伝えたかったあのコトバの解凍をしよう。
考えないようにしている日に限って真夜中の真っ暗な部屋は電気なんか付けなくても
月明かりでいっぱいだった。
その明るさはわたしの心を透かすのに十分すぎて、ついつい月に話しかけて、誰も見ていないことをいいことに顔を濡らす。
でもきっと月にはバレてないはずなんだ。
すぐに風が吹いてくれる。
やさしく拭いてくれる。
気持ちは大丈夫じゃないのに
心がだいじょうぶと言いなさいと言ってくることがある。
何年もタンスにしまっている1つの色褪せた箱の中のコトバたちは、取り出してみるとカピカピで、ポロポロでザラザラでチクッとした。
・
きっと冷凍庫に入れても同じなんだろうなと思った。
この世界では、どうして伝わらないんだろうと思うことの方が多すぎてもうこれ以上誰も信じない、信じたくないとおもったんだ。
おかしいなって思ったときにはもう遅くてみんなが疑心暗鬼になった。
なにかに恐れて何かで寂しさを埋めたい衝動にかられて動き回っているそんな野生動物のような人間たちをみて涙が止まらないんだ。
・
世界にはさ、
そこら中に愛が転がっているのにいざそれを拾おうとすると、どれもこれもカッピカピで錆び付いたものなんだよ。愛と呼べるには固くて痛くて冷たかった。
ても、みんなは、それでもいいから、と
その乾いた愛を拾って、胸に抱えて、
必死に他人に与えて与えて…
もがいているんだよ。
あの日誰にも伝えずにしまったコトバを冷凍庫から取り出した。
当たり前のように固まって、身動きの取れない色のない表情をしているコトバを時間をかけて解凍した。
電子レンジを使っても良かったんだけどね。
見ていたかったんだ、命がもどる瞬間を。
会いたかったよ、って言ってまだ微かにのこる冷気を感じたい。
ありのままが出せない今の時代に順応してしまった哀しさを、体温が戻ったコトバを抱えて誤魔化した。
伝えなくていいの?、
うん、。
伝えたいと思う人に、伝わって欲しいと思う人にだけ、届けばいいと思ったんだ。
・
わたしね、君(コトバ)がすきだよ。
だからずっと私の中にいて欲しいの。
私の傍にいてほしいの。
そうじゃなきゃ、わたしは私じゃなくなってしまうだろうから。
家に帰ったら、部屋の本棚を整理するよ。
君の寝床をつくらなきゃ。
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