『冬』
『冬』【超短編小説 083】
春の日差しは心地よいですか?
花咲く景色は嬉しいですか?
あなたの頬を優しく撫でる
温かな風は気持ちいいですか?
移り行く季節の真ん中に立つあなたは
今 幸せですか?
何気ないあなたの仕草が僕の心をくすぐるんです
冷えた手を自分の息で温めたり
寒さで耳が痛いとふくれたり
せっかく淹れたコーヒーも他の事に気を取られて
飲む頃には冷めている
そんなコーヒーカップを持ちながら
ぼんやりと冬空を眺めていたあなた
そんなあなたに見つめられると僕は
恥ずかしくなって窓ガラスを白く曇らせる
曇った窓ガラスの上をあなたの白くて細い指がやさしく滑る
そして現れた文字を見て僕の鼓動は速くなり
頬を紅潮させるようにさらに窓ガラスを曇らせる
次々に生まれる細かい水の粒子でじわじわと見えなくなる文字
それを眺めるあなた
次の日 僕は雪を降らせたね
空を見上げたあなたの唇に舞い降りる一粒の結晶
それは、あなたと僕の初めてのくちづけ
一瞬で溶けて消えた冷たい感触を確かめるように
あなたは指先で唇にそっと触れる
その唇が艶やかに微笑む
忘れられない記憶
しばらく僕はいなくなるけれど
3つの季節が通り過ぎた後にまた会おう
その時までさようなら
どうぞ 元気でいて下さい
その時までさようなら
どうか 幸せでありますように
その時までさようなら
僕は あなたを愛しています
《最後まで読んで下さり有難うございます。》
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