依存症について知っておきたいこと

依存症は身近な病気
アルコール、薬物、ニコチン、恋愛、ギャンブル、セックス、インターネット(SNS)、買い物。
依存症として何かを想像したとき、思い浮かぶのはこれらが代表的ではないでしょうか。SNSを頻繁に見ることと薬物や煙草を一緒にするのか?と思われるかもしれません。しかし厚生労働相のホームページには、依存症について「特定の何かに心を奪われ、やめたくてもやめられない状態になること」と記載されています。もちろん程度は違いますが、対象となる行為を繰り返すことで脳の状態が徐々に変化していくというメカニズムで、自分の欲求をコントロール出来なくなるという点では、これらは同じ依存症として認められるものなのです。つまり誰もが持っているとらわれてしまう気持ちやこだわりが強くなり過ぎたということです。それらは決して悪いことではありませんが、恋愛もアルコールも、そしてSNSも、健やかな生活を損ねる領域まで達してしまえば依存症の領域として同意義であると考えて間違いありません。
これらが別物のように感じるのは、依存症には3つの種類があり、それは「物質への依存」「プロセスへの依存」「関係への依存」があるからです。
※以下、依存症の専門的用語や内容につきましては私自身の知識のみでは不十分な説明となることが考えられるため、参考サイトを最後に記載いたしますのでご参照いただければと思います※

▼物質への依存
アルコールや薬物といった精神に依存する物質を原因とする依存症状を指し、次第に使用量が増加し、使い続けなければ気が収まらなくなり、自制心をコントロール出来なくなります。
▼プロセスへの依存
物ではなく過程や行為に必要以上に熱中してのめり込んでしまうことを指します。
▼関係への依存
親や恋人など特定の対象に囚われて逃げられなくなる状態を指し、過度な共存を求めます。これらに共通しているのは繰り返すこと、今以上の刺激を求めること、やめようとしてもやめられない、頭からその物事が離れなくなる、という特徴です。

我々人間は無意識に食事や睡眠、安全・安心を優先して生きています。心身の健康を求めた行動をとるのが人間の性だからです。適切な食事や睡眠時間を確保し、毎日事故やケガがないように生きるということは、明日をより良く迎える手段であり、それが人間にとって必要なことであるといえます。しかし依存症になり、脳が依存先を求め、行為がエスカレートすることで正しい選択が出来なくなると、よりよく生きる術を見失う事態を引き起こします。これまで健康に過ごすため優先していたこと以上に何かの行為、物質にのめり込むと優先順位が変わってきます。睡眠時間を十分確保しない、食事を疎かにする、大切な人との時間を削り、関係性を壊す。その結果心身へ悪影響をもたらし病気や借金、仕事を休む、社会的孤立などの問題を引き起こし健やかな生活を失っていくのです。

脳は感情に素直な器官
脳のメカニズムについて少し詳しく説明し、依存症についての知識を深めたいと思います。
人間の脳には神経伝達物質がいくつかあり、その中でも依存に大きく影響するのが快楽物質と呼ばれるドーパミンであると解明されつつあります。ドーパミンは常に分泌されているわけではありません。食事をしておいしいと感じたとき、目標を達成したとき、楽しいことをしたとき。そして新しいことを始めようとするとき、好奇心旺盛な状態のとき。はたまた愛情や恋愛感情を抱いているとき、セックスで興奮しているとき。人生の良い瞬間のほとんどにドーパミンが関与しているとされています。子供で言えば、テストで100点をとった、徒競走で一番をとった、先生や両親に褒められた、夕食が大好物だった、好きな子と両想いになれた、そんな純粋な心から生まれる喜びを感じたときにドーパミンが分泌されています。何かのきっかけでドーパミンが脳から分泌され、それを快楽として受け取ることが脳にとっての報酬となり、更に上位の報酬を得たいと考えるのが脳の特性であると言えます。脳は理性でありながら感情的なのです。
幸せな気持ちをもっと得たいという、誰でも持つ感情が過度に暴走し少し歪んだ形になってしまうのが依存であると考えます。快楽とは、人間が他の動物と違って努力を続けられるなどの良い方向に向かうこともあれば、逆にそれがなければ生きていけないような依存へ溺れることもあるということです。

自分を見つめるということ
私は心が弱いから依存から抜け出せないのではないと考えます。弱さがきっかけだっただけでしょう。
今したいという欲求に負けているから、意思が弱いから抜け出せないのではなく、依存症は脳の病気です。脳の回路がドーパミンによって乱されてしまった状態では、自分の意思や他人の指摘ではなかなか改善できないものです。未成年なのに人に勧められた煙草が断れなかった、(喫煙や乱交、薬物など)いけないことを格好良いと感じてしまった、仕事の失敗を忘れたくてお酒に逃げてしまった、寂しくて誰かに側にいてほしかった、愛するあまり子供へ強い愛情を押し付けてしまった、そんな誰にでもある些細な感情や行動を弱さと捉えれば、きっかけとなってしまって依存すてしまったのは事実です。
もしもいけないことを強い意思を持って断れたり、嫌なことは仕方がなかったことととらえて寝て切り替えたり、そのような対処が出来れば依存症にはならなかったのかもしれません。しかし、環境も、時間も、状況も違う中で、誰もが健康的で正しい選択が出来るとは思えません。今依存症に悩める人は、ストレス発散の方法が少しまずかったのではないでしょうか。だから私は、「心が弱いから依存症から抜け出せないんだ」などの、心ない言葉に傷付く必要はないと思います。ただ、何かに躓いたり、悲しんだりしたときの弱さを何かで紛らわそうとする手段がついエスカレートしてしまった結果だと捉えて良いと思います。
夜回り先生として有名な水谷修氏の著書「約束」の中で、非行に走る少女が更生していく段階の際に「先生、先生。会いたい」と幾度も頼る場面があります。けれど先生はあえて少女を遠ざけ「依存先が何をしてくれますか。あなたがトイレに行きたいからと言って、代わりにトイレに言ってくれますか」と、言いました(一部改変)。依存の先には何もない、拠り所がなくなれば、手段は別としてもまた依存を繰り返す…そのような意味のある言葉であるように感じました。一生のパートナーとしていられる存在でないっからこそ、先生は自分がいなくても生きていける強さを持って欲しいと願いました。
依存症である自分を認め、許し、周囲に受け入れてもらう努力をすることは大切です。しかし、だからといって依存症を全てを肯定する気はありません。依存症でない方が幸せであるからです。
依存症は脳の病気です。しかし、依存症から抜け出すためには「脳の回路がおかしくなったから仕方ないんだ」と思うのではなく、まず自分が依存している事実を認め、きっかけを見つめ直す必要があると思います。私は、この脳の回路が変化しているから依存症になっているという認識を、依存症の人の周囲が持って頂ければ依存症への理解が深まると思います。依存症の人は、認めた上で、決して甘んじてはいけません。最終的には、自分の力で治すという意識を持って頂きたいです。
アルコールや薬物依存、煙草などによって耐性が出来る物質依存はまず正常な判断は困難な状態であるので病院での治療が第一選択にはなりますが、関係依存やプロセス依存については思い返せば冷静になれる瞬間もあるかと思います。しかし、先述の通り依存症はやめたいと思ったり、周囲に指摘されたりしたところで、ドーパミンの分泌によって脳の回路が変化しているため、自分一人の力で治すのは難しいケースもあります。まずはどう治していくか、手段を考える必要があります。親身になって考えてくれる人がいるならば、自分の気持ちを伝えてみるのも一歩だと思います。しかしここで頼った相手にも、専門家の医師やプロのカウンセラーなどを除き、欲しい言葉や対応を、過度に相手に期待しないことです。アルコールでも、煙草でも、恋愛でも、いずれにせよ何かの依存症である人は依存体質であると考えられるため、人との距離や関係性も意識する必要があります。下手をすれば悪化するのが誰かに頼ることだと思います。
とある芸人が番組の中で発言した「自分の機嫌は自分でとる」という言葉をご存じでしょうか。まさにこれに尽きると思います。支え合うことと依存は違います。アルコール依存症の治療や禁煙外来を行っている医療機関ですら、通えば確実に依存症を治してくれるというものではありません。脳の回路を戻す補助として治療を行うだけです。物事に囚われている自分を認め、気付くことが依存症を治す第一歩であり、そして最終的な解決策でもあると考えました。

過度の依存体質である私
最後に…実はこの文章、それこそ私自身が「自分の機嫌をとるために」書いたものです。
詳しくはまた別のnoteでお話ししたいと思いますが、自分の気持ちを整理して、どうすれば自分を立ち直らせられるのかを考え、私の心にどうアプローチすればいいのかを考えて書きました。だから、全ての依存症の方が納得できるものではないと思います。私自身、周囲の言葉や助言はあまり聞けない性格であり自分が正義!というタイプでした。そんな私でも、納得して、変わろうと思うことが出来る方法があったんです。だからこの文章を読んで何も感じなくても、依存症に悩む人それぞれに、響く言葉やアプローチ方法があるはずです。
依存症に悩む方、まずは認めましょう。何事もやりすぎはダメだよ、でもやりすぎた自分を責めすぎてもダメだよ、やりすぎたことを振り返って、何がトリガーだったのかなって思うことが大事だと私は思います。

依存症についての参考サイトは下記になります。一部引用させて頂きました。

厚生労働省 依存症についてもっと知りたい方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html
ワンネスグループ 依存症について
https://oneness-g.com/depe/

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