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Voicy代表・緒方憲太郎さん流SNSのつづけ方。声と文字のプラットフォームで奥行きのある発信をめざす

2021年4月にはじまったトークイベント「ビジネスに役立つnoteやSNSのつづけ方」シリーズ。このイベントでは、SNSをフル活用している企業の方にご登場いただき、そのノウハウと心構えをお話いただいています。

今回、このスピンオフとして「インタビューシリーズ」企画をスタート。スタートアップの代表や先鋭的な企業で活躍しているビジネスパーソンに、SNSとの出合いや自身がビジネスでSNSを使いこなすようになったきっかけ、現在の活用法などをおうかがいします。

ビジネスのトップランナーといえども、SNSに関しては必ずしもアーリーアダプターではなく、SNSをビジネスに生かすヒントを得たタイミングや、やり方はひとそれぞれ。当シリーズに登場する方々のお話の中で、みなさんが自身のモデルケースとなる例を見つけられるとよいなと思います。

シリーズ第1回目は、音声プラットフォーム「Voicy」代表取締役CEO・緒方 憲太郎さんが登場。各種SNSとの出合いから、自社メディアVoicyとほかのプラットフォームを組み合わせることでどのような相乗効果をあげているかなどについて、教えていただきました。

ゲスト紹介

緒方 憲太郎(おがた けんたろう)さん

SNSのつづけ方Voicy緒方さん1_緒方さんのプロフィール写真

株式会社Voicy代表取締役CEO。公認会計士として務めたのち、海外放浪の旅へ。米国企業、ベンチャー支援会社などを経て2016年にVoicy設立。世の中がハッピーになる付加価値の創出をめざす。座右の銘は「迷ったらオモロい方」。近著に『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』がある。
note https://note.com/ogaken
Twitter https://twitter.com/ogatakentaro

2010年、海外放浪中にFacebookとTwitterに出合う。でもまだ、SNSのポテンシャルをわかっていなかった

ーー緒方さんは元々公認会計士をされていました。会計士は、秘匿情報を扱う仕事のため、SNSとはあまり相性がよくないイメージあります。緒方さんはこのころからSNSを使っていたのですか。それとも、転職されてからでしょうか。

緒方さん ぼく、最初の会社を休職して1年くらい海外を放浪していたんです。その間、オーストラリアにいた2010年ころにFacebookが現地ではやり出して。だれかとお会いしたらまずFacebookを交換する、という感じになっていました。

当時はぼく自身も放浪していましたし、現地で知りあった駐在員の方々や外国の友達が帰国してしまうことがたびたびあって。遠方の人たちと簡単につながれるツールが必要だったんです。そこでFacebookに登録してみたらだれとでもどんどん連絡が取れるし、相手がどんな人かを調べることもできるし、SNSってすごい便利だなと実感しました。

SNSのつづけ方Voicy緒方さん2_海外でさまざまな試行錯誤を重ねていたころ。オーストリアにて。

海外を放浪しながら、さまざまな試行錯誤を重ねていたころ。ボストンでは、シンフォニーホールでオーケストラのマネジメントにも取り組んだ

ーーFacebookがコミュニケーションインフラになりはじめていたころですね。

緒方さん そうですね。Facebookで足りてしまうので、初対面のひととEメールアドレスを交換するということがなくなりました。同じころTwitterも使いはじめたんですが、当初は「見る専」って感じで。その後も、Voicyの起業準備に入る2015年くらいまでは、フォロワーは500人〜600人程度でしたね。そのころはまだ、SNSの世界をうまく使おうなんて考えたこともなかったです。

ーーその後、ニューヨークの監査法人Ernst & Young社を経て、日本のトーマツベンチャーサポート(以下TVS)に入社されています。そのきっかけがFacebookだったというのは本当ですか?

緒方さん 本当です。ぼくはあまりまともな転職活動をしたことがなくて(笑)。あるとき、ぼくのFacebookのニュースフィードにTVS代表の斎藤祐馬さんの投稿が流れてきたんです。それで、「面白そうなことしてますね」とメールしたら、「そっちも面白そうなことしてますね」と返事をもらって(笑)。「帰国したら一緒にご飯食べましょう」と誘っていただいたのが転職のきっかけになりました。

ーーSNSをアクティブなコミュニケーションツールとして使いこなしていますね。Voicyを立ち上げたのが 2016年ですが、それからSNSの使い方は変わりましたか?

緒方さん 完全に変わりましたね。起業するには、おおぜいのひとを自分の事業に巻き込んでいく必要があります。そのためにはまず、自分が描いている世界をきちんと相手に届けなければなりません。本格的に起業準備をはじめた2015年ころから戦略的にSNSを使う方向にシフトしました。

このころには、とくにTwitterがフォロワー数をあげてリツイートで広がっていく爆発的な力があることがわかっていましたので。Voicyで情報発信をしつつ、Twitter経由で投稿を広めることをしました。これはいまも行っています。Voicyについて、どれだけ多くのひとがTwitter上でコミュニケーションしてくれるか。本当にTwitterは、ほかに類を見ないほど巨大な拡散力をもったプラットフォームだと思います。

SNSのつづけ方Voicy緒方さん3_創業当初の様子。共同創業者の窪田雄司さんと

創業当時の様子。共同創業者でエンジニアの窪田雄司さんと。緒方さんは、アナウンサーの父からの影響もあり「魅力的な声をもつひとが活躍できる場を作りたい」とVoicyを設立した

SNSはヘルシーなやり方で。瞬間的にバズるのではなく長くつき合える存在になることが大事

ーーTwitterはその拡散力が時に炎上につながるなど弊害となることもあります。なにを意識してTwitterを利用していますか。

緒方さん 発信する内容に過度な調味料を入れないよう、すごく気をつけていますね。Twitter上には「トータル何百万売り上げた」とか「何千件の成功事例がある」とか、はでなプロフィールのひとがあふれかえっています。でもそういうのは、最初は興味をもたれやすいかもしれませんが、すぐに飽きられてしまうんですよ。たまに見るのは面白いけれど、毎日見るのはうざったいな、と消費されて終わってしまう。

ぼくはどんなサービスも、ヘルシーにやってるものじゃないと最後に残らないと思ってるんです。だから、初めにめちゃくちゃバズる必要はなくって。みんなが嫌だと思わなくて「なんとなく好き」っていう状態をしっかり維持していくことをすごく意識しています。

それに今は、他人に対して「Give」したいと考えている方の方が圧倒的に多いと感じます。だからSNSの世界でも、自分の利益のためだけに動いているひとはあんまり好かれない。他人や世の中のためになることを考えて、しかもそれを自ら楽しそうにやっているひとのところに自然と人々が集まってくると考えています。

ーーnoteも使っていただいていますが、緒方さんにとってはどのような位置づけになるんですか。

自分の制作物をストックする場所ととらえています。noteに投稿している文章は、言葉選びや文章構成など、どうやって見せるかをしっかり考えてつくった、言わばぼくの作品たち。実はこれらの文章が、のちにVoicyの仲間集めに役立つときがあるんです。

シリーズで書いている『声の履歴書』では、Voicy創業前の紆余曲折から現在までの歴史を記録として残していまして。Vol.58(2021年8月3日時点)まで書いていますが、これを読んでくれたひとたちがVoicyとぼくのひととなりを感じて、Voicyに入りたいと言ってやってきてくれる。社外の方々にVoicyが生き生きと活動しているさまを知っていただきたいときも、この文章を読んでもらうと理解していただきやすいですね。

文字を使った”A面”で情報を伝え、音声の”B面”で奥行きを伝える

ーー『声の履歴書』はnoteとVoicyで連動した企画ですね。これは、緒方さんがVoicyで話したことを、あとでnote用に文字化しているんでしょうか。よく経営者の方はそのようにして記事を作成されると聞きますが。

緒方さん 逆ですよ。書いたあとにVoicyでしゃべっています。ぼくにとってVoicyの『声の履歴書』は、「編集後記」みたいなものなんです。徳力さんもブログや本を書いたあとに読者から「読みましたよ」とか「あの話、面白かったです」って言われたら、その後に一言足したくなりませんか?「あれさ、本当はこうだったんだよね」とか、「書けなかったことがあるんだけど実はさ......」とか。

ぼくは、そういうこぼれ話を知ることができる「編集後記」がすごい面白いと思うんです。いわば、CDのA面とB面。A面って、より広範囲のひとに届けるためにちゃん作り切った完成品を入れますけど、B面は自分のより奥深い世界観を見せて、自分の作品世界や作り手自身のことを本当に好いてくれるひとをつくるためにある。

声はこのB面を表現するのにとても適しているんです。読み手が文字情報からだけでは感じ取ることができない、発信者のそのときの感情とか感覚が声のトーンやテンポ、ことばの微妙な間などからにじみ出る。そこにこそ、音声メディアの面白みがあると思うんですよね。これこそが、ぼくがVoicyをやっている大きな理由の一つです。

ひとがコンテンツに興味をもつとき、一番初めは便利さや面白さにひかれます。発信側がそれら受け手のメリットを長く提供しつづけていくと、受け手はだんだんと発信者のことを好きになって、その人の奥行きまで知りたくなる。

だけど文章で奥行きを出すのは難しいんですよね。また逆に、発信者がいきなり文章で自分の奥行きを全面に出そうとしても受け手側は困惑するだけ。だから僕は、文章+音声のハイブリッドで発信していくのがいいと考えているんです。

ーーA面、B面の例え話、よくわかります。一般的なビジネスのシーンにも当てはまるなと思いました。A面だけでもきちんと取引を行うことはできるけれど、B面が伝わってくるひととの方がお互い気持ちよく、スムーズに仕事ができますから。

自分に合うさまざまなSNSを使って自分のB面をうまく出していけたら、SNSは「普通」のビジネスシーンを生きるビジネスパーソンにとっても、非常に役に立つツールになると思いました。緒方さん、本日はありがとうございました。


次回は、リンクトイン・ジャパン日本代表の村上臣氏さんが登場する予定です。

interviewed by 徳力基彦 text by いとうめぐみ

*この連載は、ダイヤモンドシグナルにも寄稿しています


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