『恐ろしきかな』
『恐ろしきかな』【超短編小説 066】
君のことを思うと夜も眠れぬ
指と指が触れる刹那に感じた皮膚の下を這う恍惚感
鼓膜に優しく触れる低い声と生温かい吐息
とめどなく纏わりつき離れようとしない肌と肌
物狂おしき感触が現(うつつ)を支配する時
さもそこに存在するかのように君の像が有る
花を見ても蜂を見ても君を思い
虹を見ても雲を見ても君を想い
離れている烏兎は長く心も体も重い
君無き世界は意味無き世界
君無き世界はただ泣き過ごす
ああ 恐ろしきかな
こんなにも君を欲する情熱が我が身を燃し溶かす
目に映るものが移ってもまた君が写る
花嫁が通っても葬列が通っても
列車が通っても蟻が這っても
そこに写るは君の姿のみ
ああ 恐ろしきかな
内から生まれ出づる耽美な心緒の一切が今は何も無い
ああ 恐ろしきかな
わたしの心の移りにけりな いたづらに
ああ 恐ろしきかな
恋心よ
《最後まで読んで下さり有難うございます。》
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