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フレデリック・ワイズマン・マラソン in 仙台


はじめに

ドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマン。新作『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』の日本公開(宮城県内では9月20日よりフォーラム仙台にて上映)にあわせて、自分が生活する街でも過去作を見直す機会ができたらばと思った。
とはいえ、休日の趣味の範囲でできることには限りがある、ワイズマンは長尺の作品も多い……と考えているところに、宮城大学学術情報センター、東北大学教育学部同窓会、東北映像製作社協会の協力により、3つの場所をゆるやかに結びながら、初期作品と近年の代表作8作品を上映することとなった。
のべ21.717時間。氏のキャリア全体からすれば、それでもハーフマラソンとすら言えないけれども、一緒に走り抜く人がいたら幸いである。

フレデリック・ワイズマン(Frederick Wiseman)

1930年生まれ。イェール大学大学院卒業後、弁護士としてそのキャリアを始める。1967年、初監督作『チチカット・フォーリーズ』を発表、公開禁止処分となるが、その後もアメリカの組織や施設、地域などを見つめるドキュメンタリー映画を次々と発表、半世紀以上に渡るその視座は、アメリカに留まらず現代の社会を見通すものである。

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Nitrate films(ナイトレート・フィルムズ) 小川


10月11日(金) @宮城大学 大和キャンパス 本部棟2階メディアシアター

主催:宮城大学学術情報センター(as 「六限の図書館#25:MYUシネマデイズ」)
入場無料

14:30 『ニューヨーク公共図書館 エクス・エブリス』

Ex Libris: The New York Public Library/2017年/205分(途中休憩あり)/英語(日本語字幕つき)/作品提供:ムヴィオラ
世界で最も有名な図書館のひとつ、ニューヨーク公共図書館。デジタル時代に本だけではなく多様なサービスや機会を提供する場所に集う人々や裏方の様子をカメラは追う。ワイズマンはこの図書館を「政治情勢がどうであれ、この図書館は今なお、社会的包摂、民主主義、表現の自由のひとつの理想形であり続けている」と語る。

18:30 『チチカット・フォーリーズ』

Titicut Follies/1967年/84分/英語(日本語字幕つき)/作品提供:コミュニティシネマセンター
ワイズマンの初監督作で、精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に描いた映画。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかをさまざまな側面から記録している。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品で、1991年にようやく上映が許可された。


10月12日(土) @東北大学 川内南キャンパス 文化系総合研究棟(C14)11階大講義室

主催:Nitrate films/共催:東北大学教育学部同窓会
入場無料

13:00 『大学―At Berkeley』

At Berkeley/2013年/244分(途中休憩あり)/英語(日本語字幕つき)/作品提供:コミュニティシネマセンター
カリフォルニア大学バークレー校は、アメリカで最も古く権威のある総合大学。世界有数の研究教育機関であり、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。授業や研究、構内で行われる学生たちの活動、また、大学を維持・管理・経営していくための無数の会議や行政との折衝など、「大学という社会」の諸相。


10月13日(日)・14日(月祝) @せんだいメディアテーク7階スタジオシアター

主催:Nitrate films
入場料:1作品1500円(当日受付にて)/学生無料

13日(日)10:30  『高校』

High School/1968年/75分/英語(日本語字幕つき)/作品提供:コミュニティシネマセンター
監督第2作目。フィラデルフィア郊外にある、中産階級の子どもたちが通う高校。朝のホームルームや授業、生活指導や進路相談、そして、男女別に行われる性教育や家庭科などの様子が見られる。当時の高校の記録であると同時に、教師と生徒の権力関係、ベトナム戦争の最中にこの題材が取り上げられた意味を考えざるを得ない。

13日(日)12:30  『ボストン市庁舎』

City Hall/2020年/274分(途中休憩あり)/英語(日本語字幕つき)/作品提供:ムヴィオラ
ワイズマンの出身地で、多様な人種と文化が共存する大都市ボストン。警察、消防、保健衛生、高齢者やホームレス支援、同性婚の承認などさまざまな行政サービスの現場で働くマーティン・ウォルシュ市長と職員たち。本作はトランプ政権下で撮影され、監督曰く「ボストン市庁舎はトランプが体現するものの対極にある」。

13日(日)18:00  『インディアナ州モンロヴィア』

Monrovia, Indiana/2018年/143分/英語(日本語字幕・英語字幕つき)/作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭
インディアナ州にある農業中心で人口1000人強の小さな町、モンロヴィア。2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利した後、ワイズマンは保守的な共和党支持者が多く昔ながらの生活様式を守る《善きアメリカ人》が暮らすこの町へと向かう。狂乱のトランプ支持者のイメージを覆す、現代アメリカを支える無名の人々の実像。

14日(月祝)10:30  『基礎訓練』

Basic Training/1971年/89分/英語(日本語字幕つき)/作品提供:コミュニティシネマセンター
『高校』と同様、ベトナム戦争の時期に撮影された作品。ケンタッキー州フォートノックスの基地での、一般志願兵のための訓練の様子をとらえている。行進や銃の使い方だけではなく、生活指導やカウンセリング等を通じて若者が兵士へと教育される。スタンリー・キューブリック監督『フルメタル・ジャケット』に影響を与えた。

14日(月祝)13:00  『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』

In Jackson Heights/2015年/189分/英語など(日本語字幕つき)/作品提供:ムヴィオラ
ニューヨーク市クィーンズ区の北西に位置する人口13万人のジャクソンハイツは、世界中からの移民とその子孫が暮らし167の言語が飛び交う町。ワイズマンは、教会、レストラン、コインランドリーなどあらゆる場所、そして、地域のボランティア、セクシャル・マイノリティ、不法滞在者、商店主などあらゆる人々に目を向ける。

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