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片麻痺の『変形性股関節症の自主トレ』

お疲れ様です!はらリハです!

本日は…
変形性股関節症のリハビリテーション」について解説していきます。

当事者に向けての投稿です。


はじめに

 脳卒中後遺症の中でも、疼痛に悩む方は非常に多いです。

 脳卒中後は、病前とは異なる方法で身体を動かすため、麻痺側はもちろん、非麻痺側にも偏った負担が加わることで、疼痛につながるケースが多いです。

※ 脳卒中後遺症というよりは、症状(麻痺/感覚障害/高次脳機能障害)が原因で起きる二次的合併症の考えによる疼痛のケース

 その中でも、本日は「股関節の疼痛:変形性股関節症」について説明していきます。

 この股の痛みは「反り腰/内反尖足」のケースで生じやすく、支えるときに過度な反り腰や足先が内下方向に曲がる影響が股関節への負担となり、疼痛に繋がります。

変形性股関節症とは??

 変形性股関節症は、股関節の様々な原因で、股関節を保護する軟骨の変形、摩擦など「股関節の破壊」が生じることで、股関節を滑りやすくする骨の形状が棘状(骨棘)になる病気です。

※ 大腿骨の受け皿になる「臼蓋」と「大腿骨頭」が変形する進行性の疾患
※ 診断:レントゲン、CT、MRI、動きと痛みの評価

 一度損傷した軟骨、骨を元通りに改善させることは困難であり、症状が進行すると最終的には手術(骨切り術や人工関節の置換術)が必要になります。

 そのため、股関節の負担を軽減させ、進行を防ぐ/状態を維持させる必要があります。

 その方法を伝える前に…

 なぜ、片麻痺の方が出現しやすいのか解説します。

変形性股関節症になりやすい原因

 変形性股関節症は重量物作業が最も危険因子になると報告されています(日本/欧米)。

 【一般的な要因】
◉ 先天性股関節脱臼
◉ 臼蓋形成不全
◉ 上記の疾患による関節損傷
◉ 加齢
◉ 肥満
◉ 重いものを持っての作業(重量物作業) など…

 欧米では、肥満も影響があると報告していますが、日本では明確な関連は発見できていません。

※ 変形性股関節症は先天性の原因もあります。

 では、片麻痺後に変形性股関節症になる場合、立ち仕事が多くなるわけでも無いのに発症するのはなぜでしょうか?

 それは、脳卒中後遺症後は『重いもの=自身の身体をうまく支えることができていない』ことが原因かもしれません。

重いもの=自分の身体を支えられていない?

 突然ですが、『コア・スタビリティー』という言葉を聞いたことがありますか?

【コア・スタビリティー(Core stability)】
◉ 体幹周囲を取り込む筋群の同時収縮のこと
◉ その筋肉は以下、4つの筋肉から構成
多裂筋:背部に位置
腹横筋:腹部の前方に位置
 横隔膜:腹部の上方に位置
 骨盤底筋:腹部の下方
◉ 役割:体幹の安定性を担う
 腹圧を高めて、脊柱を安定させることで、基本姿勢である臥位、座位、立位だけでなく、歩行や階段、高いところから物を取るなど、様々な場面で姿勢を安定させるために必要不可欠な要素

 簡単に説明すると、座位や立位などの姿勢を安定させる働きが「コアスタビリティ」が担っている、ということです。

 少し詳しく説明すると…

 立位姿勢では、背骨に対して頭部や胸郭(胸)が前方に存在しており、脊柱を前に倒す働きが生じています。

 それは、立位姿勢を取るだけで常に前方に倒れるような不安定な状態であることを意味しており、この不安定な脊柱を安定させるために『コアスタビリティ』が必要になっています。

※ コアスタビリティ以外にも、関節包や靭帯など、姿勢を保つために必要な構造はあります

【なぜコアスタビリティが働くと脊柱が安定するの?】
コアスタビリティを構成する4つの筋肉が同時収縮することは、肋骨下部〜骨盤間の間の腹圧が上昇することで、脊柱を垂直方向に伸展(身体を伸ばす反応)させる働きが起きることで脊柱が安定する。
イメージは、肋骨下部〜骨盤の間にボールがあり、コアスタビリティが働くことで、 ボールの圧が高まり、全体を押す力が働き、その押す力が身体を伸ばす方向へと加わり、前方に移動しやすい頭部と肋骨の位置をその場で保持することができる。

 つまり、姿勢を保つためにはコアスタビリティは重要である、ということです。

 それに対して、脳卒中後遺症の方は『自身の身体をうまく支えることができていない』=「コアスタビリティが破綻する」ことで、身体を支える機能が不十分になり、それを補うために、股関節や腰など、一部の関節に負担がかかることで、疼痛に繋がる可能性があります。

 それを改善させるためには、コアスタビリティの使い方を覚える必要があります。

 それを知る前に…

  一般的な変形性股関節症の治療について解説します。

変形性股関節症の治療(保存療法)

 股関節の変形状況や痛み、動きに合わせて医師が治療方法を選択します。

 軽症の場合は、保存療法(手術を行わず)として…

 ◻︎ 患者教育
 ◻︎ 運動療法
 ◻︎ 薬物療法


 保存療法の限界が来たら手術の流れになります。

⏩ 引用文献
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/osteoarthritis-of-the-hip/osteoarthritis-of-the-hip.pdf

◻︎ 患者教育の効果は?

推奨:GradeA(強い根拠に基づいている)
変形性股関節症に対する患者教育は、病識の向上などに有用であり行うべきである

変形性股関節症 診療ガイドライン 2016

 ここでは、

・股関節の解剖
 ・股関節症の解説 
 ・生活指導(体重管理)
 ・運動指導(平地歩行)
 ・治療法の解説


 などが含まれます。

杖やインソールを使うことで股関節の負担を減らすことも有効ですが、やってはいけないことも把握しておくことが大切です。

【やってはいけないこと】
◉ 股関節を深く曲げすぎる、広げすぎる
◉ 長時間歩く
◉ 体重増加
◉ ジャンプやダッシュのような激しい運動
◉ 全く動かない
◉ 痛みを我慢してストレッチ

 このような股関節に負担をかけ続けることは避け、痛みのない範囲で動くことを心がましょう。

◻︎ 運動療法

推奨:Grade B(中等度の根拠に基づいている)
運動療法は、短、中期的な疼痛の緩和、機能の改善に有用であるが、長期的な病気進行予防に関しては不明である

変形性股関節症 診療ガイドライン 2016

 運動療法は…

・有酸素運動:ウォーキング、エルゴバイク
 ・筋力増強訓練:
腸腰筋/大殿筋・中殿筋/外旋筋/内転筋
 ・水中運動:
水中ウォーキング

 が推奨されています。

 水中運動では、プールでのウォーキングは有効で、浮力により股関節への負担が軽減されるため、屋外での歩行よりも効果的です。

※ 平泳ぎは避けましょう(股関節を大きく開くため)

◻︎ ストレッチは意味ある?

 OARSIガイドラインによるとストレッチは…

個人にあわせた柔軟性、筋力、筋持久力を向上させる運動療法が推奨される
主な目的は、股関節の可動域や安定性向上、大腿部の柔軟性向上である。短・中期的な痛みや機能の改善に有用とされている

膝、股関節、および多関節変形性関節症の非外科的管理のためのOARSIガイドライン

 2019年の海外のガイドラインには上記の報告されています。

 つまり、股関節のストレッチで筋肉を柔らかくすることで痛みの軽減に効果がある、ということです。

 もう少し細かく説明すると…

 「目次:変形性股関節症になりやすい原因」でも説明した通り、偏った姿勢になり、股関節に負担がかかることで疼痛に繋がるため、ストレッチを行うことで、股関節の動きがスムーズとなり、股関節にかかる負担を分散させることで、疼痛が楽になる、ということです。

 ただ、以下のケースの場合は、ストレッチは危険です。

・痛みが強い、動かすだけで股関節が痛む
 ・骨の変形が強すぎる
 ・ストレッチをした後に痛みが増す


 このような場合は、ストレッチはやらない方がいいです。

◻︎ 薬物療法

推奨:Grade B(中等度の根拠に基づいている)
・非ステロイド性抗炎症薬は、短期的には疼痛の緩和に有用であるが、長期間の投与には慎重を要する
・アセトアミノフェアは、短期的には疼痛の緩和に有効である
・弱オピオイドは、短期的には疼痛の緩和に有効である

変形性股関節症 診療ガイドライン 2016

 痛みが強い場合に薬物療法を行います。炎症を抑えて痛みをコントロールするために使うので、根本的な治療ではないことを理解しましょう。

 日常的に薬を使わないと我慢できない場合は手術療法を進められることが多いです。

変形性股関節症の治療(手術)

 以下の病院で紹介している説明がとてもわかりやすいです。

 手術のタイミングは…

 ・日常生活に大きな支障をきたす
 ・痛みが強くて動くことが困難になる
 ・股関節を庇って膝や腰に耐えがたい痛みをきたす

 もし、このようなサインが出る場合は、保存療法から手術療法に切り替える時期かもしれないので、担当医師に相談して、手術のメリット/デメリットを確認して、最終的な決断をしましょう。

自主トレーニングの紹介

 最後に自主トレーニングの説明を行います。

 変形性股関節症でアプローチしなければいけない箇所は以下になります。

【変形性股関節症でアプローチすべき箇所】
1)姿勢を安定させる身体の使い方

 ・股関節の負担を軽減させるために、どの部位を意識して日常生活を送るか?
2)動きが乏しい股関節の可動性を確保
 ・股関節を後方に動かす(股関節伸展)
 ・股関節を外に広げる(股関節外転)
 ・股関節を内側に捻る(股関節内旋)
 ・骨盤を起こす(骨盤前傾)
3)筋力増強が必要な筋肉
・腸腰筋
・大殿筋・中殿筋
・外旋筋(外旋六筋)

※骨盤前傾は股関節の不安定性を防ぐための代償として捉えられるが、ここを改善させようとすると、股関節の疼痛を増強させる恐れがあるので、過度な骨盤前傾は推奨しないが、ある程度は骨盤前傾が必要

 では、1つずつ解説します。 

1)コアスタビリティを高める

 コアスタビリティを高めるには、力の入れる感覚も大切ですが、お腹に力を入れるというよりは、力の入りやすい姿勢を覚える、感じ、それを普段の生活で発揮させることが重要です。

 下記の姿勢、順番を参考に、コアスタビリティを感じ、その感覚を座位、立位、歩行の中で試していきましょう。

ニュートラルポジションのセッティング方法

2)体操/ストレッチ

 回数:20回〜30回 2〜3セット

 上記は目安なので、痛みが無い範囲、回数で行いましょう。

3)筋力トレーニング

 回数:20回〜30回 2〜3セット

 上記は目安なので、痛みが無い範囲、回数で行いましょう。 

※ おまけ

終わりに

ここまで、読んで頂きありがとうございます。
 最後に、脳卒中後遺症の改善に向けた自主トレメニュー(有料500円)を紹介します。

 上記で説明している通り、 

 「病院でやっていたリハビリ」と「本来回復に必要なリハビリ」

がズレていることが非常に多いです。

 よく聞くのが「原因は筋肉」という話。

 筋肉トレーニングも必要ですが、よくよく考えると根本的な問題って脳じゃないですか?

 だって脳の損傷なんですもん・・・

 脳の回復に必要なリハビリしないといけないじゃないですか。

 そこをピックアップした自主トレを提供しています。
 なぜ自主トレで回復するのか・・・

 根本的な問題である脳の問題に対して「脳と手足の神経の繋がりを作るリハビリ」を根源に作った自主トレメニューだからこそ「改善する」がついてきます。

 根本的な問題に着目したメニューなら回復も見込めると思いませんか?

 今よりも10歩も20歩も先の自分になるためにも、使えるものは何でも利用しましょう。

 内容は大きく分けて3つです。
 ☑︎ 病態、症状の理解
 ☑︎ 病態、症状の原因
 ☑︎ 自主トレメニュー
 となっています。
 病態を理解することで、なぜ自分がこのような状態になり、どこに問題があり、どこを気をつけることでその症状が緩和するのか、図や写真を使いながら分かりやすく解説しています。
 全く動かせない方から、症状が軽いけどうまくいかない方まで、必要な機能的要素と脳科学的な知見を併用したメニューになっています。
 根本的な問題の解決をテーマに、最高の技術と知識をフル活動させて作った自主トレメニューです。

 販売してから既にnote経由を合わせて50件以上、おかげさまで好評を頂いています。

 500円で購入できますが、安価で買えるような自主トレメニューではないです。

 一人でも多くの方が麻痺のない生活に少しでも戻れるように願いを込めて作りました。

 ぜひ、使って見てください。

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