期待値を超える「満足度」を経験させてあげないと利用(ここでは契約)やリピーターには繋がりづらいというものです。
いつも並んでいて繁盛しているラーメン屋で2時間待ってやっとラーメンを食べることが出来たのに、意外と美味しくなかった、想像よりたいしたことなかったみたいな感じです。
(期待値が高すぎて、満足度が思ったより低い。だったら汚い上にあまり混んでないけど、それなりにうまいラーメン屋の方が良い場合もある)

私のデイサービスの広告として、那須塩原市初の理学療法士が開設したデイサービスであり、回復期病院で10年以上の経験がある理学療法士が常勤、脳卒中を専門に勉強、セミナー講師歴もありなどを掲げていて、「期待値」を煽るような広告を同じ地域のデイサービスと比べて明確にアウトプットしています。
ただ、さきほどの回復期の呪縛もありますし、脳画像などの情報もさることながら、医療的情報も少ない、というかほとんど無い状況でお試し利用していただくことが多いです。(脳卒中という病名のみ、下手すれば整形とかでも術式すら書いていない、そしてお試しだから個人情報の観点からケアマネがあまり情報開示してくれないなど)
そして、個別介入は20分、(初期介入なのでコミュニケーション含め40分ぐらいはやることはありますが)という短い時間の中で、その「期待値」を超える「満足度」を提供する難しさを現在進行形で実感しています。
(特級クラスの圧倒的治療技術があれば、違うのかもしれないですが・・・)

・「評価」より「信頼」「信用」「安心」

上記のような経験を実際してきて、私が今のデイサービスのお試し利用で一番重要だと感じていることは、「評価」することよりも「信頼」「信用」「安心」を感じてもらえる為のラポール形成だと思っています。

ここから先は

2,231字
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?