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27.待ち合わせの場所

“待ってるからって・・・。待ち合わせの場所に、来ても来なくても旅行してくるからって・・・”

しばらく沈黙が続いた後、電話は切れてしまった。心臓は、ドキドキ手は震え始めて、受話器をしばらく置くことができなかった。約束の日まで、あと1週間しかない。わたしは悩んだ。

部長のこと、たぶん好きなんだと思う。でも、二人だけで旅行するなんて・・・。負けん気が強くて、男の人の中にいて物怖じしないけど、それと、これとは別の話だ。

“軽率過ぎない?付き合いはじめて、まだ1ヶ月もたっていないんだよ。部長は、こんなに気軽に女の子を誘うんだろうか?でも・・・学生時代最後思い出に、ホントは、一人で行くつもりだった旅行に、私を誘ってくれたことも確かなんだ・・・。卒業して、社会人になったら、もう今までのように自由に会えなくなる。その期日がもう3ヵ月後に迫っている。どうしよう…!”

その電話以来、わたしの頭の中は、YesかNoかの選択で、いっぱいになっていた。時間はどんどん過ぎていく。部長に会って、相談することも、電話をかけることもなく過ぎていった。


そして、約束の日がやってきた。


私は・・・・。


小さなスポーツバックを手に、肩にはカメラを下げて、河原町の阪急百貨店の人ごみの中に立っていた。気持ちはまだ固まっていなかった。断るにしても、一緒についていくにしても、とにかく、部長に会ってからにしようと思っていた。


でも、約束の時間から10分が過ぎていた。迷う気持ちが、この場所に向かう足取りを重くしていた。

“時間が過ぎちゃってるもん。もう、いるわけないよね。さ・・・帰ろうか・・・”
そう思ってまた、もと来た方向に歩き始めたときだった。


「けいちゃん!」

部長が大きな声で私を呼びながら走ってきた。また、気持ちが揺らいだ。


「けいちゃん、やっぱりきてくれたんやね。ありがとう。じゃあ、行こうか!」
「あの・・・・わたしはまだ・・・・。行くって・・・どこへ・・・?」
「信州_オレが撮った写真の場所を案内してあげるから・・・・」
「でも、まだ・・行くって決めたわけじゃ・・・」
「かばんとカメラ持って、まだそんなこと言うてんのか?さぁ、行こう!」

部長は、私の手を引っ張って、人ごみを縫うように歩いていった。。私は、引っ張られながら、だんだん気持が前を向き始めているのを感じた。  

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