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【若手建築設計者に伝えたい"あなたは何をする人なの?"という話】

建築設計者に『あなたは何をする人か?』という質問はおかしいですよね?
もちろん、「建築設計する人」です。

では、『何を何のために?』となると少し話が違ってきます。

そもそも、何故あなた(設計者)がこの設計業務を任されたのでしょうか?
独立している建築家の方でも、組織事務所の一員として設計を取りまとめる責任者でも同じです。

大きく分けて、4つのパターンがあると思います。

それは、

・特命
・コンペ
・プロポーザル
・入札

実はそれぞれ、選ばれ方の特徴があります。

特命は、とにかく「あなた(あなたの会社)に設計してもらいたい」というクライアントの要望で実現するものです。

コンペは、クライアントが実現したい建物・施設の概要を公告して、それに一番ふさわしい提案(デザイン)が選ばれるものです。
完成イメージが大事になってきます。

プロポーザルは、クライアントからより詳しく建物・施設の概要が発注要項書(性能規定書)によって示されます。
そこには、必要な機能や規模、使い勝手的なものが示され、同時にその設計をするに相応しい人物(会社)を選ぶために、資格や実績、体制などの提示を求められます。
そして、その条件を満たした一番ふさわしい人(会社)が選ばれます。
設計者としての資質が大事になってきます。

入札は、クライアントが望む設計業務を一番安く受けてくれるところを選ぶことになります。
一見、クライアントにとって一番得しているように見えますが、入札する内容、つまり発注する設計業務の内容がしっかり詰まっていないと、あとになってトラブルになることが多い選定方法と言えます。

入札は一般的ではありますが、この場合ちょっと異質になりますので置いておいて、残り3つについてですが、さらに2つに分類することができます。

まず、特命・コンペですが、極論すると"ビジュアル"が重視され、その人(会社)の"デザイン(絵)"が求められた・評価されたということになります。

一方、プロポーザルはクライアントの要望する建物・施設を確実に、且つクライアントも見落としてるような課題にも気づき、技術的な解決含めて実現に導いてくれる"スキル・資質"が求められた・評価されたということになります。

お気づきでしょうか?

ここには、非常に大きな違いがあります。

要は、

『デザイン(絵)の力で選ばれたのか?』

『実行するスキル・資質で選ばれたのか?』

の違いがある訳です。

そして昨今、特に僕のようなプロジェクトマネジャーが関わるようなプロジェクトだから尚更だとは思いますが、コンペよりもプロポーザルが多くなってきています。

それは何故か?

今までは"著名な建築家に設計してもらう"、"斬新なデザインの目立つ建物を求める"ことも少なく無かった思いますが、今は「予算が決まっている中で、必要な機能を満たした、維持管理がしやすく、ランニングコストが掛からない建物を求める」という意識が高まってきているからです。

つまり、"デザインありき"では無く、"機能・性能・コスパありき"の考え方がより高まっていると感じます。

当然、ビジュアルとしてのカッコよさも求められますので、"機能・性能・コスパは満たした上でのカッコよさ"をクライアントに提供する必要があります。

厄介なのが、クライアントが"機能・性能・コスパは満たした上でのカッコよさ"を求めているにも関わらず、ここが食い違ってしまった設計者が何かの弾みで選ばれてしまった時です。

僕らが設計者選定に関わらなかった場合に、この悲劇が起きることが多いです。

何しろ、設計者は自分の"デザイン(ビジュアル)"が評価されたと勘違いしているので、そもそもクライアントが要望している機能・性能・コスパを満たすための意識が薄いことが多い。
いや、わかっていたとしても、自分のデザインを優先するあまり「機能・性能・コスパを損なうことも仕方がない」とすることがある。
または、あえて機能・性能・コスパが損なわれることに触れず「その程度の機能ダウンは仕方がない」と勝手に思い込むことがある。

こうなってしまうと、設計をまとめるのもなかなか苦労します。

クライアントは、全てが建築に長けている人たちではありません。
設計者が説明する内容を「フンフン」と聞いていても、それが自分が要望していることを満たさないことがわからない。
このままでも「自分の要望通りのものができる」と思っている。
しかし、設計者は「説明して、理解を得た」という。
ここのすれ違いはとても厄介です。
僕らはこのイメージギャップを見つけた瞬間に、方向修正を図るのですが、設計者はなかなか理解しない、受け入れないということがあります。

気持ちはわからなく無いですが、こうなってしまうと作業は先に進まなくなってしまいます。

ここで大事になってくるのは、『設計者は何を求められているのか?』ということです。

これは、コンペであろうがプロポーザルであろうが、非常に重要なポイントです。

確かに、選ばれた設計者としていろいろ言いたいことはあると思いますが、ほぼ素人のクライアントが完璧な発注要項書を作り、完璧に設計者の素養を見抜いて選定するのは至難の技です。
(僕たちは、ここに細心の注意を払いますが、それでも設計者側の理解・認識が薄いまま選定されてしまい、後からの意識の共有にかなりの時間と手間暇をかけることがあります。そこは、仕事をはじめてみないとわからないところもあり、難しいポイントです。)

しかしそこは、設計者が"建築のプロ"として、『クライアントが真に望んでいるものは何か?』を見つめて、真摯にそこに向き合って、仕事を行なっていくことが必要だと思います。

『クライアントが求めるものは何か?』

『そのために自分は何をすべきなのか?』

若い設計者さんは、この辺も意識しておいた方がいいと思います。


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