痛みを読み解く:肩前上方の痛みを考える「伸張ストレス」
お疲れ様です。はらリハです。
本日は…
『肩前上方の痛みの原因の1つである伸張ストレス』について説明します。
痛みを誘発する動き
肩関節後方の疼痛は、力学的ストレスから考えると「伸張ストレス、圧縮ストレス、摩擦ストレス」に大分できます。
この伸張ストレスが加わっていることで痛みが生じる場合は、肩関節外旋時に疼痛が引き起こされます。
上腕骨頭が臼蓋に対して外旋運動を行うとき、肩関節前面には伸張ストレスが加わります。
これは…
☑︎ 上腕骨頭の外旋制限
☑︎ 肩関節前面の軟部組織の伸張性が低下
が起きることで、肩関節全面の伸張ストレスは増加します。
疼痛原因と仮説:肩甲下筋/腱板疎部
肩甲下筋の疼痛:機能解剖学的要因
肩甲下筋は、肩関節前面で最も深層に位置する筋肉で、起始部は6つの筋束に分かれており、1〜4筋束は肩甲下窩、5〜6筋束は肩甲骨外側縁より起始します。
肩甲骨外側縁より起始する筋束は、停止部近傍まで残っており柔軟性に富んでいます。
そのため、肩甲下筋の下部筋束の拘縮が生じると「外転/外旋運動」の制限を起こします。
ここの制限が起きることで、伸張ストレスが増強し、疼痛が出現すると考えられます。
腱板疎部の疼痛:機能解剖学的要因
肩関節は…
上方:棘上筋
前方:肩甲下筋
後上方:棘下筋
後下方:小円筋
で覆われていますが、前上方部分は腱板に覆われていません。
この腱板が無い部分を「腱板疎部」といい、烏口上腕靱帯から構成されます。
烏口上腕靱帯は、他の靭帯とは異なる組織学的構造を有しており、関節包と類似しており、強靭な靭帯ではなく、走行の異なる腱板の間隙を埋め、張力の調節に関与していると考えられています。
この腱板疎部の問題は…
□ 拘縮型
→腱板疎部の損傷が肩関節に波及し炎症/癒着
□ 不安定型
→損傷が腱板疎部に溜まり、不安定性を増強
の2つの分けることができます。
不安定型は若年者に多く、拘縮型は平均年齢45歳と年齢層が高いのが特徴です。
これらの評価を紹介します。
疼痛誘発テスト
肩甲下筋の評価
肩甲下筋の疼痛誘発テスト
※ 注意点
lift of testは肩甲下筋の収縮を誘導する必要があるため、まずは肩関節内旋を誘導します。
その際、結滞肢位になるため、肩関節上後方の軟部組織の拘縮でも伸張痛が出現する事があります。
さらに、小胸筋の収縮時痛が烏口突起下方に出現する可能性もあるので、実施の際は疼痛部位と状態を詳細に確認しながら行いましょう。
※ 注意点
肩甲下筋が短縮位で等尺性収縮している為、陰性だった時に、伸張位で収縮時痛がないとは判断できません。
そのため、関節可動域内全域で抵抗運動を行い、疼痛の有無の増域を見た方が良いです。
腱板疎部の評価
※ 注意点
上腕に牽引を加えると、肩甲骨の外転/下制/下方回旋などの運動が付随するため、肩甲骨の正確な固定が求められます。
また、外旋位においても不安定性が生じている場合には、他の靭帯損傷を合併している可能性があり、異なる病態を考える必要があります。
触診と評価からわかる根本的な原因
以上の触診/検査から、伸張ストレスにより肩前上方に疼痛が発生させる部位の評価が可能になります。
次に、なぜこの部位に機能障害が加わったのかを推察する必要があります。
1)腱板構成筋の筋力低下
2)上腕骨頭と関節窩の位置関係
次回はここを深掘りしていきます。
おわりに
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