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遅くなってごめんね

「遅くなってごめんね」

たった5分、10分遅れた程度ではもはや動じることはない。君の遅刻癖はどう頑張っても治らないと、遥か昔に諦めたはずだから、おれはいつも笑顔でこう返す。

「今日はいつもより早いね」

"破天荒"という言葉がピッタリな君の人生には、おれの退屈な毎日は似合わないのかもしれない。

ただ、君と過ごした時間は信じられないほど濃密で華やかであったことは間違いない。

だからこそ、大事な話があると呼び出されたあの日、時間ピッタリにやって来た君に、初めて少し腹が立った。

「今日はいつもより早いね」

いつも通りに声をかけたはずだが、君は俯いたままコクリと頷くだけだった。

そんな態度を取られたら、おれは君のことを諦めきれない。

笑顔で"終わりにしよう"と言われたかった。

今日までおれのことを振り回し続けた君を、好きで好きで仕方がなかった、ただそれだけなんだと思う。

だからこそ、最後まで君は君らしくいてほしかった。

君は前を向くことの大切さを教えてくれたと同時に、忘れられない過去を刻みつけた。

そんな君に振り回され続けたおれは、その程度の男なのだと、いつまで経ってもうじうじと思い迷うのだろう。

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