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超短編小説 032

『成長』

三歳の愛息子は、僕が「ただいま〜」と言って家に帰ると、「ただいま〜」と言って、出迎えてくれる。

いやいや「おかえりなさい」でしょって思うけれどそれは言わない。

息子が片付けをしてくれた時、僕は「ありがとう」と言う。すると息子も「ありがとう」と言う。

「どういたしまして」っていう返しもあるんだよって思うけれど言わない。

みかんを食べる時、3個くらいみかんを並べて、「好きなの食べていいよ」と僕が言うと、同じように「好きなの食べていいよ」と息子も言う。

僕はこのオウム返しが大好きで、「いい天気だね」とか「おいしいね」とか「しあわせだね」とか、いっぱい話しかけてしまう。これらの言葉に息子は全部、オウム返ししてくれる。それがとても嬉しいのだ。

オウム返しをしてくれる事を分かっていると、自然と優しい言葉が出てくる。自分に返ってくる言葉を嫌な言葉にしたくないからだと思う。

ある夜、寝かしつける為に息子と一緒に布団に入って、本を読んであげた。ウトウトしてきた息子に「おやすみ」と言うと「おやすみ」と息子。

その日は、なんとなく「あいしてるよ」と言ってみたら、息子は「僕も」と返事。

息子の成長速度がちょっとだけ遅くなるように、願いを込めてギュッと抱きしめながら寝た。

《最後まで読んで下さり有難うございます。》

僕の行動原理はネガティブなものが多く、だからアウトプットする物も暗いものが多いいです。それでも「いいね」やコメントを頂けるだけで幸せです。力になります。本当に有難うございます。