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クリーンはスイングで反動をつけてもいいのか?

SNS上にアップされるクリーンの動画をみていると
2ndプルをする前にバーベルを前後にスイングしている挙げ方を見ることがあります。

挙げ方としては
基本の挙げ方ではありません。
しかし、ものすごい重量を挙げる人が居るのも事実です。

そこで質問が来ました。
「スイングするクリーンのメリット・デメリットはありますか?」

基本の挙げ方ではないので
エラー動作に含まれる挙げ方ですが、
すごい重量を挙げてる人もいるので重量を挙げるという点で言うと否定が難しくなります。

今までは自分で実践して
挙げにくさを感じていたので指導はしないしやらない方がいいと言っていましたが、
それだけで否定するのも重量が挙がっている側からするとスッキリ納得はできないだろうなと思いました。
なので色々調べてスイングにどんなメリットがあるのか考えてみます。
その上でデメリットも考えます。

スイングするメリットがデメリットを上回ればスイングするクリーンは自身のプログラムに組み込むこともあるかもしれません。

今回はクリーンのテクニックの整理とスイングの考えられる効果などをまとめています。
トレーナーや競技指導者の方でクリーンに興味がある方はお読ください。


パワークリーンのテクニック

スイングのことを考える前に
パワークリーンのテクニックを理解していきましょう。
理解することでスイングの発生理由がわかってきます。

ハングパワークリーンとは?

トレーナーの教科書でもお手本になっているウエイトリフティングのハングパワークリーンと、日本の陸上界でよくみられる挙上前にバーベルを前後にスイングして反動をつけるハングパワークリーンは動作が大きく違います。

しかし、陸上選手の中には100kg以上、中には150kg以上をその動作で挙上している。
そこで疑問が出てくるのは
”スイング動作をした方が挙上できる重量が挙げられるのではないだろうか”ということです。

クリーン=パワーの強化という場合
パワー=筋力xスピードなので高重量をクリーンできた方がパワーの強化になりそうです。

では、ウエイトリフターが行なっているクリーンは意味がないのでしょうか?

ということで
ウエイトリフターのような直線的なハングパワークリーンとスイング動作で反動をつけるパワークリーンはどちらをやった方がいいのかを考えていきたいと思います。

まずはハングパワークリーンを整理していきましょう。

ハングパワークリーンとは
・バーベルを持ち上げた状態からスタート
・太もも付け根にあるバーベルを膝付近まで下ろす
・下ろしたバーベルを引き上げる
・コンタクトポイント*でバーベルへ爆発的な力を伝え浮き上がらせる(2ndプル)
・高く上がってきたバーベルの下に体を落としてクォータースクワット姿勢を作りキャッチする
・立ち上がる
というのが一連の流れです。
これがトレーニングの教科書に載ってる一般的なハングパワークリーンです。
※Hang=ぶら下げるという意味があります。

通常のパワークリーンは床に置かれた状態からのスタートで
動作の局面がファーストプル→トランジション→セカンドプル→ターンオーバー→キャッチ→リカバリー(直立する)といういくつかの段階に分かれています。
そのうちのファーストプルを除いた動作を行うのがハングパワークリーンです。

ウエイトリフティング(以下WL)のテクニック指導をする時には、
「真っ直ぐ挙げる」という表現をよくします。
この真っ直ぐとはバーベルの軌道だったり、バーベルと体のバランスのことを指したりします。

WLの成功と失敗を分けるのは、
バーベルの挙上中の軌道というのはいくつかの論文でも分析されています。
WLは床に置かれたバーベルを挙上することにおいては、最も優れたスキルを持ってると思われます。

パワークリーンを行う理由

スポーツでは自分の体を高速で動かしたり、道具を高速で動かす場面が多いです。大きな力を出すだけなら最大筋力だけを伸ばしてもいいが、最大筋力はスピードの獲得に重要だが完全な相関関係はありません。そこで獲得すべきは急激な力の立ち上げと高速での力発揮の2つになります。

パワーはスピードと力発揮を掛け合わせたものなのでどちらか片方を伸ばしてもパワー自体は向上します。
しかし、この2つは反比例の関係にあり、どちらも最大値を出すということが難しいです。筋肉の特性としてゆっくり短縮するときに大きな力を出すことができますが、高速で短縮するときは大きな力が出せません。

例えば、最大挙上重量のバックスクワットは低速で大きな力を発揮しています。それに対して自重のジャンプはバックスクワットに比べて小さい力で高速で動いています。
この相対する2つを伸ばしていくことで高いパワー発揮をすることができますが、パワーは満遍なく鍛える必要があります。
そこで最適なのがパワークリーンです。スクワットよりも早く、自重ジャンプよりも大きな力発揮ができるエクササイズになります。
特にセカンドプルの局面で一番大きなパワー発揮がされるのでトレーニングのエクササイズとして選択する場合は、まずはセカンドプルを適切に身につける必要があります。

”パワークリーンを取り入れることで期待される効果”
・RFDの向上
・脚伸展パワーの向上
・ジャンプ力向上
・スプリント能力の向上
・方向転換能力の向上
・陸上投擲記録の向上
・バットスイングの向上 など

”ハング”パワークリーンを選択する理由

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