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人間の認知機能として、

大体一度に把握できるのは3つから5つくらいらしいです。


ワインの本を読んでいた時だったか、
ワインの説明で、例えばカベルネで

カシス、ブラックベリー、タバコ、なめし皮、杉、etc

といくつも羅列されていることがありますが、
先ほど言ったように、一度にすべてを把握できるという事はないようです。

最初はある香りを嗅ぎ取って、また次の香りを嗅ぎ取ってと
順々に表れる、あるいは言葉にできるのだと思います。


シーナ・アイエンガー氏の「選択の科学」

にありますが、ジャムの試食販売について

①10種類くらいのジャムの試食をしてもらい割引クーポンを渡す
② 3種類くらいのジャムの試食をしてもらい割引クーポンを渡す

という実験を(確かこんな内容だったと思う)すると、
一般的に言って、たくさん試食した方が購買意欲が出るような気がしますが、
実際の結果は、①より②の方がクーポンで購入する割合が高くなったそうです。


種類が多ければ多いほどいいような気がしますが、
たくさんあればあるほど、
選択肢が増えれば増えるほど、
それを選択する意思というものが重要になり、

なぜ他の残りの9個ではなくその1個を選んだのか?
他の物も選べるんだから、他の物を選んだ方が良かったのではないか?

という難しい選択になります。


まあ選択の話というのはまた別の話ですが、

興味のあるもの、詳しく知っているものについては、
選択肢が多いというのは良いことですが、
たいして興味のないものについては、
大概の場合、選択肢が少ない方が、選びやすいのではないでしょうか。
スター〇ックスに初めて行って、
レジにたどり着いてからなにを頼めばいいのかわからない、
というのは誰にでもある経験ではないでしょうか。


ワインというのが一般に敬遠されやすいのは、
たぶんこの選択肢が多すぎるという事であって、
多大なる時間とお金を使ってまで、
この選択肢を増やす必要があるのか、
それほどまでにメリットがあるのかという事だと思います。


動物にとって基本的な選択肢というのはたぶん非常に少なく、

それが危険であるか、安全であるか?
といった、それが自身にとって有益であるかそうでないか、
という判断だと思います。

この有益かそうでないかといった、
非常に数の少ない判断基準、
認知機能の区別、理解といったものを、
人間は言語による、概念というものを創り出したことによって、
瞬時にではないにしても、
数多くの理解を深めていったのではないかと思います。


例えば禅の話で、「葉を見ていては木が見えない」
という話があります。

これはたくさんある「葉」という下位構造ではなく
一つのまとまりとしての「木」という上位構造
として理解することだと思います。

「葉」として見ようとすると非常に大量の認識が必要になりますが、
「木」として理解すれば、認識するべき対象は一つになり、
非常に理解がしやすくなります。

ワインを理解、あるいは認識するときも、
基本的にこの上位構造、下位構造の認識が働いていると考えられ、

このワインは、何々の香りで、何々で、、、
ではなく、ラベルや地域を見て、
このワインであれば、これこれこういう感じの香りがするだろう、、
という、個別の事象から香りを理解するというより、
ワインのいくつかあるスタイルから、傾向から個別の情報を引き出すというやり方によって、
数多くの説明ができるようになるのではないでしょうか。

ブラインドの場合も、
ある一つの香りを嗅いだ場合、例えば黒い果実と、赤い果実は基本一緒になりませんから、
黒い果実ならこれこれこういう品種やスタイルと考えられ、
そのスタイル、品種ならこういう香りがするだろう、、。
そうではなくて赤い果実なら、こういう品種であそこの地域で生産されるだろうから、こういう香りがするだろう、、。

といった、個別から具象を導き出し、具象から個別を引き出す、
というやり方によって、説明をしていく。

脳波を調べつつ、
プロのソムリエ、テイスターにブラインドでワインを飲ませると、
前頭前野、一般に言語をつかさどる部位が活発になるといわれています。
鍛えるべきは、味覚、テイスティング能力ではなく、言語による結びつきかもしれません。


認知機能がこの程度の場合、
少し前の考え方、
スーパーマーケットや、コンビニ、居酒屋のような、
品数が多ければ多いほど良い
というのは非常に難しい問題で、

確かに品数が多ければ多いほど、
非常にたくさんの人が利用する場合、適合する確率が増えるわけですから、
良いという側面もありますが、

実際のところ数が少なくても、
良くある何か一つ看板になるものがあるという事でも、
割かし問題ないのではないかと思います。

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