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ブレンドとシングルオリジン コーヒー専門店の考え方

最近、ちらちらとインターネットでシングルオリジンとブレンドコーヒーの話題を見かけることが増えてきました。

日本のスペシャルティコーヒー専門店だとシングルオリジンしかないお店もありますし、なかには「ブレンドコーヒーなんて質の低い豆を混ぜてるだけでしょ」なんて方も見かけます。

日本において、そういった時代があったことはまず否定できないでしょう。

ただ、こういう話が出るときによく忘れられるのが、「そもそも、ブレンドやシングルオリジンはなんのためにお店に置かれるのか?」

この点について、弊社の考え方と似た立場のロースターさんがいらしたので、それについてご紹介しながら、ブレンドとシングルオリジンのカフェにおける役割を考えてみたいと思います。


シングルオリジンとブレンドコーヒーへの考え方

まず、弊社のシングルオリジンへの考え方についてはGLITCH COFFEEさんの公式サイトを見ると非常に近い意見が書いてあります。

GLITCH COFFEEのシングルオリジンの考え方
・産地由来の果実味を最大限に引き出し、(後略)
・農園の個性をダイレクトに伝えることを目的とし、(後略)
出典:公式サイト

ここにあるように、農園や産地ごとの特徴、個性をそのまま表現するとしたら、シングルオリジンを提供するのが最も向いているでしょう。

ただ、だから"シングルオリジンだけしか提供しない"のか、だから"シングルオリジン以外にブレンドも提供するのか"についてはお店によって分かれるところ。

GLITCHさんはそのままシングルオリジンだけに絞って提供しているようですが、たとえばCafe Bach(バッハ)の田口さんなどは、ブレンドコーヒーを使うメリットについて『珈琲事典』でこのように話しています。

バッハのあげるブレンドの目的
・店の個性、独自性をアピール
・つねに同じ味のコーヒーを提供する
・オリジナリティの高い「自分だけの味」をつくる
出典:珈琲事典

このようにブレンドは店の独自性をアピールしやすくなります。

実際には、シングルオリジンだけしか使用していなくても、焙煎方法や提供によって店ごとの違いがでるのですが、お客様からパッと見たときに他店と明らかに違いが分かるのはオリジナルブレンドでしょう。

また、「同じ味を提供し続けることがプロの腕だ」という方も一定数いらっしゃいます。

小ロットで頻繁にラインナップが変わるシングルオリジンを提供することは「お店の味が変化し続ける」ことと同じです。ポジティブに言えば"選ぶ楽しみがある"と言えますが、ネガティブに言えば"味が安定しない"とも言えます。

ブレンドコーヒーだって中身は変わり続けるのですが、イメージに合わせてロースターが中身の焙煎や比率を変えることで"同じ味のイメージ"をキープすることはできます。これはブレンドの最大の魅力と言っていいでしょう。

"シングルオリジンを使って産地の特徴を最大限発揮する"のがロースターの腕だとしたら、"それらをブレンドして安定したロースターの個性を出す"のもロースターの腕なのです。


海外を見てみると…

ちなみに、シングルオリジン自体がサードウェーブの流れと欠かせない繋がりがありますが、いわゆるサードウェーブ御三家と言われるようなインテリジェンシアやスタンプタウン、カウンターカルチャーを見てみると、どうでしょうか?あるいはイギリスのスクエアマイルなどはどうでしょう?

実は、海外のサードウェーブ有名ロースターを見てみると、シングルオリジンだけでなくブレンドコーヒーも置いていることも多いです。

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↑インテリジェンシアのブレンド

「ザ・サードウェーブ!」な浅煎り~中煎りメインの国内コーヒースタンドだとシングルオリジンしかないお店も多いので、コーヒーマニアのなかには意外に思われる方も多いんじゃないでしょうか?

「だから日本のコーヒースタンドもブレンドを置くべき」ということではありませんが、日本では対比的に語られることの多いシングルオリジンとブレンドの2つが、世界的には"折衷パターン"の店が多いことは知っていただきたいなと。

特に、エスプレッソ用にはブレンドを使っている店が多いことが分かります。シングルオリジンのエスプレッソだと、かなり強烈にその個性が出てくるからかもしれません。

ちなみに、弊社もこの折衷パターンです。

どちらが良い/悪いではなく、「なぜ自分がそのラインナップにしたのか」をきちんとお店のバリスタが説明できること。

まずはそれが一番大事で、そのうえでシングルオリジンだけを出すのか、ブレンドも併せて出すのかについては、それこそオーナーやお店の個性と言ってもいいのではないでしょうか。

名古屋市千種区でコーヒーセミナー運営、コーヒー豆・器具の卸売り、直営カフェを運営するnote合同会社の公式コラムです。