TRPGシナリオ製作術 【18個の脚本技術とゲームデザイン、ゲームプランナー技術】

TRPG、遊んでますか?
この記事は忘備録的な側面もあるので前置きは無し!
この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。


◎まず記事のタイトルである 【脚本執筆技術とゲームデザイン・プランナー技術の両立?!】 の意味とは

ゲームというものは、シナリオのストーリー執筆を担当するプロと、ゲームシステムに対応するルール的な処理や難易度を考えるプロがそれぞれ別に存在するのが普通です。近年は一人で3Dアクションゲームを製作してしまう猛者――つまり、ストーリーもゲームシステムや難易度も3Dモデル製作も3D用のゲームエンジンを使用する技術もゲームプログラミング技術もビジュアルデザイン技術も全てを持つ超人――もいらっしゃいますが、そもそもゲームというものは、複数人のゲーム製作のプロが集まって、技術を持ち寄って合体させる努力の結晶物であると認識しましょう。太古の原始人ですら皆でルールを決めてボードゲームを作っていましたので、一人でTRPGシナリオを製作することは難しいことなんです。
その上で、TRPGシナリオを製作するにあたって改めて考えてみると、脚本執筆技術とゲームデザイン・プランナー技術の三つがあれば何とか形にはなるはずです。勿論、イラストを描ける技術があればシナリオに登場するNPCやアイテムなどをイラストとして用意出来るでしょうし、人が読みやすい文章を作るためにグラフィックデザインの技術が役に立つでしょうが、TRPGシナリオとして最低限なのはストーリーとゲーム性です。今後このシリーズ記事では、ストーリーとゲーム性の部分に有用だと思われる技術について知った情報を筆者の言葉でまとめておきます。

▼脚本執筆技術について

  • TRPGシナリオはゲーム処理指示書でもあるし、演出指示書でもあるし、設定資料集でもある

  • PLもGMも全員が演者であり観客でもあるため、TRPGシナリオ作者はGMもPLも楽しませることが出来るような文章を書く必要がある

なぜ小説執筆ではなく脚本執筆なのか。TRPGシナリオからゲーム要素を抜いたら、テーブルトークロールプレイシナリオです。これはつまり演劇脚本ということになるでしょう。小説とは少し違って、演劇脚本には演者に伝えるために世界観の説明や各キャラクターの設定、演出指示なども書いてあります。そういった演出のテクニックを同時に取り入れるために脚本技術が必要です。
確かに小説のテクニックも応用することは出来ます。しかし、小説というものは読者一人が作家の文章からイメージを膨らませて、頭の中で好きなように演出を想像します。これは作家と読者の一対一のエンターテイメントです。しかし、TRPGシナリオは作者の脚本を参照しながらGMとPLが演者として役割を演じます。更にPL(と、場合によってはGM)は観客の立場でもあります。TRPGの物語は参加者皆で作り上げる必要があるため、GMはPLのロールプレイを補助する指針が必要になり、そのためにはシナリオ内におけるゲーム的な処理方法の指示、世界観やNPCの設定資料、それぞれのシーンの演出指示が必要です。そういった情報をシナリオ内に分かりやすく記述する必要があるため、小説の技術だけではなく脚本技術が必要です。更に大変なことにPLは台本を渡されていないため、全てアドリブで演じる必要があります。
結局のところ、作者が書いた文章を初めに読むのはGMであり、GMがその面白さを演出によってPLに伝えて、楽しくなったPLがシナリオの世界観に没入していく流れを作る必要があります。そのためには、『PLが世界観に没入出来る流れをGMが作れるようにするための文章』を書く必要があり、綺麗で美しい風景描写や、切なくて思わず泣いてしまうようなストーリー展開だけでは不十分ということになります。

▼ゲームデザイン・プランナー技術について

  • ゲーム的な処理とストーリーはお互いが影響し合っている

  • PLやPCの選択をどのように処理すると面白いのかを考えるために、ゲームデザイン・プランナー技術が参考になる

デザインとプランナーというカテゴリーについて厳密に定義しようとすると話の本筋から外れます。なので、ざっくりとこの二つの技術をゲーム技術として参考にしていきます。ゲームデザインとはルール的な要素のことを、プランナーはシナリオ難易度的な要素のことを扱っています。
ロールプレイングゲーム全般はゲームルールや難易度がストーリーに影響を与え、ストーリーがゲームルールや難易度に影響を与えています。この関係性があるからこそ、ゲームのシナリオはゲームのシナリオとして成立しています。更にTRPGシステムとして説明すると、PLやPCたちが選んだ行動をルールや難易度というシステムで処理します。その結果は、PCたちのいる世界、シナリオに影響を与えます。その影響で変化した世界が、ルールや難易度というシステムで処理されます。その結果、ゲームとして取り扱いやすいデータになった情報をPLやPCたちが受け取ります。情報を受け取ったPLやPCたちは、その情報から色々考えて、次はどういった事をするのか選択します。このように言葉にすると、ゲームルールと難易度に関係する技術は、TRPGシナリオを執筆する上で切り離すことが出来ないと分かります。
綺麗で美しい風景はPCの行動によって別の風景に変化する可能性がありますし、切なくて思わず泣いてしまうような過去を抱えたNPCも、PCの行動によって違った結末を迎える可能性があるのがゲームのシナリオといえるでしょう。もちろん、PLの提案と希望が最優先されるわけではなく、ゲームシステム側のルールやシナリオ内のルールに従ってシナリオの世界は変化するべきなので、PLやPCの選択に影響されない世界やNPCをダメだとするわけではありません。

〇TRPGシナリオ執筆の技術たち

ここからはお待ちかねの技術の話です。まず、知っている限りの技術を列挙していきます。それぞれ概要の一文を併記しますが、今回の記事では詳しい説明を省きます。以降の記事シリーズでそれぞれの項目を取り扱った記事を執筆していく予定です。気になる技術があって、記事が出来上がるまで待てない! という場合は、検索して調べて自分の言葉で読み砕いて習得することを目指してみてください。

▽キービジュアルといったシナリオ執筆の出発点たち

断片的なエピソードやシーンを思いついて、イラストや漫画を観て、音楽を聴いて、といったことからシナリオのネタを思いつける。人ぞれぞれなので自分にあった方法を。音楽主導、美術主導という言葉もある。

▽シナリオテーマは描写で伝え、シナリオトーンは事前に伝える

シナリオのテーマとは主題。主題というほど大げさなものでもないことがある。シナリオのトーンとはシナリオ全体を通した雰囲気のこと。ギャグなのかシリアスなのかということ。テーマは描写やセリフで語っていき、最終的にPCにテーマにそった選択を迫る。トーンは事前に分かりやすくPLに伝えておき、PCのロールプレイの指針になるようにする。

▽メインプロットとサブプロット

プロットとは出来事のまとまりのこと。PCが主に関わる出来事をメインプロット、しかし出来事というものは常に世界のいたるところで起きている。メインプロットに対して丁度いい、または面白いタイミングで交差するように発生する出来事のまとまりのことをサブプロットという。どういうようにサブプロットを交差させるべきなのかは後述する。

▽派閥と衝突

社会的な生物はだいたい派閥に属している。無派閥も派閥の一種。そして派閥があるということは反対の派閥と何かしら衝突して喧嘩している。無派閥は社会と衝突している。同族同士、つまり人間同士も、モンスター同士でも、派閥と衝突はある。派閥内にも穏健派と過激派に別れて争っていたりする。そして最悪の事態は内戦、紛争、戦争という結果になる。PLとPCは、これら派閥たちとどう関わるのか選択することになる。

▽直近の問題とは関係の無い『謎と秘密』

PLとPCは謎や秘密に気づくと必ず暴くか暴かないか、解明するのかどうかの選択をする。現在巻き込まれている問題に関係する謎なのかどうかは、暴いてみないと分からないのが理想であり、自然でもある。謎や秘密を暴こうとするとリスクが生じて、リスクと情報を天秤にかけて選択させるのがゲームの基本。必ず直近の問題に直接関わる謎と秘密しか出てきませんよ、謎や秘密は簡単に追求出来るし危険も全く無いですよ、というシナリオを作ってしまった場合、謎を追求するかどうかの心理的葛藤や、リスクとの選択は起こらないので、PLは「じゃあ調べます」と宣言するしかない。

▽ランダムなイベントシーンを発生させる

TRPGシステムには大抵ランダム要素が組み込まれている。そのシステムにあった方法でランダムなイベントシーンを挿入すること。小説や演劇でランダムなイベントシーンは存在しない。ゲームだからこそ挿入出来るシーン、だからこそ発生させる。

▽メインプロットやサブプロットと関係していない危険

PCを危険な状況に追い込むのはメインプロットやサブプロットだけではない。PCにとって危険な状況は緊張を生み、危険を解決して緊張が緩和するというリズムが没入感を作る手助けになる。メインプロットやサブプロットで発生する危険だけで緊張と緩和をコントロール出来ないときには、危険をそのまま追加するだけでも良い。前述のランダムイベントシーンで挿入しても良い。しかし、ストーリー上不自然な危険の追加は没入感を失うのでやってはいけない。

▽ステークス(掛け金)

脚本の技術用語。物語の登場人物は問題を解決するために何かを掛けざるをえなくなる。富や名声、恋人、自分の命などなど。問題を解決しないと何かが失われる定番の展開のこと。TRPGに落とし込むならば、もちろんPCたちに何かを掛けさせる展開も良いが、NPCが何かを掛けている状況でも良い。

▽キャラクターアーク

物語のテーマに関わったキャラクターの考えが変化するかどうかが重要であるという考え方。主人公の考えが変化するストーリー展開も、考えが変化しない展開もどちらもありえる。しかし、主人公の考えが変化しない展開の場合は、周りの誰かが変化して、その変化がテーマに関わっていることが多い。

▽魔法は一回だけ

ストーリー上不自然なご都合主義的展開は一度だけ許される。二度や三度と行えば没入感は失われる。剣と魔法のファンタジー世界でも魔法は一回だけという意味ではない。

▽『没入感』とは

PLに感じてほしい感覚であり、大体の技術はこの没入感を得られるために体系づけられた技術でもある。ストーリー的な技術でも、描写の技術でも、ゲームデザイン的な技術でも、ゲームプレイに集中、没入してもらうことが何より重要。

▽情報は3種類の階層がある『解決方法』、『糸口』、『手掛かり』

ゲームのシナリオは問題解決するためのストーリーであって、問題を解決するためには情報を集める必要があって、その情報が出てくるのには順番がある。問題の『解決方法』、問題の解決方法までの『糸口』、その糸口までの『手掛かり』である。複数の手掛かりから糸口を掴み、糸口を手繰り寄せて解決方法に辿り着く必要がある。先に解決方法が分かったら、糸口も手掛かりもいらない情報であるが、TRPGではPLたちの行動によって度々手に入る順番が逆になることもある。

▽情報を設定するために『対象』、『条件』、『結果』を考える

『対象』は人やモノ、グループなど。『条件』はその情報が出てくる条件であり、技能やステータス判定で成功するのが条件の場合は、どの技能なのか、どの難易度なのかということ。『結果』は出てくる情報のこと。

▽伏線は3種類、『伏線』、『前フリ&フラグ』、『匂わせ』

読者に気づかれないように張っておく『伏線』、言葉にしておく『前フリ』とお決まり台詞の『フラグ』、事前に雰囲気作りだけして結果はどちらでも良い『匂わせ』

▽三幕構成について

第一幕、第二幕、第三幕とストーリーを分割して考える脚本用語。それぞれの分割された部分にストーリー上重要なポイントが設定されているため、サブプロットがメインプロットと交差するタイミングとしても丁度良い。

▽フロー理論

物事に集中するときの話であり、別名はゾーン現象などとも言われる。この理論をゲームに落とし込んだ場合、PLの技術に対してゲーム側が的確な難易度を提供し続けるとフロー状態、ゾーン現象が発生するという。さらにTRPGに落とし込むのであれば、PLに適切な難易度の謎解き、戦闘、RP、選択肢を提供し続けることによってフロー現象を発生させることをいう。TRPGを遊んでいるときに2~3時間プレイしていても、30分や1時間ぐらいに感じてしまうときの状態はフロー現象が発生したといえる。

▽PLは選択する

小説や脚本は、主人公の行動を選択できない。ゲームはPLが行動を選択する。選択するためには情報が必要で、前述してきたステークスやキャラクターアークといった環境で選択肢は常に変化していく。そしてTRPGともなれば、選択肢の数は常に複数あるとして、どれを選ぶのかで、世界に影響を与えていくのがゲームである。世界に影響を与えているという感覚はゲームの醍醐味でもあるため、PLやPCには常に選択を意識させることが必要である。ゲームのマリオはPLがAボタンを押すとジャンプするが、漫画のマリオは作者しか操作できない。

▽緊張と緩和

緊張はストレスとも言い換えることが出来る。緊張と緩和はドラマチックな感情を想起させるための技術で、PLに適度なストレスを与え、適度なタイミングでストレスから解放する技術である。PLに緊張感を持ってもらう方法は非常に多岐に渡るが、それほど緊張感を持ってもらう技術は重要な技術としてまとめられていて、調べればすぐに見つけることが出来る。もちろん、緊張やストレスとは無縁なゲームも存在していて、そういったゲームではドラマチックな感情ではなく穏やかな感情を想起させるというコンセプトがあるはず。TRPGシナリオにおいても、書こうとしているシナリオコンセプトに合わせよう。

●おわりに

上記の技術は筆者の知っているものをほぼ全て列挙しましたが、今後は詳しい解説の記事を執筆していく予定です。もしくは、日々の情報収集によって新たな技術を知った場合も記事にする予定です。ここまでお目通しいただきありがとうございました。執筆のお役に立てば幸いです。

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