多角的支援と一定基準の設定 1.多角的支援の重要性

 今の日本も多角的な支援の遅滞による、経済的打撃が大きくなっている。特に大手企業であっても経済の波は容赦なく襲いかかってくる。しかし、大手企業はある程度大きな波が襲ってきたとして、銀行などから融資を受ける際にはそこまで苦労することはない。なぜなら、社会的認知の多さから来る社会的優位性とネームバリューによる社会的信用性を兼ね備えているからだ。

 しかし、社会構造を考えるとこれでは大企業も共倒れになる可能性がある。

 そもそも、大企業の生産構造を細かく見ていくと、販売と製造は親会社である企業側で出来るが、部品調達や特殊部品は自社では製造出来ないため、中小企業などの工場に外注する形になる。そのため、外注で部品を製造する工場などが今回の影響で経営悪化などにより倒産や休業長期化が見込まれた場合に部品を調達する手段がなくなってしまう。もちろん、会社自体はそのまま存続できたとしても経営状態によっては従業員の削減や機材の売却をして経営資金に充てなくてはいけない状態になってしまう。

 しかし、今の日本では信用性だけでなく、今後の利益率や製造効率、経営再建のための努力効果など必ず融資をしても大丈夫かを審査されてしまう。そのため、機材を売ってしまう=製造能力の低下につながり先方の銀行からするとかなり躊躇する可能性が高いのだ。

 もちろん、今は利益至上主義が表面化しており、形としては融資の返済の可否だろう。銀行側としては「不良債権を出したくない」という基本方針だろうし、会社側としては「経営は立て直したいけど、先行き不透明だから多めに借りたい」という会社を守らないといけないという考えなのかもしれない。

 だからではないが、銀行側も取引先を減らすことになり、会社側も社員の雇用を守らなくてはいけないのだ。これらのバランスを考えるとかなり判断が難しくなる。だからこそ、国庫支出金の割合を上げ、優遇措置をしておかなくては失業率の増加や休業・解散のリスクが高くなってしまう。

 つまり、経済ピラミッドの頂点(大手企業)が経営不振や赤字決算になってしまうと、それらのしわ寄せがその下に位置付けされている下請けや協力会社に波及してしまう。だからこそ、大手だけが融資を受けられたとしても製品の製造は出来ないし、仮に製造出来たとしても、今まで下請けなどに外注していた部品から作らなくてはいけなくなるため、一つの製品を製造するための必要経費(特に開発経費と人件費)がかなり高額になってしまう。すると、諸経費を差し引いた利益率の一定水準の担保が難しくなってしまう場合も少なくない。だからこそ、大手を支援することと中小企業を支援することはセットで考えなくてはいけないだろう。

 これは、以前から感じていた違和感だ。大企業や中堅以上の企業が中小企業を救済することは多くない。むしろ、経営が悪化しても手を差し伸べることをしないのか出来ないのかは各社の裁量に任されているように感じる。ただ、これらの問題の背景にはさまざまな要因が複雑に入り組んでいるように感じる。例えば、大手企業が高い技術と利益を得るために下請けやその他の協力会社に対して安い値段で供給するように交渉することで場合によってはその会社が傾くことや労働対価の大幅なずれを生じさせることになる。

 今の社会構造学的には会社規模が大きい会社になるとなるだけ労働対価の相対指数は100に近い値になっていく。つまり、収益率の高い企業ほど労働賃金と労働対価係数の値がきちんと管理され、その会社の労働に見合った数値になっているということなのだ。しかし、これは表面化している既存データから読み取れる氷山の一角として認識しており、潜在的要素として慢性的な残業超過も繁忙期に集中して引き起こされているわけではなく、どちらかというと業績の向上が目的となり、中長期的な利益確保が出来るという確約がない状態で発生していることが読み取れる。

 しかしながら、確約を得ない状態でこのまま残業などの労働対価の面できちんと契約を守り続けられるのかという問題も発生するが、たいていは残業代など法定手当に関しては通常通りに出し、独自の諸手当を減少させるという構図を作る傾向にある。これは、もちろん問題は無いが、このことで一番の問題として考えられるのが“会社の利益しか求めない”・“社員は取引先のご機嫌伺いをすればいい”という考えの齟齬や残業代支給上限額を決めてしまって、それ以上はサービス残業を行うことを強要するというものだ。もちろん、これらの行為は表面化していないだけでほとんどが黙認されている状態であることは間違いない。

 だからこそ、きちんと労働管理が出来ているのか、最低賃金法で定められている賃金を支払えるだけの経営が出来ているのか、社内の労働衛生環境は適正かなどいわゆる、労働基準法ならびに労働契約法に基づいた労働雇用が遂行されているのかを調べなくてはいけない。

 特に、中小企業になるとサービス残業や休日出勤をしないと会社の利益に直結しないことも多いことから、週労働時間の大幅超過や黙認、モラルハラスメントなどの横行など労働者本人の健康状態を害する危険性や元々従業員数も多くないことから上司や周囲に対してリスクマネジメント出来ていない事例も多々見受けられる。

 現在は持続化給付金や雇用調整助成金などあらゆる国庫支出金や助成金制度を含めた手段を講じてなんとか雇用の悪化を食い止めようとしているが、すでに雇用崩壊の前兆のような状態になっており、体力の無い企業や業種一体で動く事業に関してはどんどん倒産・廃業などに追い込まれていき、体力がある企業であっても事業規模縮小や固定費の削減など企業努力をするしかない状態になっている。特に複数業種が関連している場合(例:観光業と運送業、飲食業と音楽産業など)は状況が悪化すると共倒れの危機に陥るし、現時点で観光業と飲食業に関しては甚大な被害を被っている形となり、運送業も一部業種では企業間格差が発生している。

 もちろん、これらの人がいないと生活もままならなくなり、人々の生活が難しくなる傾向に陥る。

 今回の第1次・第2次補正予算案の内容を見ると改めて改善の余地があるように感じる。例えば、アベノマスクの計上費用額が約500億円(検品などの検査費用を含む)となっているが、現時点でマスク需要は下火になっており、これから配付されるとしてもほとんどがマスクを確保もしくは手作りしているため、寄付に回ってしまう可能性が高い。私はアベノマスク自体には反対するつもりはないが、一律ではなく、感染者の多い自治体や都道府県への国産マスクの配給を優先するべきではなかったのかと考える。これは、今まで中国などの海外からの輸入に依存しすぎた結果、中国からの輸入中止や国産マスクの生産割合を下げていたためにマスクの購入が困難になるなど予防策が十分に取れる状況ではない状態に発展してしまった。これからは第2波・第3派と感染拡大が危惧される中できちんと各家庭に感染防止策を取るための装備品が十分に行き渡るような態勢を作らなくてはいけないし、場合によっては自治体や企業などに一定水準以上の備蓄品を置いておく必要があるのではないだろうか?

 特に、マスクの着用が常時必要な人にとっては今回のような事態になることで、症状の重篤化や感染の不安から私生活に支障を来す場合も少なくない。また、消毒液などもそうだが、アルコール入りのウェットティッシュも十分な数を確保しなくてはいけないし、こちらもマスクと同様に備蓄が必要になる。

 もしも可能なら、個人に対しては各家庭に50枚入りマスクとアルコール入りのウェットティッシュなど感染対策の用品を配付することやスーパーやコンビニなど事業者向けにアルコールの自動噴射機や殺菌・除菌のための紫外線装置を設置する費用の補助など感染症対策を取る上で必要な用品の設置を推奨する資金として給付することがこれからの第2波に備えるために必要なのではないだろうか?

 もちろん、今回示した提案は感染症拡大防止対策の一例であり、実際に遂行できるかは不透明だが、実行することで感染症に対する恐怖心が少なくなるだろうし、従業員の負担軽減のためにも必要になってくる。

 これから雇用面もそうだが、生活面でも多角的な支援の必要性が高まっていく。失業者を減らす努力も大事だが、失ってしまった人たちが働ける場所を提供することも同時進行で行わなくてはいけないだろう。経済を回すためには一定水準以上の所得や生活水準が求められるのだから。

現在、小説とコラムを書いています。 コラムに関してもこれから完成している物を順次公開していく予定です。 自分の夢はこれまで書いてきた小説を実写化することです。まだまだ未熟ですが、頑張って書いていきますので、応援よろしくお願いいたします。