手をあげる動作に必要な筋活動とは?
お疲れ様です!はらリハです!
本日は…
「手をあげる動作に必要な構成要素」について解説します。
手をあげる動作とは?
基本動作の1つで、専門的には「腕の挙上/肩関節屈曲、外転など」と呼ばれます。
この動作は…
☑︎ 棚の上のものをとる
☑︎ カーテンを閉める
☑︎ 吊り革を掴む
☑︎ 髪を洗う
☑︎ 洗濯物を干す
☑︎ 車のミラーを調節する
など、頭より上に手を操作することもあれば、
☑︎ 机のコップをとる
☑︎ お茶碗を持つ
☑︎ 袖を通すときの片方の手
☑︎ 歯磨きをする
☑︎ フライパンを持ちあげる
☑︎ トイレットペーパーをとる
など、胸周りに手を操作することもあります。
本日は、前者の頭より上で手を操作する「腕の挙上」の動作に必要な構成要素を解説していきます。
腕を挙上させる筋肉
腕の挙上とは…
腕の挙上に必要な筋活動には…
1)肩甲骨上腕関節で上腕骨を挙上:肩関節屈曲、外転筋
2)肩甲胸郭関節の上方回旋を制御する肩甲骨筋
3)肩甲上腕関節での動的安定性/関節包ない運動を制御する腱板筋
この3つのグループに分けることができます。
それぞれ解説します。
1)肩甲上腕関節で腕を挙上する筋
肩甲上腕関節を屈曲させる筋肉は…
☑︎ 三角筋前部線維
☑︎ 烏口腕筋
☑︎ 上腕二頭筋長頭
肩甲上腕関節を外転させる筋肉は…
☑︎ 三角筋前部線維、中部線維
☑︎ 棘上筋
です。
2)肩甲胸郭関節の上方回旋筋
肩甲胸郭関節を上方回旋させる筋は…
☑︎ 前鋸筋
☑︎ 僧帽筋上部線維、下部線維
です。
これらの筋肉は、肩甲骨の上方回旋以外にも「三角筋や腱板筋」のような遠位可動筋にとって安定した付着を与える役割もあります。
また、前鋸筋の活動と走行に伴い肩甲骨は後傾とわずかに外旋、下制の補助が起きます。
※ 前鋸筋の走行:第1〜9肋骨から肩甲骨前面を通過して肩甲骨内側縁全長(下角)に渡って付着している
この走行に伴い、上方回旋に加えて、後傾と外旋を起こし、胸郭に対して肩甲骨の内側縁を安定させる役割があります。
そのため、前鋸筋の活動性の低下、筋力低下が出現すると腕の挙上の不安定性が出現するパータンが多くなります。
片麻痺の方では、前鋸筋の活動が遅れてしまったり、そもそも出力が得られにくくなることが多いため、自主トレとして取り組むべき筋肉と言えます。
+α[前鋸筋と僧帽筋の相互作用]
下記の図のように…
肩の外転には、上腕骨と体幹骨格のあいだの筋の運動学的円弧が必要です。
この円弧の軸は「肩甲上腕関節の外転方向」と「肩甲胸郭関節の上方回旋」の2つの回旋軸で形成されており、ここで必要な主の筋活動として僧帽筋上部および下部線維と前鋸筋の下部線維です。
この2つが主として協調した動きをすることを「フォースカップル」と呼びます。
+α [麻痺の影響]
通常、脳卒中後遺症に伴い局所的に単一筋の運動麻痺が起きる可能性は稀ですが、末梢神経損傷と呼ばれる脳ではなく、筋自体の神経の損傷では以下のような症状が出現します。
単一筋の麻痺は起きることは稀ですが、局所的に出力が弱いパターンは多いので参考にしてください。
3)腕挙上の際の回旋腱板構成筋の機能
回旋腱板は…
☑︎ 肩甲下筋
☑︎ 小円筋
☑︎ 棘上筋
☑︎ 棘下筋
で構成されています。
回旋腱板は、以下2つの役割を担うことで腕の挙上に貢献しています。
□ 動的安定性の調節器
□ 関節包内運動の制御装置
説明します。
動的安定性の調節器
肩甲上腕関節の構造は「安定性を犠牲にして可動性を優先」しています。
それに対して、腱板を構成する筋肉は動的安定性に優れています。
つまり、肩甲上腕関節の動的安定性を確保するためには、上記で説明している「神経筋系」と「筋骨格系」の要素が必要ということです。
関節包内運動の自動的制御装置
健常な肩では、腱板は肩甲上腕関節の自動的関節包内運動の制御に深く関わっています。
水平に走行する棘上筋が収縮すると関節窩に対して圧迫力が直接生じ、上腕骨頭が上方に転がる際、関節窩に固定することができます。
肩関節屈曲角度に対して活動する筋群/運動連鎖
1)屈曲角度に伴う筋群の活動
肩関節屈曲動作の主動作筋は「三角筋前部線維/棘上筋/大胸筋鎖骨部/烏口腕筋/上腕二頭筋長頭」であり、拮抗筋は「三角筋後部線維/大円筋/広背筋」です。
肩関節屈曲60〜120°では、肩甲骨の上方回旋の運動が大きくなり、僧帽筋や前鋸筋が活動します。
肩関節屈曲120〜180°では、三角筋、僧帽筋下部線維、前鋸筋の筋活動により運動が持続されます。
屈曲初期では、棘上筋の筋活動が大きく、屈曲角度が増大に伴い三角筋前部線維の活動が大きくなります。
屈曲角度が徐々に増大するのに対して、棘上筋の活動は徐々に小さくなり、約120から屈曲作用はなくなります。
2)屈曲角度に伴う運動連鎖
肩甲胸郭関節は、肩関節屈曲初期では肩甲骨は外転し、90〜150°から内転に変わります。
初期では、僧帽筋上部線維と前鋸筋下部線維の筋活動による肩甲骨外転、上方回旋作用、中期以降では、僧帽筋中部、下部線維の筋活動による肩甲骨内転作用が起きます。
脊柱、骨盤は、屈曲90前後からの脊柱伸展、骨盤前傾運動が、円滑な動作をするうえで重要になります。
肩関節外転角度に対して活動する筋群/運動連鎖
1)外転角度に伴う筋群の活動
肩関節外転動作の主動作筋は「三角筋中部線維/棘上筋」であり、拮抗筋は「大円筋/広背筋/大胸筋」です。
肩関節外転0〜90°では、三角筋中部線維と棘上筋が活動します。
肩関節外転90〜150°では、肩甲骨上方回線の動きが大きくなり、僧帽筋や前鋸筋が活動します。
肩関節外転150〜180°では、外転筋群に加えて脊柱起立筋の作用による体幹進展も必要になります。
2)外転角度に伴う運動連鎖
肩甲上腕関節は徐々に外旋角度が増大します。
肩甲胸郭関節は、肩関節外転初期で僧帽筋中部線維によって肩甲骨内転し、前鋸筋の活動によって上方回旋します。
脊柱、骨盤は、肩関節外転初期からの脊柱伸展、骨盤前傾が起きることで、円滑な動作が可能になります。
屈曲/外転時の制限因子
1)肩関節屈曲動作の制限因子
主に、肩関節後方組織の伸張性低下に伴う可動域制限が起きやすいです。
2)肩関節外転動作の制限因子
主に、肩関節前部組織の伸張性低下による可動域制限が起きやすいです。