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運動失調に対して運動イメージを活用

お疲れ様です。セラピストのはらリハです。

本日は…
運動失調に対して運動イメージを活用」についてお話します。

はじめに

みなさんは「揺れる」経験をしたことがありますか?

例えば、陸酔いなんかは有名だと思います。

長時間船に乗り、陸に戻るとまだ船に乗っているように揺れているように感じる現象です。

なぜこの様なことが起きるのかというと…

船が常に揺れている中で、揺れに順応し、その環境に一度慣れると、長年生活していた陸でも揺れている時と同じ様に感覚情報は意味づけを行います。

つまり、各感覚モダリティから入力された感覚を統合し、いま現在の外部世界との相互作用をおこなった結果「陸だから揺れているのである」という意味づけをする結果、陸でも「揺れ」を感じます。

運動失調では「自己身体が揺れる」状態であり、調節を失うことから運動の出力やタイミング、感覚との関係性低下、フィードバックやフィードフォワードの破綻などが生じ、身体が揺れます。

上記で述べた通り、身体が揺れるという経験できますが、それは「特別な環境、状況」に限られ、日常生活では経験しません。

脳卒中発症に伴い、身体が揺れる中で生活するために、リハビリは何ができるのかを考えてみましょう。

揺れを気にする生活とは

例えば、首を寝違えたとして、その日は一日中首の痛みを気にして生活していまうと思います。

他にも、人差し指を切ってしまったり、口にできものができたり、靴擦れをしたり、2、3日で治ればいいですが、それが1ヶ月、1年と続いたらどうでしょう。

人生が左右されることはないかもしれませんが、その日の行為は変化し、脳も変化するのは想像できると思います。

非日常的な出来事のあるものが自分の生活習慣そのものを変化させてしまうこともないとは言えませんよね。

そんな非日常的な感覚として「身体が揺れる」を当てはめるとどうでしょう。

言うまでもないですが、これは日常にとって非常に大きな影響を与えることは間違いありません。

身体が揺れることを常に気を付けながら生活を送り、動き、感じている状況下でのは変化していきます。

具体的にどのように変化するかはfMRIを使わなければわかりませんが、深部感覚の情報が変質し有効性が低下することが多々見られます。

具体的には、前方の物を把持する時には、上肢がどのくらい前方へ移動したのか、また目標物とどのくらいの距離関係があるのか、目標物への直線的に向かっているのか、など、本来深部感覚情報が担っている「手がどのような肢位をしているのか」という意味づけが行えなくなります。

これらの情報は、本来は視覚と深部感覚の双方からの情報を統合しながら運動を制御していますが、身体が揺れている経験から、視覚でどうにかコントロールしようとする意図から視覚でのフィードバック制御を中心に行為が遂行されることが考えられます。

このように「揺れを制御する」ことと「揺れている中で行為を遂行する」という2つが常につきまといます。

なので、リハビリにおいて重要なのは「揺れないようにすること」と「揺れている中でも楽に生活を遂行すること」が重要な狙いになります。

運動イメージを活用する前に知っておきたいこと

前提に運動失調の問題は「筋出力の量ではなく、そのタイミングであり、筋力とは少し異なる」ことです。

上下肢が揺れるのは筋力がいないから、腹部が弱いから、など安易な考え方をしないことはもちろん、患者教育にも活かしていきたいところです。

本題に入ります。

小脳の疾患において、前頭葉の機能が低下されることはよく報告があります。

小脳性認知情動症候群(CCAS
☑︎ 遂行機能障害
☑︎ 空間把持障害
☑︎ 行動-情動障害
☑︎ 言語障害

上記の4つの症状が見られることがあり、小脳と大脳の関係性は非常に高いことが分かります。

なのであらかじめ、FAB(前頭葉機能検査)など、運動イメージを使用する上で問題となる高次脳機能障害がないか、あるいは運動イメージの反応が良好なケースかを判断してから、以下に説明する内容を実践していただきたいです。

運動イメージで行為が変化するのはなぜ?

運動イメージを行うと、実際にそのイメージした運動をしている時と同じ脳領域が発火するという知見が重要になります。

運動失調により身体の揺れを経験しそれを学習した場合、運動に先行するイメージにおいてもその経験が反映されます。

つまり、揺れることを前提に運動プログラムが組まれるということです。

その結果、実際に運動した時にすでに揺れが予測されているため、運動覚情報などの変質が生じ、揺れのない行為のイメージが行えなくなってしまいます。

この問題に対し、『実運動ではなくイメージから介入する』ことで、身体の揺れがないと言う状態の行為が可能になると仮説を立てることができます。

しかし、小脳の疾患において、運動イメージを使用した訓練が有効ではない場合もあるため、注意は必要です。

運動イメージを臨床へ

分かりやすく「寝返り」から着目してお伝えします。

まず、運動覚など深部感覚情報の変質の有無を確認し、どの感覚モダリティは知覚認知しやすいかを評価していきます。

例えば…
▶︎ 背臥位でベッドに接触している身体部位をスキャニング
▶︎ 言語教示にて寝返りの運動イメージの想起
 →どこから動き始めるのか/その時どこがベッドに触れるのか/身体はどのような肢位をとっているのか…など
▶︎ 上記のイメージ想起の際、最初にスキャニングした接触情報を中心に統合することに注意しながら言語教示をする
▶︎ 接触情報を中心に自己身体のイメージが可能になった段階で実際に寝返り動作を行う

寝返りが可能になれば、起き上がりに繋げることができます。

上記のように、起き上がりを運動イメージとして想起させ、運動に繋げるように言語教示を進めていきましょう。

終わりに

どの疾患に対しても言えることですが、さまざまな種類が存在し、それぞれにアプローチが異なります。

この方法がうまくいかない方も必ずいます。

大切なことは、常に思考することを止めず、病態の分析とそれに応じたさまざまな治療の方法とを繋ぐ臨床の理解の仕方が必要になります。

一緒に頑張りましょう。

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