見出し画像

【SXSW2022速報】未来学者Amy Webb氏が予想するテクノロジートレンドの要点を一挙に解説!

世界中から注目を集める最先端テクノロジーの祭典SXSW(South by Southwest)。前回の記事ではスタートアップピッチアワードに輝いた9社を紹介しましたが、今回は毎年大きな注目を集めるセッションの1つである未来学者Amy Webb氏によるテクノロジートレンドを解説していきたいと思います。

未来学者Amy Webb氏によるテクノロジートレンド予測

未来学者のAmy Webb氏はNew York Cityに本社を構えるコンサルティングファームFuture Today InstituteのFounder&CEOならびにNYU Stern School of Business(ニューヨーク大学の経営大学院)の教授です。SXSWでは毎年、Future Today Instituteが出すテクノロジートレンドレポートの要点をまとめたセッションが大人気で、今年も世界中から注目を集めていました。

今回のレポートで発表されたのは、AIやClimateなど13カテゴリーのトレンドです。本記事ではその中から5つを取り上げて要点を紹介をしていきたいと思います。

1 Artificial Intelligence

画像1

Future Today Institute Tech Trends Reportより抜粋


日本語訳:
AIの本当の未来
将来、AIは自ら進化し、より優れた新型のAIを生み出せるようになるでしょう。このプロセスは「自己進化」と呼ばれます。自己進化により、AIは時間とともにより賢く、より効率的になります。また新しい環境や状況に適応し、より多機能でパワフルなAIを実現できるようにもなるでしょう。AIは近年すでに自己進化の兆しを見せています。例えばGoogleのAlphaGoプログラムは自分自身と対戦し、他のどのプログラムよりも優れた碁の打ち方を学習することができました。AIが進化し続けることで、私たちはより素晴らしい成果を期待できるようになるのです。人間よりも賢く自己進化したAIは、将来的には実際の知能と見分けがつかないほど高度なものになります。人類はいずれ技術的特異点を達成し、宇宙に関する疑問もすべて解決するでしょう。そして私たちは人間ができるすべてのことを、より高いレベルで実現できるロボットを生み出すのです。こうしたロボットは自我を持つようになり、私たちは人間と本質的に対等なものを作った結果に対処する必要があります。

・上記シナリオはAmy Webb氏から、「500字程度の短い論説を書いてください」とGPT3(文章生成言語モデル)に指示して書かせたもの。GPT3は3.29秒でこの文章を書き上げ、Amy Webb氏は編集する必要がないと判断した。

・今後10年間でGPT3のようなAIを活用したテクノロジーの進化により、現在人が行っている一部の作業を自動化し、他の作業を補強することで、知識集約型の経済が再構築されると予想。

関連記事:文章生成言語モデルGPT3を活用するスタートアップ5社

2 Climate, Energy & Space

画像2

Future Today Institute Tech Trends Reportより抜粋

・2030年には天気予報アプリは気温、雨、雪、風の予報にとどまらず、猛烈な竜巻、オレンジ色の空と煙、大洪水などといった異常気象が発生する可能性があることを示すようになる。

・今後、それらを引き起こす地球温暖化問題はより深刻になる中、あらゆる規模の企業がこれまで以上にESG(環境・社会・企業統治)に対する取り組みを強化し報告することが求められる。

・Salesforceは昨年の年次カンファレンス「Dreamforce」において、可能な限り100%再利用可能なエネルギーを導入し、100%達成できない場合はカーボンオフセットに取り組むと発表。

・サステナビリティ領域に特化したインデックスファンドも増えており、現在約2500億ドルの資産を管理している。この領域は2022年末には53兆ドルにまで成長する可能性がある。

3 Work, Culture & Play

画像3

Future Today Institute Tech Trends Reportより抜粋

・Upskilling(スキルアップ)への投資が増加中。雇用者と従業員の両方がお互いの関係性を維持するためのUpskillingの仕組みに注目している。

・168年の歴史を誇るアパレル企業Levi Strauss(リーバイス)は、社内で機械学習ブートキャンプを通じてAI未経験の従業員に学習の機会を与えるなど、人材育成への投資を強化。

・米国カリフォルニア州パロアルトに本社を置くWorkera.AIが提供するプラットフォームでは、定期的に技術スキルの評価を行い、雇用主が求めるスキルやキャリア目標を従業員が達成できるようパーソナライズした個人学習プランを作成。その「精密なスキルアップ」が、スキルギャップを解消してチームを発展させることに繋がる。

・Levi Strauss、Target(米国の量販店)、Walmart(米国のスーパーマーケット)など、非IT企業もWorkera.AIのようなUpskillingプラットフォームを活用して従業員の維持と再教育に取り組み始めている。

4 News & Information

画像4

Future Today Institute Tech Trends Reportより抜粋

・人々がより多くの時間を仮想空間で過ごすようになる中、仮想空間内と現実世界で起こる出来事のギャップや矛盾をどう報道するか、アバターによる発言をどう伝えるのかなど、ジャーナリストはニュース価値のあるイベントやアバターの取り上げ方を再定義する必要がある。

・メタバースへの投資が増えるにつれ、より多くの有名人、政治家、企業が仮想空間の聴衆にアクセスすることが予想される。そうして仮想空間内での出来事の重要性が増していく一方で、現実世界で実際に起こる出来事とは一致しない可能性も出てくる。

・その他、AI領域でも取り上げたGPT3などのAIを活用したテクノロジーにより精度の高い記事やニュースレターの作成を自動生成できるようになる一方で、編集者はAIアルゴリズムのバイアスとどのように向き合うのか、ジャーナリズムとテクノロジーの付き合い方に注目が集まっている。

関連記事:メタバースで注目!XRテクノロジーカンファレンスAWE2021の受賞スタートアップ

5 Telecommunications & Computing

画像5

Future Today Institute Tech Trends Reportより抜粋

・6G(6th Generation)は5Gに続く第6世代の広域無線技術。専門家は6Gの登場時期を2028年から2030年と予想しているが、多くの業界リーダーは既にこの新しい規格を理解し定義しようと努力し始めている。

・宇宙ベースのインターネットは、世界中の通信サービスプロバイダーのマージンを圧迫し、その存在意義を失わせる可能性を秘めている。

・レイテンシーの新しい基準として1ミリ秒を開発。レイテンシーとは、ある場所から別の場所にデータが転送されるのにかかる時間のことで、現在は環境にもよって異なるが約15ミリ秒から44ミリ秒。新しいプロトコルではその速度を1ミリ秒に短縮することができ、ゲームやウェブ会議などリアルタイム性が求められるサービスに大きな効果を与えると予想される。

・NaaS(Network as a Service)の利用が今後より増加していくと考えられる。企業が独自のネットワークインフラを構築して維持するのではなく、サブスクリプション型で従来よりも柔軟性があり高いセキュリティのネットワークを利用できるようになるだろう。

注目ポイント

私が今回注目したのは、Upskillingです。米国ではGoogleやMetaなどのテック企業だけでなく、非テック企業のターゲットやウォルマートなどが従業員にAI・MLなどの教育環境を与え、AI人材に育てるという取り組みが活発に行われ始めています。

日本ではUpskilingの類似の言葉でリスキリングというキーワードが浸透しつつあるかと思います。リクルートワークス研究所はリスキングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

ちょうど私自身、今月からUC Berkeley HaaSのAL・MLの6ヶ月のコースを受講し始めたのですが、周りの受講生の話を聞くとPythonなどのプログラミングの知識だけでは今後の変化に対応することが不安という人、AL・MLの知識がないと将来に不安を感じている人など、テクノロジーの変化に対応しようという人がほとんどでした。

米国でも日本でもリスキングのトレンドは今後より普及していくことが予想される中、リスキングを支えるスタートアップやエコシステムの変化が大きなビジネスチャンスになるかもしれません。

関連記事:【SXSW2022速報】スタートアップピッチアワードに輝く9社をご紹介!

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?