素直に書けば反響がくる! “出版社の広報”としてのnote
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素直に書けば反響がくる! “出版社の広報”としてのnote

note編集部

出版市場の縮小傾向は止まらず、ここ数年は雑誌の休刊も相次いでいます。そんななか、noteを活用したプロモーションやコミュニティづくりに挑戦し、成果をあげている出版社があります。

noteでは、読書感想文投稿コンテスト「#読書の秋2020」連動イベントの最後に「本とデジタルの未来 公開大会議」(2020年11月25日)を企画。noteを活用しているライツ社の大塚啓志郎さん早川書房の山口晶さんをゲストにお迎えし、「デジタルを活用した本と読者のあたらしい出会いかた」について、一緒に考えるトークイベントを開催しました。

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出版不況の中でも、ネットと電子出版物は伸びている

・2020年はコロナの影響で児童書、参考書は前年より減少幅は少ない
・インターネットや電子出版物の市場規模は拡大

——司会をつとめるnoteディレクターの志村優衣です。よろしくお願いいたします。さて、本日のトークテーマ「本とデジタルの未来」についてお話する前に、まずは出版業界の現状を確認しましょう。

書籍は1996年をピークに長期低落傾向が続いており、今年だけでも雑誌の休刊が続いています。それでも今年はコロナの影響で、児童書や参考書の需要が高まっていることもあり、前年と比べて売上げの減少幅は抑えられている状況です。

また、読者と本が出会う場所としての書店の売上げも年々縮小傾向です。しかし幸いなことに、インターネットや電子出版物の市場規模は拡大しており、オンラインでの出会いの場や購入機会は増えているのではないか、とも考えられます。

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noteはインターネット上のメディアプラットフォームであり、デジタルコンテンツのインフラとなることを目指しています。そして、コンテンツの盛り上げには、出版社のみなさんとの連携が欠かせません。

出版社のnoteの活用事例も年々増えています。昨年、文藝春秋さんがnote上で定期購読マガジンをスタートしたのを契機に、TV Bros.さんなど複数の雑誌メディアがコンテンツをnoteで販売する取り組みを始められました。

また金子書房さんという専門書の出版社さんや、もともと自社でWebメディアを始められていたホーム社さんがnoteに引っ越してくるなど、どんどん出版社の仲間が増えています。その先駆けが、ライツ社さんと早川書房さんということで、本日お呼びいたしました。

ものを売りたいときは、noteを経由させる

・コーポレートサイトは見てもらえないから読まれるnoteを選んだ
・早川書房では全社でnoteに投稿するコンテンツを制作している
・TwitterとFacebookにnoteのリンクをはり、ECサイトに飛ばす

——読者との接点としてのSNSや自社メディアを、どのように使い分け、活用されているか、教えていただけますか?

ライツ社 大塚(以下、大塚) オンラインで頑張っているのはTwitterとnoteです。Twitterは、弊社のある兵庫県明石市にちなんでタコのアイコンをあしらっているのと、関西弁を使っていることが特徴で、フォロワーのみなさんには楽しんでいただいているようです。

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noteは、ライツ社を立ち上げたあと少ししてから始めました。その頃はまだ早川書房さんくらいしか使っていなくて、「早川書房さんのように歴史あるところが使っているんやったら、やった方がいいだろう」と思ったのは覚えています。

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早川書房 山口(以下、山口) 弊社は2017年末からnoteを始めました。私がそのころの政治経済状況に憤ることがあって、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』を売りたい、もっと読んでもらいたい、そのために連載をしたい、と思っていたんです。ただ、早川書房はECサイトと一緒になったコーポレートサイトしかなく……。コーポレートサイトって、見てもらえないんです。普通、出版社名で検索して作品を見る、ということはしないでしょう。そこで何かないかと探していたら、「あ、noteがあるじゃん」と。

連載は飽きて途中でやめてしまったんですけれども(苦笑)、プラットフォームとしての門は開きました。すると同僚の編集者たちによって、いろいろな使い方が発明されて、だんだんとnoteは本を売るのに有効だという認識が部内に広まっていきました。いまは編集者が好き勝手に記事を作成している状態ですね。

——好き勝手ということ自体、会社だと難しいと思うのですが。

山口 経験年数の少ない編集者は、先輩が様子を見てあげている場合もありますけれども、それを義務にはしていません。編集者なのだから、それくらい自分で判断でしてね、と。もちろん、最初に研修はしています。もともと早川書房のSNSやnoteでは、宗教や政治の話、差別には触れてくれるなとは言っています。もちろん、(そういうテーマの)本を出す時はいいんですけれども、最低限の約束事がないと管理しきれないので。投稿はいまでも自由ですし、会社に何か申請しなければならないということもありません。

——そういう運用体制だからだと思いますけれども、早川書房さんは記事の本数がすごいんですよね、毎月30本以上記事が上がっていて。

山口 そうですね。編集部や営業部のほか、HAYAKAWA FACTORYブランドで展開している名作をあしらったグッズ(Tシャツやバッグ、マスクなど)の販促や電子事業部のセールの告知など、ほぼ全社的に使っています。

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グッズの告知をnoteに掲載し、ECサイトに誘導している

たとえば、昨年ご好評いただいた『一九八四年』マスクの記事なども、コーポレートサイトのニュースに上げて誘導するよりは、noteに上げた方が確実に読まれました。基本的に、TwitterとFacebookにnoteへのリンクをはっています。とにかくものを売りたい時は、SNSからnoteに誘導してからECサイトに飛ばす、というのが基本的なやり方で、かなり効果はあります。

小さい会社の”武器”としてのnote

・noteはライツ社を知ってもらうための手段
・「出版業界紙」が結果的に企業広報、ブランディングになっている
・編集者も自分の興味関心を発信していく時代

——ライツ社さんは社員5人ということですが、noteの運用はどうされていますか?

大塚 5人の社員のうち僕も含め2人が編集担当です。僕が書くこともありますが、もうひとりの編集がほぼ一人でnoteをやっています。むしろ、noteを書くことが仕事みたいな感じになっていて、他の仕事が3割、noteが7割くらいの力で入れていますね。

——正直、少人数の会社で、一人をほぼnote専任にして大丈夫なのかと心配になるのですが。

大塚 早川書房さんには、歴史がある——すなわち、本やコンテンツがいっぱいありますよね。対してライツ社は、新しくて、歴史がなくて、遠いところにある出版社。なので、コンテンツもないし、東京から遠いので読者との接点も少ない。そういう場合に、どうやって自分たちの存在を世の中に知ってもらうか、という手段がnoteだったんです。自分たちのSNSのフォロワーが少なくても、noteならたくさんの人に届けることができるので。

また、出版点数も少ないので、リリースすることもそれほどない。つまり結果的に自分たちのことをあまり書いていないんですが、だからこそ僕らが一番力を入れているのが「出版業界紙」。『明るい出版業界紙(β) on note』というタイトルで、それをずっと一人の編集がやっているという感じですね。

大塚 出版業界が不況だとよくニュースでいわれていますが、実はいいニュースもいっぱいあるんです。たとえば「新文化」(新文化通信社)、「文化通信」(文化通信社)という出版業界紙には、いいニュースや明るいニュースもたくさん載っている。でもそういったニュースは、一般の人には知られていません。

一般の人に知ってもらわないと、新しく出版業界に関わる人が増えないし、本が好きと言いにくい感じにどんどんなっていきます。自分たちがすごく小さい存在になっていくのがイヤだったので、いいニュースを届けようと、出版業界紙を始めました

——実際にはどんなニュースが載っているんですか?

大塚 最近では『地球の歩き方』の編集長さんと、初期のころから編集している方にお話を伺いました。最近、出版社が変わるリリースが出されたことと、国内版を初めてつくったということで話題になり、いいタイミングで取材ができました。

注 2020年11月16日に、ダイヤモンド・ビッグ社が営む『地球の歩き方』などの出版事業およびインバウンド事業が、2021年1月1日に学研プラスに譲渡されることが発表されました。
https://gakken-plus.co.jp/news/info/20201116.html

この記事などもそうですが、取り上げるニュースの内容にライツ社はまったく関係ないんです(苦笑)。いろいろな出版社や、書店、本に関わる人の記事をどんどん上げていく感じです。

山口 それが(ライツ社にとっての)企業広報につながっているわけですよね。それにブランディングでもある。いま早川書房noteのフォロワーは6万7000人くらいで、ライツ社さんが約6万1000人(2020年11月末現在)。創業からの期間や企業規模を考えたらライツ社さんがすごいのでは。「出版業界紙」という広報活動によって、フォロワーが伸びているんだな、と思います。

出版社のnoteの中では、早川書房とライツ社さんのフォロワーは多い方です。まだ創業5年でも、こういう取り組みをすることで、かなり名前が知られるようになったんだから、かなり有効な使い方ですよね。

大塚 ライツ社は歴史が浅いし出版点数も少ないので、「どんな会社?」というところを読者に伝える術があまりないんですよね。でも、「出版業界紙」をやることによって「ライツ社はこういうところに興味があって取材しているんだな」と受け取ってもらえる。

自分たちではなく、ほかの方の宣伝になることをしているんですけれども、自分たちの興味関心のあることを伝えられるし、結果として、自分たちのことを知ってもらうきっかけになれていると思います。

それにまだ信頼感のない出版社でも、新しくライターさんやデザイナーさんに声をかける時に、noteで存在感があれば、「知っています」と言ってもらえます。クリエイターにリーチできることが、すごく大きいなと思います。

——早川書房さんでも、noteで読者との出会いなどありますか?

山口 いろいろとnoteに載せていると、ノンフィクションでも企画が持ち込まれたりします。早川書房は、自分で書いた記事を、自分のTwitterで宣伝している編集者が多いんです。個人広報ですね。私ぐらいの世代の編集者からすると恥ずかしいし、編集者は黒子に徹しなければ、という意識がありますが、いまはそうではありません。編集者も自分がどういう興味関心があってこういう本をつくったんだ、と自分で発信していかないと、うまくいかない時代だと思います。

そういう意味では、若い世代の編集者がSNSとnoteを活用して、書籍だけでなく仕事のフィールドを広げられて、さらに、いろいろな企画が持ち込まれている状況は、弊社にとってもいい流れにはなっていますね。

——ライツ社さんも個人を感じられる発信をされていますね。

大塚 先日、弊社の『リュウジ式 悪魔のレシピ』(著・リュウジ)という本が「料理レシピ本大賞 in Japan 2020」の大賞をいただきました。noteでその報告をしようとしたときに、「受賞しました!」と書いても仕方がないなと思って、著者のリュウジさんとの出会いを書くことにしたんです。どこで出会って、どんな風に声をかけて、一回断られかけて、でも大丈夫だった、みたいな経緯を、改めて著者にラブレターを書く感じでまとめたんです。

これはかなりたくさんの人に読まれました。読者にもその経緯が伝えられたというのも、著者がその記事をリツイートしてくれたのも嬉しかったし、結果、それでめちゃくちゃ本が売れたのも嬉しかった。

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“素直に書く”ということが、noteはできるんです。取材だと型にはまっていたり、ちょっとかっこつけた紹介の仕方をしないといけないんですけれども、noteは基本的に等身大で書ける。だからこそ、伝わる記事が書けるんだと思います。(会社としてではなく)個人で書くということは、すごく意識しています。

山口 個人としての発信が、得意な人とそうでない人がいるんですよね。個人を出した方が伝わりやすい時代ではあります。

“全文公開”に至るまでの、それぞれのドラマ

・コロナ禍で本が出せなくなるという危機感からの措置
・全文公開でビューが伸び重版へ。企業広報的な価値にもなった
・noteでの全文公開は、ダイレクトに読者につながる

——両社ともコロナ禍でもnote上でいろいろな試みをされていましたね。

山口 4月末に出版したパオロ・ジョルダーノの『コロナの時代の僕ら』ですね。私はプロモーションを担当しました。この本は3月末に版権を取ったのですが、その時からこの内容はすぐに出さないといけない、と思っていました。

というのも、イタリアでは日本より早く感染が広がってロックダウンしていて、その最中での日記という内容だからです。その頃、日本はこれからもっとコロナが広がるかどうかという状況で、これには一ヶ月後の我々の姿かもしれない日々が綴られていた。

これは、いまこの時に出さないといけない。けれども、4月後半になったら、もしかしたら(コロナの状況によっては)本が出せなくなるかもしれない。じゃあ、もう全部noteに出しちゃえと、二日間だけ無料で全文公開しました。もちろん著者には確認してですけれども。二日合わせたらすごいビューでしたね。

これは、この文章を読ませたいな、という想いが先にあって、売上げはあとからついてきた感じです。紙の本は合計で5万部くらいにはなりました。企業広報的な価値も大きかったんじゃないかなと思います。

——スピード感もすごいですよね。版権を取ったのは3月末なのに。

山口 翻訳を始めて出版まで1ヶ月かからないくらい、というめちゃくちゃなスケジュールでした。変わりばんこに会社にきて作業して、いま思えば楽しかったんですけれども。出版社ができること、しなければならないことだったと、今なら思います。

——ライツ社さんもレシピ本の全文公開をされていましたよね。

大塚 はい。本山尚義さんの『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』(以下、世界のレシピ)のPDFを全文公開しました。全文公開とKindle無料と何が違うのかというと、Kindleが無料なことを伝える術がないということです。でもnoteで全文公開すると、それがダイレクトに読者にそのまま伝わって、そのまま読める。スピード感と流れが全然違う。だからこそ、本当に必要な時に、跳ねるんだろうなとすごく実感しました。

——全文公開してから紙の本を重版したと聞いたんですけれども、もともと、本が売れるといいな、という気持ちがあったんですか?

大塚 僕らは明石市にいるので、、当時は東京の出版社よりも、もっともっと情報がなかったんです。緊急事態宣言下で書店さんが自粛で閉まると聞いて、これはヤバイな、ライツ社潰れるかもなと思いました。

最初にしたことは、自分たちの本を全文公開をする前に、「通販でも書店さんで買ったことになる方法」みたいな記事や、「Amazonで本が在庫切れになった場合のほかの選択肢まとめ」みたいな記事を書きました。そうしたら、たくさんの人にシェアされて……。どこで本を買えばいいんだろう、というみんなの不安に対する情報源になれたという実感がすごくありました。

そのあと、自分たちの本を書店に納品することができなくなりました。営業もできないしAmazonにも入れられない。

でも、その頃ちょうど『世界のレシピ』は、Twitterでバズが起きていたんです。これがあれば、ステイホーム中でも家で世界中の料理が楽しめる、と。それを見た時に、「みんな本屋に行けないけれども、家で簡単に世界旅行を楽しめる本を必要としている。でも本を書店に納品できない。どうしよう」となったんですね。それで、「じゃあ、全文公開してしまえばいいか」と著者さんと話し合って、公開しました。そうしたら、やっぱりたくさんの人がシェアしてくれて。

でも周りからはけっこう、心配されたんですよ。全文公開で、しかもPDFそのままで大丈夫かと。結果的には、そこから新聞社さんやWebメディア、NHKさんやフジテレビさんなど多くのメディアが取材にきてくれました。みなさん、noteを見ました、とおっしゃるんです。最終的に『世界のレシピ』は2回重版できましたね。ドタバタでしたけれども、すごい経験ができました。

noteを書くと、めぐりめぐっていいことがある

・リソースの少ない中小出版社こそnoteを活用すべき
・読者に受けるかどうか、まずnoteに出してテスト
・noteを起点とした先にマネタイズの可能性が広がる

——出版社がnoteを使うことを、どう思われますか?

山口 いまのnoteの使い方は、ゲリラ戦でいいと思うんです。noteならば、記事のない月があっても困らない。対してWebメディアというのは、ちゃんと準備して戦いにいくイメージです。兵站(へいたん)というか補給が必要なんです。月何本載せるのか、どれくらいのビューを稼いで広告価値を出すのかとか……。そこは中堅出版社にとっては、事業計画を立てて挑まないといけないので、かなり大きなハードルです。

その点、noteは使い勝手がいいというか、そこまで考えなくても使えるし、いろいろな人が読んでくれるのでいいな、というのはありますね。

——noteとWebメディアって違うものですか?

山口 やっぱり広告の有無というのは大きな違いですね。Web広告はかなりな規模の市場になっていますが、日本の中小出版社はほとんど食い込めていません。でもコンテンツはあるので、そこは、やりようがあるんじゃないかなとは思っています。

それに、noteは理念がある。クリエイターが集っていて、何かおもしろいものができていったらいいなというのを、汚しちゃいけないんじゃないか、とも思う(苦笑)。そもそもnoteはインターフェイスが基本真っ白です。でもWebメディアって、普通はごちゃごちゃしていて真っ白じゃないんですよね。その違いは保ってほしいなというのはあります。Webメディアが別にできても、noteは使い続けると思います。

——そのような取り組み方の早川書房さんの事例は、よく紹介させていただいています。

山口 それでいろいろ聞きにくる方がいらっしゃるんですが、みなさん聞くのは、どうやって月の本数や原稿のチェックをしているんですか? ということ。でも冒頭でもお伝えしたとおり、弊社ではほぼ何もしていないんですよ。そうお答えすると、みんな「嘘だ〜」と帰っていくんですけれども。普通はやっぱりそう考えちゃうんですよね。でも考える必要はなくて、ネタがあるときにnoteを書くだけでいいんです。ただ、会社で言われるんでしょうね。

そうではなくて、テストなんです。これが受けるかどうかを出しているだけ。たとえば雑誌につまらない記事が載っていたら、それはその雑誌の恥だと思うんですけれども、noteはテストなので、会社のイメージを傷つけたり、変なものでなければ、載せてテストすればいい

ちょっと書いてみた。受けた。じゃあもうちょっと広げてみようと。本当に”note”ですよね。

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──noteを活用したマネタイズも考えていらっしゃるんですか?

大塚 マネタイズという意味でいうと、ライツ社だったら、たぶんできていますね。noteを使って数回、書籍の重版ができています。Amazonでバズが起きるきっかけになった、メディアに取り上げられた、と考えたら、一人分の人件費はペイできているし利益になっています。僕らみたいに社員4、5人くらいの会社だったら、noteを起点にした売上は、確実に増えていると思いますよ。

——noteの記事を販売して売上を上げるのではない、その先のマネタイズの方法はたくさんあるということですね。

山口 最近小さい出版社や書店を始める人が増えていますよね。出版不況と言われているけれども、死んでいる業界だったらそんなことする人はいないはずです。

不況という言葉がキャッチフレーズになってしまって、そういうイメージがつけられたり、固定観念になっていますが、それってつまらないし、事実とは違うよなとは思いますね。

大塚 先日、編集者を募集したんです。でも人材紹介サービスとかに登録するとお金もかかるし、とりあえずnoteに書きました。そうしたら70人くらい編集者の方が応募してくださって、それだけで充分でした。びっくりしたのが、超大手の出版社の人から応募があって。ああ、みんな興味を持ってくれているんだな、noteを見ているんだなと思いましたね。

山口 これもお金に換算したら、普通に人材紹介サービスに登録するよりは得していますね、企業としては。

業界紙もリリースも、まずはnoteで出してみては?

・いろいろな業界紙がnoteにあったら、もっとつくり手と生活者を結ぶことができる
・PRにお金をかけずに、noteにリリースを載せて拡散をねらう方法もある

——これからの展望をお聞かせください。

山口 Webメディアをつくる、というのが私のキャリアのテーマでもあるんですが……早川書房というのはいろいろな国のものを出していて、いろいろな国にコネクションがあるので、コミカライズをどこかとやって、それをnoteで載せるとかもできるかなと思っています。私の趣味嗜好としては外国の人と映像化とか。Webメディアも日本語だけでなく何カ国か載っていて、外国の人も見られるといいのかなと、頭の中でモヤモヤとしているものはあります。

——noteも多言語対応しないといけないですね。

山口 そうですね。使いやすければ、世界に広がる可能性があると思います。

大塚 この前、竹書房の方が、退職エントリーの記事をnoteに書いていたんですが、それがめちゃくちゃおもしろくて、出版愛に溢れていたんですよ。その記事をきっかけに、退職エントリーの記事をいろいろ見たら、あらゆる業界でその業界への愛に溢れている記事ばかりだなと思いました。そこで、退職エントリーを集めた本をつくろうかなといま思っています。いろいろな業界のことを知ることができるし、いろいろな人のやめ方、終わり方が書いてあるから、情報としても、感情的な部分でも、おもしろいんじゃないかなと。

山口 ビフォーアフターもできますね。退職エントリーを書いた人はいま、みたいな。

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大塚 あと、業界紙をつくっていると、すごく手応えがあるんですよ。ついこの間、ライツ社に初めて、他社からのリリースが届きました。

一方で、他の業界で、note上で業界紙をやっています、というのをあんまり聞いたことがない。いろいろな業界の業界紙がnoteで読めたら、もっとつくり手と生活者を結べるんじゃないかな。それをたくさん見られたらいいな、と思います。

——そこで新しいコラボが生まれるかもしれません。

山口 リリースもnoteで出していいですよね。PRにお金をかけたくないという会社でもできる。プロジェクトが小さすぎて予算が取れないケースとかも、noteに書いて、それがおもしろければ世に勝手に広まって、取材に来てくれることもあるし、noteなら急にリリースが載っていても、変ではないですよね。

noteではまだまだ何かできると思います。私は誰も気づかないような、変な使い方をしたいんですよ。そこがnoteというプラットフォームのいいところですね。型にハマらなくて。

大塚 僕たちってほんと小さくて、地方の端っこにいる出版社なんですけど、noteや、いろいろな人の力を借りたら、こんな僕らでも、まあ、生きていけるんやで、ということが伝えられていたらいいなと思います。それと、こんな僕らでもできるんやったら、やってみようかなと思う人が一人でもいてくれたら、嬉しいなと思います。


【登壇者プロフィール】
大塚啓志郎さん
ライツ社 代表取締役/編集長

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1986年生まれ。2008年、京都の出版社に入社。編集長を務めたのち30歳で独立。2016年9月、地元である兵庫県明石市でライツ社を創業。編集した近刊は『DRAG QUEEN』(ヨシダナギ)、『売上を、減らそう。』(中村朱美)など。『リュウジ式悪魔のレシピ』(リュウジ)は、「料理レシピ本大賞 in Japan 2020」大賞受賞。
最近嬉しかったことは、就活のときに落ちた雑誌「ソトコト」に特集してもらったこと。

Twitter:@keishiro_314
note:https://note.wrl.co.jp/(ライツ社)

山口晶さん
株式会社早川書房 執行役員/事業本部長

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1975年生まれ。2003年早川書房入社。基本的には書籍編集者ですが、飽きっぽい性格から海外への版権売り込み、映像化権の仲介、マーチャンダイジングなども始めてしまって最近は身動きが取れません。おもな担当は、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』、デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』、ジョージ・オーウェル『一九八四』Tシャツ、アガサ・クリスティー・デビュー100周年記念グッズ。近刊ではタラウェスト―バー/村井理子訳『エデュケーション』がおすすめです。最近はたいていお金のことを考えています。

note:https://www.hayakawabooks.com/(早川書房)

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