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エンジニア系広報の始め方と種類毎のメリット/デメリット

DEVREL(Developer Relations)や技術広報というワードで聞いたことがあるかもしれませんが、プロダクトやエンジニア組織の認知度向上を目的として、各社でエンジニアブログや勉強会をやったり、カンファレンスのスポンサーになるなどを目にすると思います。が、いざやってみよう!となると何から始めれば良いのかや、実際にどういったメリット・デメリットがあるかは分かりにくいです。

僕がさまざまな技術広報に取り組んだ経験から、所感ではありますがメリット・デメリットを踏まえた内容をノウハウとしてまとめます。

自社メディアへのエンジニア系記事掲載

Wantedlyやコーポレートサイトなど、自社が抱えるCMS上で作成する記事のことです。エンジニアブログも該当しますが、後述します。

[メリット]
1. 書いてすぐ世の中に出せる、かんたん
2. 顕在層(興味を持ってくれた人)が参考にしてくれる

[デメリット]
1. 潜在層(会社を知らない人)へのリーチには繋がりにくい

[感想]
CMSさえあればすぐに始められるので一番最初に取り組むと良いです。Wantedlyで書くのがSEOなど整っているので一番良いと思います。

メインターゲットはスカウトなどで少しでも興味を持ってもらった人になります。その人達が"{会社名} エンジニア"で検索して引っかかった記事を読んでもらうイメージです。そのため、特定技術ゴリゴリのカッコいい記事よりも、技術スタック全般に関する解説や組織の雰囲気や日常を知れるような記事のほうが好まれる傾向があると感じます。

注意点なのですが、PV数やソーシャルアクション(いいね等)数を絶対にKPIに置かない方がいいと思います。一般的な広報記事と同じように広くバズらせようとしてエンジニア以外に読まれてもあまり意味が無いと感じるからです。
もしやるとしたらカジュアル面談や選考前に参考にした記事に上げてもらえるかどうかがKPIになると思います。

エンジニアブログ

技術広報としてはかなりメジャーな手段なので真っ先に手を付けるのではないかとおもいます。方法として、はてなブログの有料版などを利用することが多いのではないかと思います。

[メリット]
1. 書いてすぐ世の中に出せる
2. メンバーのアウトプットの機会を作れる
3. "{会社名} エンジニア"で検索した時に一番最初に見てもらえる

[デメリット]
1. PVが全然集まらない
2. ブログ記事執筆を呼びかけ続ける必要がある
3. ブログ記事を書いた経験がある人が少ない

[感想]
メリットは分かりやすいのですが、実際に運用する場合は運用コストが高くデメリットが大きいです。あまりオススメしません。
主な原因はブログというメディアがあまり利用されなくなっていることです。ブログ未経験者には執筆のハードルが高く、記事を書いてもらうことは容易ではないです。結果半強制的に執筆ローテーションを組んだりする必要が出てきてしまいます。
あと、単体メディアとしての集客力が弱いので書いてもあまり読まれない=瞬発的にPVが増えないです。実際は検索流入で細く長くPV数が出る傾向になります。書いた直後の反応が薄いので執筆者のモチベーションコントロールに非常に苦労すると思います。

エンジニアブログの代わりとして、QiitaのOrganization機能を使うのが良いと思います。ブログに比べるとQiitaに記事を書く文化は比較的浸透していますし、Qiitaというメディアの中である程度のPV数は確保できると思います。

外部メディアに取材してもらう

ITMediaなどに代表されるエンジニア向けメディアに取材いただいて、インタビュー記事を掲載いただきます。取材は有料だったり、無償だったりメディアによって様々です。

[メリット]
1. 潜在層(会社を知らない人)へ広くリーチ出来る
2. 顕在層(興味を持ってくれた人)がとても参考にしてくれる
3. メンバーの大きめのアウトプットの機会が作れる

[デメリット]
1. コネやツテが必要、またはそれなりの費用が必要
2. 取材してもらえるようなそれなりのネタが必要
3. 掲載まで非常に時間がかかる

[感想]
メリットがかなり大きいです。有名なメディアに取り上げてもらえるとかなり大きなブランディング効果が得られると思います。

ただ、取材してもらう事を狙ってもなかなかうまく行きません。ネタの鮮度やクオリティが高いものが見込めた段階でメディアへの売り込みを行い、お眼鏡にかなうことがあればやっと取材してもらえます。取材してもらっても記事になるかどうかは分からず、そのままお蔵入りするパターンもあります。

メディアの人とツテを作る方法なのですが、技術カンファレンスや勉強会の懇親会に記者や関係者の方がいらっしゃることがあるのでその場で積極的に売り込むか、他社の技術広報担当者がメディア取材を受けた際に「~~さんは最近こういうことされたらしいですよ」とメディア側に紹介をしてもらうなどがあります。どちらにしろ日頃からの人脈形成を自分で行う必要があるのかなと思います。

エンジニア系メディアが募っているTipsネタ投稿

エンジニア系メディアがTwitterとかで特定のTipsネタを募集していることがあるのですが、そちらにネタを投稿します。

[メリット]
1. 通常だと埋もれがちな施策をアピールできる
2. 潜在層(会社を知らない人)へリーチ出来る
3. 労力がかからない

[デメリット]
1. Tipsネタ募集のアンテナを貼ってないとチャンスを掴めない
2. Tipsネタに該当するようなネタが無いと参加できない
3. 掲載まで非常に時間がかかる

[感想]
メリットは大きいわけではないのですが、デメリットがそこまで無いのでチャンスが有れば積極的に狙ってみると良いと思います。

とにかく常にアンテナを張って自分で見つけるしかないです。メンバーにも見つけたら教えてもらえるように協力してもらうのも良いと思います。ただ、必ず掲載されるわけではないのであまり期待しないほうが良いです。

一度応募すると、次回の募集の際に先方から声をかけてくれるようになります。こちらからも他社を紹介したりして積極的に関係を築くようにすると大きな記事掲載にも繋がるので良いと思います。

エンジニア勉強会イベントを開催する

connpass上に登録されているような、10名~50名規模のエンジニア勉強会イベントを主催または共催します。だいたい2時間程度で登壇と懇親会をセットで開催することが多いと思います。

[メリット]
1. 顕在層(興味を持ってくれた人)への追加アプローチに利用できる
2. 登壇スライドを使って潜在層(会社を知らない人)へリーチ出来る
3. メンバーのアウトプットの機会を作れる

[デメリット]
1. 少々コストかかる(場所代, 飲食代)
2. 準備や募集の期間が必要で頻繁に実施できない
3. 運用ノウハウが無いうちは効果が薄い
4. イベント当日にメンバーを拘束してしまう

[感想]
タレントプール獲得の手段として採用に繋げるイメージが強いと思いますが、実際1回で一人カジュアル面談に繋がれば御の字ぐらいです。採用目線だと受付で貰った名刺の活用は難しく、懇親会がメインになります。
どちらかというと、登壇スライドを公開して非参加者に見てもらうことでの潜在層へのリーチや、スカウトした人へのカジュアル面談以外でのアプローチとして最適です。

ただ、運用ノウハウがない状態でいきなり主催するとかなりの確率で失敗します。他社のイベントに参加したり、イベントに慣れている会社と共催にしたりすることで、ノウハウを貯めてから主催したほうが良いと思います。

前職でエンジニアイベントは大量に行ったので、いつか運用ノウハウを記事化しようと思います。

余談: エンジニア勉強会イベント文字起こし

開催後に「~~イベント開催しました」みたいなレポート記事を作ると思いますが、臨場感ある記事を書くのはとても骨が折れます。あと記事用に写真もたくさん撮らなきゃいけないのですが、運営してるとついつい忘れがちになってしまいます。

イベントの文字書き起こしを依頼したことがあるのですが、非常にお薦めです。費用はかかりますが、記事執筆をしてもらい公開前の事前チェックも当然させてもらえます。あと当日撮った写真もたくさん頂けました。
スライド公開するなら必要ないと感じるかもしれませんが、当日の臨場感はスライドだと伝わりにくいです。登壇者の人柄やアドリブで話した内容などは当日イベントに来た人しか伝わらないので、文字起こしでイベントに来れなかった人にも雰囲気を伝えられるのは大きなメリットです。
イベント開催出来る頻度は限られるので、一回一回のイベントから得られる効果をギリッギリまで絞り出すためにも良い手法だと思います。

実際に文字起こししてもらった記事や、利用事例をインタビューしてもらった記事があるので、以下にリンクを貼っておきます。

技術カンファレンス スポンサー

ScalaMatsuriやRubyKaigiのような数百人規模の技術系カンファレンスイベントにスポンサードします。費用感は様々ですが、松竹梅で桁が一つづつ増えていくようなイメージを持ってもらうと良いと思います。

[メリット]
1. 潜在層(会社を知らない人)へリーチ出来る
2. 特定の技術分野に対するブランディングが出来る

[デメリット]
1. まぁまぁのコストかかる(お金, 人員, 配布グッズ)
2. 採用活動を前面に出すと敬遠される
3. 費用感に対して明確な効果を得られにくい

[感想]
メインの効果は特定コミュニティでの認知度を上げるブランドリフトです。TVCMや企業イメージ系動画広告と同じで、具体的な成果を見込むのは難しくそういう意味での費用対効果は悪いです。コミュニティへのお布施という感覚が近いですので、まずは少額プランから始めると良いと思います。

スポンサードする条件としては、メンバーの自発的な参加が5人ぐらい望めることと、メインストリームで利用している技術スタックに該当するかどうかだと思います。スポンサードするとカンファレンスの参加チケットが貰えたりするので参加するメンバーが多いイベントだとお得です。
注意したいのは、これから利用を検討している場合や、一部でのみ利用している技術に対してスポンサードするのはイメージのミスリードを招きやすいことです。主要な技術にしぼってスポンサードするほうが良いと思います。

過去に、採用色強めの企業ブースを出してまる2日間全然人が来なかったり、スポンサードセッションをしても人が集まらなかったりなどの経験があります。いきなり上位プランには手を出さないほうが良いです。

最後に

技術広報活動はとにかく明確な成果結果が出ません。指標すら立てれないこともあります。結果の見えない仕事ほど辛いものは無いです。。。
だいたい半年から1年位経つと徐々に効果が見えるようになってくると思います。それまでは自分自身はもちろん組織にも辛抱して貰う必要があります。

今回と似たような話をイベントでしたことがあるのでその時のスライドを貼っておきます。自社メディアの運用に関する話が中心になっています。よかったら御覧ください。

おわり

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